★2018年大学入試センター「生物」第2問(生殖と発生)問題・解答・解説・追加説明

2018年1月14日(日)に行われた大学入試センター試験「生物」第3問(18点配点)の解答・解説です。センター「生物」受験者は、そのまま国公立・私大入試で生物も受験することが多い事情を考え、解説部分では、センター試験で選択肢から正解を選ぶレベルのみにとどまらず、国公立二次試験(私大試験)に対応できる説明も少し加えました。どうぞご活用ください。

なお試験問題の内容を変えない範囲で少し表現を変え、また小問に緑字で得点を明記しました。また試験問題は白黒印刷ですが、せっかくの画面上ですので一部カラーにいたしました。

答 ④(以下の図の通り)

この答の背景となるカエル・イモリなど両生類の発生の流れを確認しましょう。

 

カエルの未受精卵は減数分裂第二分裂中の二次卵母細胞の段階で、そこに精子が侵入すると第二極体が放出された上で、精核と卵核が融合し受精卵としての卵割(初期の体細胞分裂)に入る。

ただ減数分裂について正確に説明しようとすると、更に多くの図版と説明を要する。その点はまたの機会にしたい。

その後の発生に関係が大きい受精時の動きに関しては、上図左の「受精卵」を見てほしい。まず、カエルは未受精卵の段階から、半球の表面が黒っぽく、残りの半球の表面は白っぽい傾向がある(図では黒と黄色で示した)。受精時に第二極体が放出される部分が動物棘、その反対側を植物極といい、動物極側の半球を動物半球、植物極側の半球を植物半球といい、動物半球の表面が黒っぽく、植物半球の表面は白っぽい。 精子は動物半球に侵入し、その反対側に受精後、「灰色三日月環(はいいろみかづきかん)」と呼ばれる灰色の部分ができる。図では赤で表記した。

その後、受精卵が体細胞分裂していくことを「卵割」といい、卵割によってできた細胞を「割球」という。受精卵は第一卵割で経割(動物極と植物極を含む平面での卵割、上図では縦に割れること)し2細胞期に、第2卵割でも経割し④細胞期に、第3卵割では緯割(動物極と植物極を結ぶ線に対して直交した面での卵割、上図では横に割れること)して8細胞期になる。この時の卵割面は、植物半球側に卵割の妨げとなる卵黄(発生に必要な栄養分)が多く含まれるため、そこを避けて、少し動物極側に近い面となる。第4卵割は経割で16細胞期となり、更に卵割が進み、桑の実のような桑実胚(そうじつはい)を経て、小さな割球にまで卵割が進んだ胞胚となる。桑実胚期に動物半球の内側には「卵割腔」という空所ができているが、それが広がって胞胚期には「胞胚腔」と呼ばれる空所となっている。

 

胞胚期をすぎると、灰色三日月環(静止侵入点の反対側)のあったあたりから、胚の表面の細胞が内部に入り込み(このことを「陥入」という)、新たな空所を作り始める。これを「原腸」といい、この時期の胚を原腸胚(初期)という。原腸の入り口を「原口」といい、これは将来肛門に近い位置になる。原口の反対側、つまり精子侵入点側に口ができる。したがって上左図が将来のカエルの向きに相当することになる。図の断面図は、将来のカエルの向きを頭尾に添った面で切断した断面図に相当する。「将来の口」の位置のすぐ上側が「頭」、原口の上側が「背」の位置になり、それぞれの反対側が「尾」(「お」という意味ではなく「尾部」(びぶ)の意味)、「腹」となる位置に相当することを、上左図のカエルと対応させてイメージしてほしい。図で原口のすぐ上の部分は、原口の背側に位置し、原口を口(くち)に見立てると「唇」部分なのでやがて、原腸の陥入が進むと最初にあった胞胚腔は徐々に小さくなる(原腸胚中期)。この時、陥入した細胞層は、原腸の天井側になる図の赤い部分と、植物極側に近い図の黄色い部分に大別される。また、動物半球表面にあった黒っぽい細胞群はたんだんと植物極側表面(白っぽい細胞層、図では黄色)を覆うように移動してくる。やがて原腸が空所全体を占め胞胚腔が完全に消失する(原腸胚後期)。その時、原腸の上側に位置する細胞層を中胚葉(図で赤)、植物極側の内側の細胞層を内胚葉(図で黄)、外側の大部分を覆う黒っぽい細胞層を外胚葉(図で灰色)と呼ぶ。この3胚葉の区分となる予定の細胞層や部分を原腸胚初期や受精卵の段階でも同様な色で示しているので図でイメージしておいてほしい。

頭尾軸の断面図の下の点線囲みが原口から見た外観の変化である。動物極側の黒っぽい細胞層が植物極側の白っぽい細胞層(図では黄)をしだいに覆っていく。ただし、1か所だけ覆われずに取り残される場所があり、卵黄の多い植物側の細胞が栓のように残るので卵黄栓とよばれ、もともとの原口の付近であり、将来の肛門の付近になる。

 

この断面図は向きが変わり、カエルの図にあるように横断面図である。上側が背側、下側が腹側となる。背側の外胚葉(図の灰色)はまず平らになり「神経板」と呼ばれる。神経板の両端がせり出し、中央が溝となる「神経溝」となる。さらにせり出した部分がくっつき、その下に外胚葉由来の管が残され「神経管」と呼ばれる。中胚葉(図の赤)は3分割され、背側に近い部分を「脊索(せきさく)」と呼ぶ。更に5分割まで進み、植物極に近い部分にはくびれもできる。左右対称で動物極に近い側から脊索・体節・腎節・側板という。内胚葉は原腸を包むように両側がせり上がり、それがくっついて管(「腸管」)を形成する。なおこの神経胚後期でそれぞれの位置にくる細胞が、胞胚期(原腸胚初期)でどこの位置にあるかを示したものが、フォークトが作った下記の原基分布図(予定運命図)である。動物極から植物極の位置まで帯状に「外胚葉」「中胚葉」「内胚葉」予定域が位置する。そして脊索・体節・側板(腎節は側板に含めて考える)予定域は原口に近い位置、つまり背側から腹側にこの順に並ぶ。

 

 

最後にオタマジャクシ(幼生)の形に近づいた尾芽胚ができた段階の頭尾軸断面図である。心臓は側板由来の中胚葉由来、肝臓は消化管上皮から派生し内胚葉由来である。

最後に、各組織・器官が、何胚葉由来かということがよく問われるので確認しておこう。

 

これまで説明した通り、神経管は外胚葉から派生し、腸管は内胚葉から派生する。呼吸系上皮は人では肺へ向かう気道と胃に向かう食道がのどのところで枝分かれしているがつながっていることから推測できるように、由来は腸管由来となる。大雑把な捉え方としては「外胚葉→表皮と神経」「内胚葉→消化管上皮と呼吸系上皮」「中胚葉→それ以外」と捉えるとよい。

ただ中胚葉由来の組織・器官については、は更に「体節」「腎節」「側板」のどこから派生したか聞かれることがある。

「体節」は位置的に背側に近く、神経管を保護する骨格、その外側の骨格筋、骨格筋と表皮の間の結合組織である真皮となる。

「腎節」は名前から推測できるように、腎臓とその近くにある輸尿管や生殖輸管(精管・卵管)となる。

「側板」は腹側に近く、消化管上皮を覆う消化管の筋肉や、心臓・血管系となる。

(側板に囲まれたすき間を「体腔」といい、胸腔や腹腔となる。)

(外胚葉で神経管と表皮の間にあるバラバラの細胞を「神経堤(しんけいてい)細胞」といい、色素細胞などになる。)

消化管上皮と同じ内胚葉由来のものに、肝臓・胆のう・すい臓・甲状腺・胸腺がある。

問2

答①(S層は、D層の単層化と、D層の細胞移動の両方に関わる。)

⑦(遺伝子Aは、D層の細胞をS層の方へと引き寄せることに関わる。)

 

実験結果を表で示すと以下のようになる。左に実験条件を右に結果を〇×で示し、

どのような因果関係があるかを確認してみよう。この時、正常発生の状態も表の冒頭に加えておくとよい。

全ての実験と正常発生でS層は存在するので、遺伝子Aの有無によって結果の差が出ていることがわかる。

遺伝子Aが働くと「D層単層化」「外胚葉領域拡大」が起き、働かないと起きない。

同時に、遺伝子Aが働くと「D層のS層の方への移動」が起き、働かないと起きない。

つまり「D層単層化」「外胚葉領域拡大」と「D層のS層の方への移動」は連動していると推測でき、

以下のような流れが推測できる。

①~⑥に関しては、「D層の単層化」「D層の細胞移動」両方とも遺伝子Aがないと起きないので、①(両方に関わる)が正しい。

またD層はS層の方へ引き寄せられるので⑦.

 

Bは問4のほうが基礎知識問題なので問4から先に解説する。

答①(1個の精細胞は中央細胞と融合し、将来、胚乳をつくる)

②×(花粉母細胞→雄原細胞)

③×(3n→2n)

④× (花粉四分子は4つとも成熟花粉となる。)

⑤×(3個の胚のう細胞→1個の胚のう細胞。3個の細胞は退化)

解説

【染色体数の基礎知識】

被子植物の重複受精と種子形成を説明する上で、n・2n・3nなどの染色体数の理解が必要であり、そのためには本当は生殖細胞形成時の減数分裂の際の2回連続分裂の際の染色体の動きまで抑えるのが理想である。しかし、そこまで含めて説明しようとすると更に説明が膨大になり、図版も多く必要なので、その部分はまたの機会に譲り、今回、染色体数(n・2n・3n)を最低限理解できる説明にとどめたい。

染色体数とは細胞分裂時の分裂中期に見えるヒモ状構造で以下のように形成される。

この染色体が何本かか生物により固有であり、たとえば、大多数の細胞で見ると

ヒトは46本、ショウジョウバエは8本、イネは24本である。

ところが、生殖細胞では23本、4本、12本であることがわかり、大多数の細胞は、受精時に卵細胞・精子(精細胞)が合体して2セット染色体を持っていることがわかってきた。数学において一般式をxと置くように、生物学では一般生物の生殖細胞の染色体数をn、大多数の細胞の染色体数を2nと表現することにした。

生殖細胞に入っているn本の染色体で、その生物の生命現象を営む遺伝子が1セット入っている。これをゲノム(genome)という。

(多くの生物は受精を経て染色体数2n持っていることがが多いが、nも遺伝子1セットあるのでnで生きている時期のある生物もある。(植物・ミツバチの雄バチ)

また後述するように3n(3セット)である細胞もある。)

2nの細胞から卵細胞や精子(精細胞)をつくるために染色体数をnに減らす分裂が減数分裂であり、ヒトでは卵巣や精巣においてのみ行われる。

それ以外の細胞が分裂・増殖する時は、2nの染色体を複製(コピー)し、2nの染色体を持った2つの細胞にする「体細胞分裂」が行われる。

(植物においては後述するようにn→nへの体細胞分裂もある。)

以下ヒトの世代変化と染色体数の関係であるので染色体数の動きを確認してみてほしい。なお染色体数(n・2n・3n)のことを「核相」ということもある。

【被子植物の受精前まで】

被子植物の花の細胞も大部分は染色体数2nでである。おしべのやくで生じた「花粉母細胞」(2n)は減数分裂を行い、4個の花粉四分子(かふんしぶんし・n)となる。4個の花粉四分子はそれぞれ核の分裂が起き、大型の細胞(花粉管細胞、その核が花粉管核)に中に小型の細胞(雄原細胞)が存在する(成熟)花粉となる。これ以降の分裂は染色体数nが複製された上で分裂し、2個の染色体数nの細胞になる形でn→nへの体細胞分裂が行われる。(成熟)花粉がめしべの柱頭に受粉すると、花粉管が伸びる。花粉管の中では雄原細胞だったものが1回分裂して2つの精細胞(n)となる。

めしべの子房の中には1個~数個、将来種子になる部分である胚珠がある。胚珠内で生じた「胚のう母細胞」(2n)は減数分裂を行い4個の細胞となるが、3個は小型で退化し、1個のみが「胚のう細胞」(n)となる。(「〇〇母細胞」とは減数分裂をする直前の細胞を示す名称である。)胚のう細胞の核はn→nの核分裂(複製し核のみ分裂)を3回繰り返し8個の核をもつ「胚のう」となる。6個の核の回りには細胞膜ができ細胞化し、残された2個の核は中央に位置し、核は極核(2つ)といい、それを含む中央の細胞を「中央細胞」という。胚珠の外側を包む「珠皮」には「珠孔」という穴があいており、その珠孔側に3個の細胞(少し大きめの卵細胞とその両脇の助細胞)、反対側に3個の細胞(反足細胞)が位置する。これらはずべて染色体数nである。

ここまでが受精直前の段階である。

 

柱頭に受粉し、花柱の中をのびてきた花粉管は、胚のうの助細胞が出す物質に誘引され、珠孔までのび、精細胞2つを胚のう内に送り込む(なお、本設問問3では花粉管がどの条件を満たすと助細胞からの物質に誘引されるのかをの実験で考察している→後述)。精細胞の1つ(n)は中央細胞(極核2つ、n・n)と受精し、胚乳核(3n)となりやがて種子の中で発芽に必要な栄養分を蓄えた胚乳(3n)になる。もう1つの精細胞(n)は卵細胞(n)と受精し、受精卵(2n)となりやがて種子の中の胚(2n)などになる。2か所で受精が起きる被子植物特有のしくみを「重複受精」という。裸子植物の場合は重複受精が起きず胚乳はnとなる。(ぎんなんは裸子植物イチョウの胚乳でありnである)

受精卵以降の分裂は次のようになる。受精卵が2細胞になり1つの細胞は胚になり、もう1つの細胞は胚と種皮の間にある胚柄になる。胚柄は次世代の植物とはならずに退化する。種子発芽後、次世代の植物となる胚は、子葉・幼芽・胚軸・幼根の4つの部分からなる。このうち本葉になるのは子葉ではなく幼芽であり、根になるのは幼根である。

めしべの胚珠で胚のうの外側にあった珠皮は変化し、種子の外側の種子となる。その更に外側にあった子房壁は果皮となる。「果皮」とは果物の可食部の外側の皮を思い浮かべるかもしれないが、生物学用語の「果皮」とは、可食部(いわゆる果肉)部分も含め種子の外側の構造全体を示す。

種子には、胚乳が発達する有胚乳種子があり、子葉が2つの双子葉類(カキノキ科など)と、子葉が1つの単子葉類(イネ科など)に分けられる。白米はイネの胚乳部分であり染色体数3nである。

一方、マメ科・アブラナ科・ブナ科など胚乳がない無胚乳種子もある。無胚乳種子でも重複受精のしくみは同じで、胚乳は一旦できるが、その栄養分が胚の一部である子葉(2n)に吸収され、子葉が巨大化したものである。クリはこの子葉を食べているので染色体数2nである。

問3答

②(花粉管が通過する花柱の長さは、花粉管の誘引に関わる。)

⑤(花粉管が花粉管誘引物質に向かう能力は、花柱を通過する過程で得られる)

まずA問2と同様に、実験条件と結果を表に表してみよう。花柱の長さは5㎜と15㎜の2種類しかないので単に「短」「長」で示し、放置時間も6時間と12時間の2種類しかないので単に「短」「長」で示した。

ただこの示し方でもピンとこない方のために、もっと記号化をしてみよう。ないことは「×」、「短」「長」は存在した上での程度の差なので「△」「〇」で示してみよう。

すると、a~fの実験でdのみが誘引されていることから、3条件ともに△ではなく〇であることが誘引に不可欠であることが表でわかる。

選択肢①~③の中では、②のみが条件が関与していると述べている(①③は関与しないとしている)ので②が正解となる。

選択肢④~⑥の中では、⑤のみが花柱を短く通過しただけでは不十分で、長く通過することが誘引に必要な条件の1つであることに相当するので、⑤が正解となる。

 

 

 

 

 

 



朝倉幹晴(あさくらみきはる)


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