★ある医師の「障がい児の親は反省すべき」という発言について思う。

船橋市議(無党派)・駿台予備学校市谷校舎(医学部受験専門校舎)生物科講師 朝倉幹晴

2015年6月(2016年8月一部加筆)

ある医師の「障がい児の親は反省すべき」という発言に対して、私は同意できず、(私は)ほぼ反対の意見を持っています。しかし、残念ながら、この医師の意見に部分的に擁護意見があるようです。
その医師の信奉者の他にも、その医師が「障がいは、安全が確認されているとはいいがたい化学物質(食品中も含む)を取り込んだ結果。そのようなものを回避しなかった責任のことを言っている」主旨のことを言っていることで、食の安全性を重んじる視点から部分的に擁護している方もおられるようです。
私も、食の安全を考えています。生活クラブ生協の組合員ですし、たばこもやりません。またできるだけ薬に頼らないように生活しようとしていますし、簡単な風邪ならいわゆる一般の風邪薬は飲まず、経過させるようにさせています。できるだけ人類が昔から食してきたわけではない最近の合成化学物質は避けるという気持ちはわかります。
(疾病に対する薬は、一部薬害や依存症・副作用の問題をはらみますので、経過観察を注意しながらも、長年の研究と臨床によって裏付けられた薬を「最小限適切量」服用するのは是と思いますが議論が拡散するので、今回は食品に限って言います。)

しかし、遺伝子の変異や(胎児の体が形成されてくる際の)発生の際の形づくりの変異は、化学物資などによって誘発されるだけではなく、ある確率で誰にでも起こりうることです。仮に完全に安全な食品だけを選び妊娠を気づいた時以降、非常に気を付けて生活していても、受精以前の卵・精子形成やその前の段階での遺伝子変異(塩基配列変異やDNAメチル化・脱メチル化の位置など含む)、また発生段階での形態形成(体づくり)の変異(特に上唇など)は起こりうるのです。
食生活や妊娠前後の生活に仮に100%気を付けていても、遺伝子の変異や発生の形態形成変異は起こりえます。「減らす」ことはできても「なくす」ことはできないのです。そのような生物学上の基本的な知見を含めて、
ある医師の「障がい児の親は反省すべき」という発言とは生物学を学び、教えるものとしても許されないと再度繰り返します。

なお、障がい・遺伝子疾患、あるいはいわゆる健常も含め、自然の多様性の1つであり、その多様性こそが、人間社会また自然の素晴らしさであると感じます。どの形の生も大切な生であり尊重されるべき、それを尊重する社会であってほしいと願います。
このような医師が再生産されないように、医学部入学前教育がんばっていきます。

●付記 私が遺伝子や遺伝疾患・障がいを考える時、明記している2つの言葉です。

The capacity to blunder slightly is the real marvel of DNA. Without this special attribute, we would still be anaerobic bacteria and there would be no music
( Lewis Thomas)
(わずかに失敗する能力はDNAの驚くべき性質である。もし、この特別な性質がなければ、私たちはまだ好気性細菌の一種であったし、この世に音楽もなかっただろう)。「がんの生物学」(ワインバーグ)より

「一般の人の多くは、遺伝病とは遺伝する病気であり、家族、親戚にそのような人がいなければ自分には関係ないと思ってる人が多い。しかしこれは大きな誤りである。遺伝は、親の形質が子に伝わる現象を言うが、遺伝病としては決して遺伝する病気のことを言うだけでなく、遺伝という現象になってるもの、すなわち遺伝子や染色体がその発症に関係している病気のことを言うのである」。
「遺伝の問題は特に責任論になりがちである。実際の遺伝カウンセリングの現場でも、どちらかの家系に責任があるというように言われ続け、特に常染色体上、優性遺伝形式を持つ難聴や、ミトコンドリア遺伝形式をとる難聴の家系では、悩んでいる親は多い。また母親は妊娠・出産に際して原因があったのではないかと思い込んでる場合が多く、家族とのかかわりでこのような心理的背景がないかどうかも十分に考慮する必要がある。たまたま人類の進化で起こった突然変異を偶然その人が受け継いでいるだけである。また、全ての人がそのような突然変異を何種類かは必ず受け継いでいる。遺伝子は個々で異なり、正常な遺伝子というものは存在しない。人類皆、突然変異を持っているのであり、全ての人が遺伝病の保有者であるという考え方をすることが重要である」
(宇佐美真一教授(信州大医学部教授)「きこえと遺伝子2」)



朝倉幹晴(あさくらみきはる)


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