工場・事業所からのトリクロロエチレン流出と近隣地下水汚染の流れ図(2015年9月2日)

日本建鐵船橋工場(現在の管理、三菱電機)におけるトリクロロエチレン流出と近隣地下水汚染について、2015年9月2日の船橋市議会で質疑しました。この内容は、船橋の事例に限らず、トリクロロエチレン等地下水汚染一般に通用する内容なので、7月に本サイトに掲載した内容を微修正した上で再掲載します。

7月9・11日の住民説明会の場では汚染調査に関する平面図が出され、その後質疑応答が行われました。住民の質問の多くは、どのように拡散する可能性があるか?でしたが、その場で地下水・拡散の立体的(せめて断面図での水平・垂直方向の動き)動きの図がなかったため、住民の疑問に対して十分理解される説明がされたとは言い難い。

本来は責任者・説明者側(三菱電機)がきちんと提示・説明すべき図ですが、残念ながら提示されなかったので、私が専門書・文献を調査してまとめて作成した図を示します。

(なお、この図は私なりに調査し作成した図ですが、地下水・土壌の専門家の住民の方がおられたら、不足・追加・訂正点があればご教授いただければ幸いです。微修正していきます)

★図内をクリックすると図が大きくなります。図内の番号に関する解説を下に書きました。

トリクロロエチレンなどの動き改訂版2
トリクロロエチレンなどの動き改訂版2

①TCE(トリクロロエチレン)汚染の発生(漏出)

②不飽和領域での地下浸透

不飽和領域とは土壌の上部で、土壌粒子の隙間に空気がある。隙間があるためにTCEなどDNAPL(Dense Non Aqueous Phase Liquid、高密度非水溶性液体)と言われる水に溶けにくく、水より密度が大きい(単位体積当たり重い)物質は下方に移動する。ただし、土の粒子の隙間に指状に分岐していく道を通って下降する。これをfingeringという。

③不飽和領域土壌よりの気化

TCEなどDNAPLであると同時に、VOC(volatile prganic compound、揮発性有機化合物)にも分類される。つまり気化しやすい。土壌粒子吸着、あるいは土壌水中に溶けているTCEは工場敷地内で気化することがある。日本建鐵では汚染から20年を経ているので、地下浸透への定着が多く、気化量は少ないと考えられる。

④不飽和領域土壌から水平方向への拡散

不飽和領域では空気間隙はつながっているので水平方向には移動しうるが、それはfingeringで実際にTCEが流れた道から、近い範囲である。

⑤土壌水(液相)と土壌間隙空気(気相)の相互転換

これは気圧や温度の変化によって、移動が起こりやすい。ただこれは汚染初期の頃で今は移動は少ないと考えられる。

⑥不飽和土壌と飽和土壌の境界面への蓄積

不飽和土壌の下部には土壌粒子間隙に空気間隙がなく水で満たされた「飽和領域」がある。隙間がないため、下部に移動しくく滞りやすい。重力で下部に移動しようとする力と土壌粒子の隙間に液体を吸着させ続けようとする力(毛管力)がつりあいやすい部位。

⑦⑧不飽和領域でのfingeringと不透水層・粘土層での停止

TCEなどDNAPLは⑥にも関わらず、やはり水より密度が大きいため、一部は更に下方に移動する。ただ水も通れない部分(不透水層・粘土層)では停止する。

⑨地下水に溶解しての水平方向移動

これが今回の海神・北本町の地下水汚染の主因となる。

⑩水平方向における飽和領域→不飽和領域→地表への気化

地下水やDNAPLの動態からして考えにくい。(あったとしても微量)

⑪井戸水汚染

井戸水を使い続けた場合は、今でもTCE(関連物質)を取り込むことになるので使用を中止すべき。

⑫井戸の壁への吸着

吸着による残存は少ないが、⑪を考えれば、使用を中止すべき。