【船橋市の変異株もδ株(デルタ株)等優位に】船橋市での6月・7月の新型コロナウイルス感染者数(陽性者数)と 変異株におけるδ株等とα株の週ごとの変化推移グラフ

2021年8月6日 船橋市議 朝倉幹晴

船橋市保健所からの週報をもとに、船橋市での6月・7月の感染者(陽性者)数と、変異株検査におけるδ株等とα株の変化をまとめたグラフを作成しました。船橋市の変異株においても、δ株(デルタ株)等が優位となってきております。感染・伝播性が強い変異株についても、基本的対策は従来株と同様です。
なお、下記注釈にも書きましたが、グラフの中の陽性者数には市内医療機関や他市保健所からの数も入っています。その場合は変異株検査はできてないか、できていた場合でも船橋市保健所に報告されない可能性があります。

直近の船橋市保健所での検査に絞ったデータ(7月26日~8月1日)では陽性者276人のうち、Ct値30以下で変異株検査に回された数は120人(43.5%)でその中でδ株等が109人、α株が11人です。なお船橋市保健所ではβ株・γ株は検出されてません。

 

 

 

注 1、陽性者数と、変異株検査のδ株等・α株数はグラフの縦軸の目盛りが異なります。

(船橋市保健所においてはβ株・γ株は検出されていません)

2、陽性者数には保健所以外の医療機関や市外保健所からの報告数を含みます。

3、変異株検査は、船橋市保健所でのCt値30以下の検体の再検査によるものです。

 

以上のように、本グラフの陽性者数と、δ株・α株数は直接的な量的関係があるわけ

ではありませんが、変化の傾向の概要を把握するものとしてご覧ください。

 

<参考>

変異株は以下、7月9日の船橋市議会質疑を解説図付きで載せていますのでぜひご覧ください。(質疑時点ではα株優位でしたが、この後、δ株等優位に置き換わりました)

2021年7月9日、船橋市議会での朝倉幹晴質疑動画(変異株部分)(15分)

 

<文字での記録>(概要)

朝倉質疑1

私は2月24日本会議で、変異株検査の必要性を訴えました。現在検査されている変異株の変異箇所は、ウイルスがヒト細胞の接着するときの突起(トゲ)のSタンパク質部分で、この変異が感染・伝播性の増加につながります。

 

その時、保健所理事のご答弁は「陽性コントロールがないのできない」でした。5月GWから6月にかけて、2月24日議会の「変異株検査はできない」との保健所理事答弁の載った3月議会を報告した「ふなばし市議会だより246号」は市民の方々に5月GWから6月にかけて全戸配布されました。

3月18日予算決算委員会全体会質疑で市長に再度要請し、市長からは「確認させていただいてやりうる範囲のことは努力してみたいと思います」との答弁をいただきました。

そして、市は方針転換し、4月よりα・β・γ株に共通のN501Y 変異、5月にはβ・γ株に共通のE484K変異、その後デルタ株等のL452R変異検査もスタートしました。よい変化であり歓迎いたします。私自身、分子生物学を学び教えてきたことを踏まえて再三質疑したことで、船橋市という自治体の保健所の検査方針の転換を促すことができた点をうれしく思います。ここに分子生物学実験で使うチューブがあります。今は私自身は研究室にはいませんが、自らの原点を思い返す意味でいつも財布に入れて時折見返しています。

市民に全戸配布された「ふなばし市議会だより246号」と違うことを疑問に持つ市民もいます。そこで3月18日の質疑以降、市内部の検討、厚生労働省、国立感染研とのやり取りや、陽性コントロール、試薬(プライマー)の入手も含め、どのような経緯で実施にいたったか、そして現時点では、どのような検査の流れになっているかをお示しください。

変異株PCR検査における技術的な点も確認させていただきます。議場には説明資料を配布させていただきました。一部訂正がありますので、発言の中で訂正いたしますが、朝倉幹晴公式サイトには訂正済の資料、ならびに変異株に関する動画を含めた様々な解説も掲載いたしましたのでご確認ください。

新型コロナウイルスに感染した場合、検体内にはウイルスRNAがあります。それをまず逆転写酵素でDNAに置き換え、PCRでのDNA増殖サイクルに入ります。95℃で二本鎖をほどき、60℃でそれぞれの鎖にウイルスの塩基配列にピタリと張り付くDNAプライマーを結合させ72℃で、好熱性細菌のDNAポリメラーゼでDNA二本鎖を増幅させる。この1サイクルが約2・3分。この1サイクルごとにDNAが2倍・4倍・8倍・16倍・32・64・128・256・512・1024倍・・・と増幅していきます。


さて、、最初の検体内のウイルスがどれぐらいの量含まれていたかの目安となる数値がCt(threshold  cycle)値です。

Ct値とは、「閾値(しきい値)」に到達するまで何サイクルの増幅が必要だったという値です。図で点線で示しましたが、新型コロナウイルスの一般PCR検査ではCt値が40より大きくなる、つまり微量の場合、あるいはまったく増幅されない場合は陰性となります。

そして、ウイルス量が多い検体の場合、増幅曲線は赤線のように早めの増幅となり、閾値に到達するのが早くなります。Ct値40の陽性検体よりも最初のウイルス量が1000倍であった場合、210=1024でCt値は10少ない30となります。船橋市保健所から、3月25日に変異株検査のCt値の基準は27以下とした報告を議員宛報告でいただきましたが、現在の変異株検査のCt値基準はいくつでしょうか?

 

保健所理事答弁1

新型コロナウイルスの変異株を探知するためのPCR検査については、令和3年2月5日付厚生労働省通知により全国の地方衛生研究所で行われることとされ、国立感染症研究所から地方衛生研究所に検査手技の伝達及び陽性コントロールの配布等が開始されました。この時点では、船橋市保健所は地方衛生研究所ではなかったことから陽性コントロールの配布等はされないと、厚生労働省に問い合
わせたところ、回答を得ています。陽性コントロールとは、検査を行った際に必ず陽性となる検体のことで、検査の精度を確保するために必要となるものでございます。その後、3月4日に千葉県から、変異株PCR検査を希望する検体がある場合は千葉県衛生研究所と調整するよう通知があり、本市は、千葉県衛生研究所に検査を依頼することとし、3月24日から検体を送付いたしました。そして、3月下旬より市保健所における検査の実施に向け準備を行い、検査手技の習得、陽性コントロール及び試薬の確保を進めるとともに、千葉県衛生研究所への視察、研修の実施、精度管理等の準備を行い、4月12日からN501Y変異株検査を開始しました。。4月8日に厚生労働省通知で入院及び退院の基準が緩和され、医療機関の理解が得られたことも、検査を開始する後押しとなりまし
た。さらに、5月12日には船橋市保健所が、船橋市衛生試験所として、地方衛生研究所協議会への加入が認められたこともあり、さら
なる検査機能の充実を目指し、取り組んでいるところです。その後、5月20日からE484K変異、6月11日からL452R変異検出のPCR検査を実施しております。

次に、現時点の検査の流れですが、まず新型コロナウイルス感染症かどうかを診断するためのPCR検査を行います。この検査結果で陽性であり、ウイルス量の比較的多い指標となる、Ct値(シーティーち)が30以下であった検体や医師が必要と認める検体は、その翌日に変異株かどうかを確認するためのPCR検査を行います。現在、変異株PCR検査についてはアルファ株、
ベータ株、ガンマ株共通のN501Y変異、ベータ株、ガンマ株共通のE484K変異、デルタ株等のL452R変異の3種について行っています。


さらに、変異株PCR検査を行った全検体について、株を確定するための遺伝子解析を行います。遺伝子解析は国立感染症研究所に依頼しています。変異株PCR検査結果および、遺伝子解析結果により、地域での変異株の流行を把握し、注意喚起を実施するなど、感染拡大防止に努めております。

朝倉質疑2

昨年の2月25日のPCR実施を求める質疑以来、厚生労働省・国立感染研から千葉県衛生研究所などの地方衛生研究所に来る情報や試薬が、中核市の船橋市保健所には来ない「情報・試薬格差」が問題の根底にあることを指摘し続けてきました。今回船橋市保健所が、船橋市衛生研究所として地方衛生研究所協議会に加入が認められ、情報・試薬の提供が千葉県衛生研究所と対等になるのは画期的なことで歓迎いたします。直近のデータの分析で、現在船橋市内の陽性者の中で変異株の割合は何%でしょうか?各株ごとの%とともにお答えください。

保健所理事答弁2

遺伝子解析まで終了している直近のデータでお答えします。6月19日から6月25日の期間に、市保健所において診断用PCR検査を実施した結果、全陽性検体数は34検体でした。うちCt値が30以下であった検体は27検体で全陽性検体数の79%です。
この27検体について、市保健所の変異株検査を行った結果は、アルファ株が23検体で85%、デルタ株が4検体で15%です。変異株の割合は100%でした。

船橋市内では、このほか、市保健所以外からの変異株陽性者の報告例もございます。

 

朝倉質疑3

SARS-CoV-2の変異速度は24塩基/年(2塩基/年)と早く、今後も新しい変異の出現は予測されます。今後は新しい変異株についてどのように対処されますでしょうか?

保健所理事答弁3

今後、新たな変異株が発生した場合の検査体制についてですが、引き続き、試薬等の早期入手に努め、迅速に新たな変異株PCR検査を実施していく予定です。

また、先ほど申し上げたとおり変異株の割合は現在100%であることが想定され、3種の変異株PCR検査でいずれも陰性の検体等は新しい変異株の可能性があることから、迅速に国立感染症研究所に検体を送付し、遺伝子解析を依頼してまいります。

今後も、新型コロナウイルス感染症の感染状況及び国、県の動向等を注視し、柔軟に対応するよう努めてまいります。

 

【参考】

変異株の現状と最新状況の調べ方の基礎知識(2021年6月4日作成)

「PCR法とCt値」に関する大学入試問題(2021年慶応大学看護医療学部「生物」第1問(4))と解答・解説