2009年3月6日船橋市議会本会議質疑の記録~主にがん医療・緩和ケア~
発言通告の内容
1. 放課後ルームについて~行田西ほか・高根台第三ルーム分室
2. 医療センターについて(総論)
~DPC(DiagnosisProcedureCombination、診断群分類包括評価)時代の情報提供を~
1. 国の医療・医師卒後研修変更政策への評価・発言は?(全自病協含む)
2. 研修医募集の現状と方針は?
3. 浦安市川市民病院ベット数減少の影響は?
4. 医療センター改革プランへの意見・8日市民シンポについて
5. 組織改革で病院長を置くことの意味は?
6. 血液検査システムHST-N201導入と外来待ち時間短縮効果は?
7. 微生物検査室の役割(病原菌遺伝子分析装置・血液培養装置等)は?
8. 薬事委員会・ICT(院内感染対策委員会)・図書館の役割は?
9. 薬剤耐性菌をふやす一部抗生物質(メロぺネム等)の使用許可性は?
3. 地域がん診療連携拠点病院・緩和ケア・在宅医療支援について
1. 厚生労働省基準(08年3月)の最低・望ましい基準は満たしているか?
• 五大(肺・胃・肝・大腸・乳)がんの手術・放射線・化学療法+緩和ケア
• 施設(年延べ1,200人以上・たばこ対策・放射線治療室・外来化学療法室)
• がん専門医師(放射線・化学療法・緩和ケア身体・緩和ケア精神・病理診断)・放射線技師・技術者・化学療法薬剤師・化学療法看護師・緩和ケア看護師
• 専任か専従か?非常勤か常勤か?
2. 胆のうがん「センチネルリンパ節/ICGナビゲーション手術」研究を
3. 痛みの少ない経鼻・カプセル内視鏡、NBI内視鏡の採用を
4. 緩和ケア外来の4月開設を。がん相談支援センターの役割は?
5. 患者図書室・インターネット情報検索コーナー設置を
~千葉県がんセンター「にとな文庫」に学ぼう~
6. 医療センター等への一定年数勤務を条件の医学部進学者奨学金制度を
7. 痛みを和らげる医療・NBM(NarrativeBasedMedicine)への見解は?
8. 緩和ケアへの臨床心理士関与は?~順天堂大学病院緩和ケアに学ぼう~
9. 医療センター等への運営基金設立の提案
10. 在宅医療支援を
~地域医療支援センター(市川市)に学ぼう~
11. 緩和ケア関係者への学校・教育の場での講演を
~日野原重明「いのちのバトン」・昭和大医学部等に学ぼう~
12. 医療センター・緩和ケア・在宅医療に対する市長の決意・見解を問う
★以下発言
○議長(村田一郎)
朝倉幹晴議員。(拍手)
[朝倉幹晴議員登壇]
◆朝倉幹晴 議員
行田西、西海神、夏見台、七林、大穴北放課後ルームが増設されることに関し、児童育成課、市長のご努力に感謝いたします。高根台第三ルーム分室存続も強く要望いたします。
次に、医療について質問いたします。
厚生労働省は、昨年、全国1,428病院の疾病別入院日数などを比較するDPC(診断群分類包括評価)のデータを公表しました。これからは、患者家族が病院の医療情報を知った上で治療を受ける時代になります。そこで、船橋市立医療センターでの医療内容に質問・提言させていただき、ご見解を伺いたいと思います。
医療センターの小澤院長は、2008年度の医療センター年報の中で、小泉政権の医療費抑制政策による診療報酬のマイナス改定が行われ、人手不足に拍車をかけていると述べ、日本医師会は昨年7月、社会保障削減に反対する意見広告を出しました。医療センター、医療センターが加盟する全国自治体病院協議会(全自病協)、そして市は、国の医療政策について、どのように把握し、どのように発言してきたでしょうか。
研修医の勉強会が2006年度の21回から、2007年、2008年度は10回と減少しています。研修医の安定的確保のため、魅力的な勉強会をふやすとともに、病院の近くに住んで研修に専念したい研修医に住居を紹介するなど、研修医が働きやすく学びやすい環境にすべきと考えますが、いかがでしょうか。
4月より、近隣の浦安市川市民病院のベッド数が344床から約50床に縮小されます。医療センターにはどのような影響が出てくるとお考えでしょうか。
医療センターへの地方公営企業法全部適用に伴う組織改革案について、特に病院局長を置くことの意味をお示しください。
改革案に寄せられた市民からの公募意見の数と主な内容、そして、あさって8日に医療センター主催で開かれる市民公開講座「がんのはなし」の定員と申し込み数、昨年からの増減、参加できなかった人へのフォローをお示しください。
次に、検査科、薬事委員会、院内感染対策委員会について質問いたします。
去る2月20日、私は検査科を視察させていただき、この血液検査システムHST-N201導入を含む整備などにより、待ち時間の短縮効果があるということをお伺いしました。朝8時に来院した外来患者が検査・診察を受けるまでの時間がどのように短縮されたのかお示しください。患者の声、あるいはさらに改善を目指している点などがあれば示してください。
微生物検査室では、(写真を示す)このリアルタイムPCR装置という最近のDNA増幅分析装置など、分子生物学的手法を使って患者の検体の分析がなされていることに安心をしました。検査の迅速化のため、血液培養装置の更新が必要と考えますが、いかがでしょうか。
次に、薬事委員会についてお聞きします。
最近は、病院で使用する薬剤について、新しい研究報告がなされています。小児科のソリタ方式の輸液の見直し、薬剤耐性菌増加を防ぐため、メロペネムなど一部抗生物質の使用頻度を見直すこと、小児のけいれんに対する選択薬を、状況によってはジアゼパムでなくミダゾラムにしてよいなどの研究です。一例を挙げて、どのような検討が薬事委員会でなされたかについてお答えください。
MRSA・多剤耐性緑膿菌など、薬剤耐性菌による院内感染を防ぐため、院内感染対策委員会ICTでどのような院内感染管理のルーチンワーク、そして緊急時の対応を目指しているのかを示してください。
大阪の市立堺病院ICTでは、薬剤耐性菌の出現可能性を減らすため、メロペネムなど一部薬剤の使用を許可制にしていますが、医療センターではどのようにしているでしょうか。
次に、地域がん診療連携拠点病院について、質問いたします。
去る2月23日、築地の国立がんセンターの若尾医師に、地域がん診療連携拠点病院の認定基準についてレクチャーを受けました。現時点では、昨年3月1日の厚生労働省通知が最低基準であり、その概要を要約すると、このパネルのようになります。(パネルを示す)肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がんの5大がんに対する手術、放射線・化学療法と緩和ケアの提供。施設面では、入院がん患者数が年延べ1,200名以上。敷地内禁煙の実施等たばこ対策。放射線治療室、外来化学療法室、がん相談支援センターの設置が最低基準です。医療センターは、この基準を満たしていると考えてよろしいのでしょうか。
次に、診療スタッフの配置では、5大がんの基本診療スタッフに加え、表に黒字、紫字で示した10名が最低基準とされています。がん専門の医師最低5名、放射線、化学療法、緩和ケア身体、緩和ケア精神、病理と医師以外の医療従事者最低5名、放射線技師、機器管理者、化学療法薬剤師、化学療法看護師、緩和ケア看護師です。赤字で示したものは必須でないが望ましいとされるものです。最低基準に関する把握はこれでよろしいのでしょうか。特に、表に紫字で示した3職種は、医療センタースタッフ自身が2007年度の年報で指摘をしていた職種です。どのように充足させていく方向か、お示しください。厚生労働省指針では、専任よりは専従、非常勤よりは常勤がよりよいとされていますので、専従・常勤の雇用にすることを要望いたします。
次に、がん治療についてお聞きします。
5大がんについては、あさっての市民公開講座に譲ることとし、日本人の死亡原因の第6位である胆道がんについて質問いたします。
東京医科大学八王子医療センターでは、初期胆のうがんに関し、転移したリンパ節や肝臓の転移場所を色素染色し、赤外線カメラで追跡、特定することで、リンパ節郭清、肝切除の箇所・領域を限定し、縮小手術をしていくセンチネルリンパ節ICGナビゲーションという方法がとられています。医療センターでも、この方法の導入に向け研究をしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
次に、がん診療・治療と内視鏡の関連です。
口から挿入する内視鏡は口径が約1センチで大きく、痛みや吐き戻し反射を誘発します。私も総合人間ドックでやったことがありますが、嫌なものでした。最近、痛みと吐き戻し反射の少ない鼻から入れる直径5から6ミリの経鼻内視鏡が普及し始めています。医療センターでの導入はどうなっているでしょうか。
さらに、肉眼では見落としやすい早期がんを、がんの新生血管を波長415ナノメーターの青色光であぶり出し、早期発見・手術できるNBI内視鏡、さらには飲み込むだけでよいカプセル内視鏡の導入もお考えいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
緩和ケアについてお聞きします。
病棟開設は来年の1月と広報されていますが、相談・外来がいつ始まるかわからないとの患者の声を聞きます。4月から緩和ケア外来を始め、広報すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
がん相談支援センターについてお聞きします。
厚生労働省指針では望ましいものとされている、がん患者及びその家族が心の悩みや体験を語り合うための場の確保、そして在宅がん患者の支援の役割について、どのようにしようとお考えでしょうか。
次に、患者図書館の設置についてお聞きします。
がん患者を初め、患者家族は腫瘍に対して情報を求めています。国立がんセンターのがん情報サービスや各疾病を紹介するホームページも各種開設されており、患者向けの本も多数出されております。私は、2001年に医療センター図書室の患者家族への公開を求め、それは総務課に許可を得た上での閲覧可能という形で実現しましたが、2階の奥まった場所にあるなど、実際なかなか使いにくい点があります。
千葉県がんセンターには1階外来のそばに、このように患者図書館にとな文庫があり、(写真を示す)常時スタッフが配置され、闘病記も含む基本的な図書、雑誌、インターネット検索コーナーが整備されています。2月17日に見学し、お話を聞かせていただきました。利用者は多く、外来の待ち時間を活用する患者家族も多く、待ち時間への不満解消の役割を果たしていると聞きました。緩和ケア病棟に合わせて患者図書館の開設を求めますが、いかがでしょうか。それまでの暫定措置として、少なくとも小さな空きスペースでもよいので、検索用パソコン1台と簡単な図書を置くスペースを開設したらいかがでしょうか。
以上で第1問とさせていただきます。
[医療センター事務局長登壇]
◎医療センター事務局長(工藤芳雄)
医療センターにかかわるご質問にお答えをいたします。大変多くの質問ですので、順次お答えをしていきたいと思います。
まず、最初でございますけれども、国の医療施策の把握、それへの発言についてでございますが、国の医療施策の動向につきましては、病院経営に大きな影響を与えることから、常に注視をしており、船橋市としても全国自治体病院開設者協議会が国に対して要望している事項等について、今後さまざまな機会を通じて国に伝えていきたいと考えております。
全国自治体病院開設者協議会からは、自治体病院が地域において真に必要な良質な医療を安全かつ継続的に提供できるよう、医師や看護師の確保対策を初め、医師の臨床研修の円滑な推進、社会保険診療報酬の見直しなど、これらの施策が適切に講じられるよう要望しております。
次に、研修医の宿舎の関係でございますけれども、通勤が困難で希望する研修医には医療センターが近隣の民間アパートを借り上げるなど、宿舎の確保に努めております。
次に、浦安市川市民病院の縮小による影響につきましては、近隣ということもあり、船橋市内の病院に来院することが予想されます。当センターには現在、市川市及び浦安市からの入院・外来患者さんは月延べ約450人おり、浦安市川市民病院の縮小によって、多少なりとも患者数はふえるものと思われます。
続きまして、改革プラン関係のご質問でございました。
まず最初に、改革案の中での病院局長の置く意味ということでございますけれども、改革プラン案は公立病院としての役割、使命を再確認し、持続可能な経営基盤の確立を図ることを目的としており、経営の健全化を図る上で、現在の地方公営企業法の一部適用から、経営責任が明確となる全部適用に経営形態を見直しをするものです。全部を適用することにより、病院事業管理者、つまり病院局長を置き、病院事業の経営責任者としての権限を持つことにより、医療制度や医療環境の変化等への迅速な対応を図るものでございます。
次に、医療センター改革プランに対する意見でございますが、8人から寄せられました。主な内容は、透析センターの設置要望、セカンドオピニオンに関する専門家の常設、経営に対する改善要望、地域がん診療拠点病院としての体制の強化などです。
続いて、市民公開講座の定員でございますけれども、昨年、ことしとも250人で、申し込み数は、ことしは昨年に比べて75人増の414名でございました。なお、当日参加できずに講座の内容を知りたい方へは、ご希望があれば当日配布した資料を送付いたします。
検査科に関するお尋ねでございました。検査・診療を受けるまでの標準的な時間の流れについては、平成19年3月から採血のブースを4カ所にふやし、また採血・採尿の開始を30分繰り上げて8時から検査等を実施しております。これにより、診療開始時間には検査結果が出ており、医師の診療がスムーズに行われるようになりました。これに対する患者さんの声でございますが、待ち時間が大幅に短縮された。採血はスタート場所なので、ここで待たされると全体の待ち時間が余計長く感じていたが、改善されて非常によかったなど、お褒めの言葉をいただいております。
血液培養装置の更新についてでございますが、血液培養装置は平成16年度に購入したもので耐用年数に達していないことから、更新の対象としてはおりません。
病院での使用薬剤についてのことでございますが、院内における薬に関する検討の一例を挙げれば、ジアゼパム、ミダゾラムにつきましては、以前から採用されており、該当する診療科などで使用に当たっての注意文書を作成し、院内の関係する部署に配布しております。
医療センター院内感染対策チーム(ICT)の毎週・毎月の院内感染管理のルーチンワークと緊急時の対応につきましては、毎週火曜日にICT内での打ち合わせと院内の回診を行っております。
緊急時の対応ですが、公衆衛生上重要な感染症が発生することを察知した後、院内感染対策チームの看護師が情報収集を行い、感染対策チームの医師に報告いたします。そして、医師がICTを臨時招集し、対応策を検討し、院長へ報告いたします。院長は必要があれば院内感染対策会議を招集し、対策を決定いたします。
薬剤耐性菌の出現防止についてでございますが、当センターでは抗菌薬の使用許可制はとっておりませんが、キノロン系、カルバぺネム系及び抗MRSA薬については、使用届け出制をとっております。
地域がん診療拠点病院に関してのお尋ねでございます。医療センター、この基準を満たしているのかということでございますけれども、一応この敷地内禁煙の実施がちょっとまだ、来月からやろうというふうに考えておりますけれども、これはちょっとまだできておりません。
次に、スタッフ体制でございますけれども、議員お示しの基本スタッフ最低基準については、議員のおっしゃったとおりでございます。基準に不足している職員の確保につきましては、今後採用もしくは育成し、指針に沿った配置を目指してまいりたいと考えております。
がんの治療についてでございますけれども、胆道がんに関するセンチネルリンパ節ICGナビゲーションという方法につきましては、大学病院等で研究中の段階であり、当該医療技術が確立され、保険適用の治療となりました時点で、当センターで導入可能か検討してまいりたいと考えております。
内視鏡についてでございますけれども、経鼻内視鏡は既に2台導入しております。NBI内視鏡及びカプセル内視鏡につきましては、大学病院等で研究中の段階であり、今のところは導入を検討しておりません。
緩和ケア外来のスタートでございますけれども、緩和ケア外来につきましては平成21年4月中に診療開始をする予定で、患者さんや市民の方々に広報紙やホームページなどで周知するよう準備を進めております。
がん相談支援センターの体制についてでございますが、がん患者さんや家族が悩みや体験等を語り合う場の確保については、E棟5階に談話室を設置いたします。
また、役割についてでございますが、がん相談支援センターの役割の1つとして、在宅がん医療の支援がございますが、当センターはかかりつけ医の後方支援病院としての役割を担うものと考えており、地域の医療機関との連携を図ってまいります。
最後に、患者図書室及び情報検索コーナーの設置についてでございますけれども、患者図書室のスペースについては、現在、既存病棟及び外来の改修を行っており、空きスペース等がないのが実情でございます。今後、改修終了後にどのようなスペースが確保できるか検討してまいりたいと考えております。
以上でございます。
[朝倉幹晴議員登壇]
◆朝倉幹晴 議員
医師の確保にご苦労されている様子がわかりました。最低基準に対しては、すぐにでも満たされるように頑張っていただきたいですが、医師の確保の将来を見越した提案をしたいと思います。
三重県や東京都、そして民医連病院は、そこで勤めることを条件とする医学部進学奨学金制度を持っています。医療センターの医師の安定的な確保のため、卒後一定の年数の船橋市立医療センター勤務を条件として、医学部進学奨学金制度を設けることを提案いたしますが、いかがでしょうか。
痛みを和らげる医療と物語に基づく医療、NBMに関して質問いたします。
近年、医療の世界では、キュア(治療)だけでなく、ケア(精神的なものも含めたフォロー)の必要性が強調されています。緩和ケアについても、いわゆるがんのターミナルだけでなく、さまざまな疾病のさまざまな段階から必要とされ、ケアの視点が求められています。これまで病気に伴う痛みは治療の対象外とされ、我慢することを強いられてきました。(パネルを示す)近年、痛みを和らげる医療への方向性が打ち出されてきています。私は2007年度の6月議会で、東京慈恵医大ペインクリニックの先駆的な取り組みを紹介しながら、痛みを和らげる医療について質問いたしました。緩和ケアがスタートする今こそ、船橋市立医療センターでも痛みを和らげる医療に向かうべきです。
WHO(世界保健機構)は、1998年に健康を次のように定義する提案を行いました。「健康とは、身体的(フィジカル)、精神的(メンタル)、社会的(ソーシャル)、スピリチュアルに完全によく躍動的な状態であって、単に病気や病弱がないということではない」。この定義の流れを受けて、痛みに対する考え方も変わってきております。痛みとは身体的な痛みのみではありません。この図のように、身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな痛みが重なり合ったものです。スピリチュアルな痛みとは、私が生まれてきたことの意味は何か、今なぜがんにかかり苦しんでいるのかなど、人間存在の根源から来る痛みです。身体的な痛みに関してはオピオイド、医療用モルヒネ使用も含めた段階に応じた対処法が確立されてきており、化学療法になれてきた医療従事者が行っていけると思いますが、問題は精神的、社会的、とりわけスピリチュアルな痛みへのフォローです。
ここ10年間、医療の世界ではEBM(Evidence Based Medicine)、根拠に基づく医療ということが強調されてきました。しかし、最近はそれだけではなく、NBM(Narrative Based Medicine)、物語に基づく医療という視点が打ち出されています。とりわけ、緩和ケアではそうです。患者の死までをみとっていくプロセスにおいては、その患者が人生の中で培ってきた価値観や物語に共感し、耳を傾けながら医療を行っていく必要があります。外科治療ではしばしば1人の有能な医師、神の手がいると手術が成功することもありますが、緩和ケアにおいて、これらを担っていくのはチーム医療です。緩和ケアを目指すに当たって、NBM、痛みを和らげる医療について、目指すべき方向性がありましたらお示しください。
こうした流れの中、厚生労働省基準の中でも、緩和ケア病棟に医療心理にかかわる者の関与が望ましいと書かれました。私は3月23日、順天堂大学病院緩和ケアチームの学習会に参加し、臨床心理士による講演を聞いてきましたが、順天堂大学病院では緩和ケアチームに臨床心理士が入っています。医療センターでは緩和ケアチームの中に臨床心理士は参加しているのでしょうか。今後の方向性はどう考えているのでしょうか。
今回の調査の過程で、市民の方から医療センター運営を支える運営基金の提案をいただきました。ぜひ、市におかれてもご検討ください。
がん患者の中には、病院ではなく住みなれた自宅、在宅で最期を迎えたいという方も多くおられます。統計的に考えても、市内で毎年3,000余名の方がなくなられ、そのうち1,000余名以上はがんによるものです。緩和ケア病棟20床がフル稼働しても、多くの方は一般病棟や自宅で亡くなることになり、その方々にも緩和ケア病棟と同様なケアが必要です。
私は2月1日、勤労市民センターで開かれたNPOピュア主催の在宅がん緩和ケアフォーラムに参加し、市川市医師会の地域医療支援センターの取り組みを聞いてきました。そして、2月23日には市川市の医師会長にお話聞かせていただきました。(写真を示す)在宅医療に必要な機器や消耗品を医師の指示のもと、患者・家族が市川真間駅のそばの医師会館内にある在宅医療支援センターに出向き、借りることができる仕組みです。喀たん吸引器の貸し出しや洗浄、各医療機関、医院で用意すると大変であるさまざまな大きさのカテーテル・チューブなどを一括購入して管理しております。年間、市川市からの予算850万円で約1,700名の在宅の患者が使われているということです。ぜひ、このシステムの導入を船橋でも検討してほしいと思いますが、いかがでしょうか。
[健康部長登壇]
◎健康部長(加賀見実)
医学部進学者奨学金制度に関するご質問にお答えをいたします。
医学教育の専門分化がますます進む中にあって、高度な急性期医療を主な役割といたします市立医療センターにおいて、必要とされる医師は専門診療科や経験・実績等のさまざまな条件を満たす必要があり、一医療機関のみによって運営される奨学金制度によって、求められる医師の確保が可能となるかどうかは疑問もございます。こうしたことから、現段階では本市独自の奨学金の導入予定しておりませんけれども、医師確保対策につきましては、幅広く検討していきたいというふうに考えております。
次に、在宅医療支援に関するご質問でございますけれども、市川市医師会が開設をしております地域医療支援センターでは、在宅医療の支援として、医師会が往診を行う場合に必要となる医療機器の貸し出しや診療材料の提供等を行っております。また、患者様・家族等が医療機器の貸し出しを受ける場合であっても、会員である医師からの指示が必要であるということでございました。したがいまして、医療機器の貸し出しや診療材料の提供に当たりましては、それを活用をします往診医の指示あるいは協力が必要不可欠でありますので、市といたしましては情報をさらに収集をしますとともに、これらの事業のニーズなどについて、船橋市医師会に相談していきたいというふうに思っております。
以上でございます。
[医療センター事務局長登壇]
10. ◎医療センター事務局長(工藤芳雄)
緩和ケアを満たすに当たっての基本的に目指すべき理念及び方向ということでございます。
当センターでの緩和ケア医療に対する考えといたしましては、患者さんが在宅でご家族と過ごすことができるようにつなげる医療であり、そのために患者さんのご家族と十分に相談し、最良の医療を行ってまいりたいと考えております。
臨床心理士の関与についてでございますけれども、当センターの緩和ケアチームの活動に、臨床心理士に認定された者が参加をしております。
なお、医療センター・緩和ケア運営に基金の設立をというお話でございますけれども、緩和ケアの運営に基金設立につきましては、運営そのものに対する基金の活用というものはなかなかなじまないものではないかと考えております。むしろ、患者さんやその家族に対するボランティアのような精神的な支えに関しましては、今後取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
[朝倉幹晴議員登壇]
◆朝倉幹晴 議員
私が議員を浪人し、2003年度から2007年度(3月8日「2006年度」と訂正許可)まで予備校の医学部受験生クラスの授業に専念していた4年間、私は昭和大学病院の緩和ケアチームの高宮有介医師の講演を、受験生とともに毎年1回聞いてきました。昭和大病院の緩和ケア病棟で、医療スタッフの見守りの中、結婚式を挙げた直後命を全うされた20代の女性、受験の途中で発病し、勉強を続けながらも受験直前に亡くなった予備校生の生き方が、ご本人、家族の同意の上で、高宮医師の口から、死を見詰めて人がどう生きるのか、それを医療者はどうサポートするのかという問いかけとして語られ、その講演を聞いた医学部新入生の中には、最初から緩和ケアを目指して勉強している医学生が生まれております。緩和ケアを担う医療スタッフの卵が育ちつつあります。そして、このような話は医学生、医学部受験生だけ聞かせるものでもありません。
去る2月22日、私は上智大学で、緩和ケアの日本の先駆者、日野原重明医師のご講演を聞きました。98歳にしてお元気な日野原医師が今最も力を入れていることが小学生に死と命を教えていく授業であり、絵本「いのちのバトン」も書かれております。緩和ケア、まずスタートが大切ですが、緩和ケアはやがては船橋全体で、私たちが死を見詰め、限られた命の大切さを見詰め直していくきっかけになると思います。
松本文化学校教育部長におかれましては、この2年間、教育に対する私の問題提起を温かく受けとめいただき感謝しております。(予定時間終了2分前の合図)プロの国語教師、学校経営者として現場に戻られるご予定とのことですが(3月8日「やがて戻られると思いますが」と訂正許可)、船橋の学校で医療センター・緩和ケアスタッフが命の授業を行う日がきっと来ると夢見て、医療と教育の世界をつなぐ問題提起をしてまいりたいと思います。
命はバトンされていきます。私もここにいる方も、100年後にはほぼ全員が死にます。しかし、生きている間、多くの人々に導かれながら、後世に生きる人がよりよき生と死を迎えられるように命のバトンを受け継いでいく使命があるのではないかと感じております。
今回の質問に当たっても、在宅医療を進めるNPOや市民の方々など、さまざまな要望があり、今回の質問はその患者・家族の声の一部をたまたま私が代弁させていただいたに過ぎません。船橋市もぜひ、命のバトンを受け継いでください。
最後に、市長におかれましては、医療センター、緩和ケア、在宅医療の充実のために財政的配慮も含むお考え、ご決意がありましたら、ぜひお聞かせください。
以上で、私の質問とさせていただきます。
[市長登壇]
◎市長(藤代孝七)
朝倉議員の医療全般についてのご質問でございますけれども、市民の生命、健康を守ることは行政にとっても重要な課題であるということは、市といたしましても、これまでいろいろな取り組みを続けてまいったところでもございます。
そうした中で、来年1月には医療センターに緩和ケア病棟が完成いたしますが、これは患者さんとご家族にとって大きな支えになるものと、このように思っております。医療センターにつきましては、こうした取り組みとともに、船橋市の地域医療の核として市民生活にとって重要な部分を担うことはもとより、改革プランの中でも触れているように、救急医療や高度医療、地域の小児医療やがん医療の拠点としての役割と使命を果たしていくことが求められておりますことから、市といたしましても、しっかりとした経営基盤をつくりながら、引き続き必要な財政支援を行ってまいりたいと思っています。
また、在宅医療につきましては、関係機関の協力が必要不可欠であることから、まずは医師会等への相談を行ってまいりたい、このように考えております。