救命蘇生法の基準改定(2005年→2015年)の意味と新旧比較演示(演示動画)~日本相撲協会の救命蘇生法の大切さを理解しない対応を見て再掲載します(2018年4月5日)

2017年11月にUPしたものです。日本相撲協会の救命蘇生法の大切さを理解しない対応に見て再掲載します(2018年4月5日)

私は20年前に救急蘇生法を習得して以来、その普及の必要性を市議会などで訴え続けてきました。2017年7月4日の市議会でも改めて質疑いたしました。多くの市民が、2015年改定の新しい救急蘇生法の意味を理解し習得すること
で、多くの命が救われます。とはいえ、市消防局で新基準の救急蘇生法を受講した人はまだ少ないのが現状です。更なる普及の必要性を訴えていきたいと思います。

★救急蘇生法の概要
船橋市では意識不明の急病人を発見し救急車を呼んだ場合、救急車が到着するまでかかる平均の時間は約9分です。その場に居合わせた市民(bystander)が、救急車到着前に救急蘇生法とAED使用を行うことが、救命や後遺症防止のために必要です。心室細動からの回復には、AED使用での電気ショックによる除細動が必要です。

★救急蘇生法の改定の目的
日本の救急蘇生法は、アメリカ心臓協会(AHA)のガイドラインに基づいて改定されます。2005年基準(旧基準)では、「ABC」の順、Airway(気道確保)→Breathing(人工呼吸)→Circulation(心臓マッサージ)の順に行うことが推奨されていました。しかし、その後の、救急現場での実践と研究から

①AED使用による除細動の必要性
②心筋に血流を送る冠循環と脳への血流を維持する胸骨圧迫(Chest Compression)が優先されるべきこと

が明らかになり、2010年に改定、その後微修正され2015年基準(新基準)に改定されました。現在使われている2015年の新基準では、Chest Compression( 胸骨圧迫)→Airway(気道確保)→Breathing(人工呼吸)と、到着しだいのAED使用による除細動(Defibrillation)、つまり「CAB&D」の順となっています。この基準改定の意味を理解し、新基準の救急蘇生法を習得していくことが必要です。

私自身が、協力者と一緒に、ABCの順の旧基準とCAB&Dの新基準を演示した動画が以下にありますのでぜひご覧ください。
<ご覧いただくにあたっての留意点>
1、私は定期的に講習を受け手技を体得し、いざというとき実施できる備えをしています。ただ日常は救命救急に関わっていないので、動作などに若干のずれや一瞬のとまどいがある点はご容赦ください。
逆にいうと、若干のずれや一瞬のとまどいを持つ市民でも十分に救命蘇生に役立てる可能性がある例示としてご覧ください。
2、人工呼吸に関しては「新基準」において「技術と意志があれば」との但し書きがあります(上記フローチャートの但し書き参照)。つまり、技術に不安があったり、躊躇する状況があれば、人工呼吸はせず、胸骨圧迫のみを継続し続ける形でも大丈夫です(胸骨圧迫のみを続けることを「ハンズオンリーCPR(心肺蘇生術)」ともいいます。)。その場合は新基準最初の部分での「胸骨圧迫」をAED操作時の中断以外は、救急車到着までずっと続ける形となります。
3、「新基準」では2のようなハンズオンリーCPRでもOKなのですが、技術取得者は、胸骨圧迫:人工呼吸=30:2で、途中に人工呼吸をはさむのがベストです。そのベストを取得してほしいという思いから下記演示では人工呼吸を入れる形を演示しました。

救命蘇生法(旧2005年基準)演示(ABC)(2分)
新基準(2015年)(CAB&D)動画(2分)
新基準の中のAED使用部分抜粋(1分)

★ABC(旧基準)とCAB&D(新基準)の差~胸骨圧迫に入る時間が24秒短縮~
心筋への血流である冠循環は大動脈の根元からすぐに分岐するものですが、ここに十分な血液を送るためには強く持続的な心臓への圧迫が必要で、Cの表現も心臓マッサージ(Circulation)から
胸骨圧迫(Chest compression)に置きかえられました。今は呼吸の確認の後、まずC(胸骨圧迫Chest compression)を30回行い、その後、AB(気道の確保や人工呼吸)を行なう順番となっています。またこの途中で
AEDが到着しだい、AEDを使用し、終了後再び、直ちに胸骨圧迫を再開する基準、つまりCAB&Dとなりました。
旧基準(ABC)で行った場合心臓マッサージまで入る時間は44秒、新基準(CAB)では20秒で新基準のほうが24秒早く血流の回復ができるわけです。
BとCの比率についても、旧基準ではB(人工呼吸)2:C(心臓マッサージ)15に対して、新基準ではC(胸骨圧迫)30:B(人工呼吸)2に変更されました。

★船橋市消防局での講習をせひご受講ください。
実際に実践できるようになるためには2・3時間の講習を受けることが必要です。船橋市消防局でも講習をやっています。ぜひご受講ください。(この受講の場においては、救命救急を業務としている消防局職員による細部まで躊躇やとまどいのない完全な演示の動画も見せていただけます。市民レベルの私の上記動画とご比較いただき、お考えいただければ幸いです。)

 

★私もどこにでも話に伺います。
大切なことですので、できるだけ多くの人が知ってほしいと思います。私も基本的な話しでしたらどこにでも伺って話します。ぜひおよびください。(少人数の会合ででも短時間でもお話しします)

<講演の様子>駿台予備学校市谷校舎にて医学部受験生にこの内容を講演・演示した時の様子です。(2017年6月19日)