船橋市立中学校でのICT活用「数学」授業見学報告(古和釜中学校)~2021年度からの船橋市立全小中学校タブレット端末配備に備えて~

2020年12月12日 船橋市議(文教委員)・予備校講師 朝倉幹晴

船橋市は、2021年度より、市立小中学校・特別支援学校の児童・生徒全員にタブレット端末を配備し、それを活用したICT教育を進めようとしています。これは国全体で同様の動きを進めるGIGAスクール構想の一環です。
電子黒板についても、すでに全クラスの教室に配備した中学校に加えて特別支援学校、小学校も3~6年生の全クラスに2021年度から設置される方向です。12月議会に議案が提案されています。

●未定で検討中のもの
・小1・2年生クラスへの電子黒板配備
・タブレット端末の自宅への持ち帰りの可能性(その場合もネット環境がない世帯への環境整備)

私は、タブレット端末配備や電子黒板については、過度に機器に依存せず、使いこなすことができれば有効な手段になりうると思います。そのためには、
1、教師が機器に支配されずにツールとして使いこなすこと
2、生徒と教師、生徒どうしの生(リアル)のコミュニケーションが機器の介在によって阻害されないこと
が必要です。

千葉県内のある学校でのICT教育を見学したある方から、「教師も生徒も下の機器ばかりを見て授業が生きていない」「教師と生徒、生徒どうしのコミュニケーションができていない」との感想を持ったとの声を聴きました。ICT機器にとらわれ依存しすぎる使われ方をすることに対する危惧も持っています。そこで、伝統的な、「紙に書いて理解していく」ことの大切さを、議会で訴えました。

2020年11月24日(火)朝倉幹晴、船橋市議会議案質疑録画中継(20分)(0~6分「保健所PCR検査」・6~11分「ICTに過度に依存せず『書く』ことを重視した教育を」・11~20分「コロナ後の駐輪場施策」)

そこで、12月11日(金)午前に、船橋におけるICT活用教育の先行実施をしている船橋市立古和釜中学校の中1の数学の授業を、同僚の池沢みちよ市議とともに、見学させていただきました。以下見学報告をいたします。そして、最後に、今後の全校実施に向けた私の考えや、私自身の予備校や学習サポートの教育実践や、受けてきた教育を通じての想いを含めて述べます。

教室内の授業の様子は何枚も写真に撮りましたが、学校長にご確認いただき、プライバシーに配慮した教室内は2枚のみと廊下の様子1枚を掲載します。

1、黒板の板書と左側の設置の電子黒板でのタブレットとの連携

2、生徒の机の上の様子。従来のノートへの書き取りとタブレット端末への入力発信が併用されている。

3、WiFiは廊下に設置してある。(2021年度以降は、全教室で使うため、全教室ごとに設置する。)

<2020年12月11日、3限の中1の数学の授業の流れ>

テーマ 図形の移動の理解

1、3つの移動方法の整理、対話と板書・板書のノートへの書き取り(約15分)
平行移動・対称移動(線対称移動)・回転移動(回転移動の特殊例としての点対称移動)
2、回転移動の理解と対話(約15分)
身近にある回転移動の例として思いつくものを各生徒がタブレットに入力(多数可能)
→全生徒分を電子黒板・タブレットで共有→教師講評・生徒と対話(観覧車をめぐる補足説明を下記に紹介しています)→他の生徒の答でよかったと思うもの3つ入力

3、対称移動の理解と対話(約15分)
回転移動と同様

授業を拝見し、ICT機器に依存することなく、適切に活用し、従来の教師と生徒との対話・生徒どうしの対話が見事に引き出される授業であり、この形での活用ならば、有効だと感じました。

まず、1において、従来の伝統的な対話・板書・ノートへの書き取りを重視しており、タブレット・電子黒板のみに依存することがない点が確認できました。
次に2・3のような対話型授業は従来も行われてきたことです。従来の方法としては、2において答を各生徒が紙に書き、全生徒(あるいは一部の生徒)の紙を黒板に貼って発表させ、その中で対話するという形です。したがって、ICT機器(電子黒板・タブレット端末)がなくても、近い形は実施できる授業です。

ただ、次の点がICT活用の利点と感じました。私も学習サポートなどで同様な対話型授業をしたことがあるのでわかるのですが、2を電子黒板・タブレット共有なしでしようとすると15分では無理で、丁寧に実施すると25分はかかるでしょう。すると同じ授業内で3まで入ることは不可能で次の授業となります。感触としては、従来の1.5授業分を1授業に圧縮できると感じました。

生徒たちの答えには面白いものがありました。回転移動では「運命の歯車」、対称移動では「人の心」。数学の授業で「運命の」とか「人の心」などと書くのは、「ウケ狙い」も含めて、科目の枠にとらわれたくない生徒の自由な発想があり、そのセンスも教師は対話の中でうまく受け止め対話していました。

 

授業後、学校長、また同行した総合教育センター長と懇談しました。実は、この授業の数学の教師は、ICT教育実践先行校として熟練した授業を磨いてきた教師とのことでした。「この教師のレベルを、2021年度からの全小中学校の教師の実践にすぐに求めることは不可能。ただ将来はこのレベルを目指して研修をしていく。とりわけ導入時の4~7月期は、まずタブレット端末の操作に教師も生徒も慣れることから出発し、本格的な活用は9月以降になる。」とのことでした。そして古和釜中(小学校では坪井小)の先行実施の取り組みを船橋全体で共有していくために、以下のような冊子を作りながら研究・研修会を開いているとのことです。

私も、同感です。今後も、あくまでもICT機器に過度に依存するのでなく、適切に活用する授業が、船橋の全小中学校・特別支援学校で実施できるように、提言していきます。


<観覧車は回転移動か?ー授業の深まりと私の追加意見ー>

「身近にある回転移動」の例として多くの生徒が「観覧車」を出しました。教師はそこをうまく導入しながら、生徒たちに「本当に観覧車は回転移動か?」と問いかけました。教師も板書で簡単に補足説明・問題提起した内容を、以下に私なりにイラストレーターで描画しましたので紹介します。そして、もし授業時間数が十分あればとのことが前提ですが、私なりに、対称移動の説明に移行せず、回転移動だけを深めていく授業の案が思いつきましたので紹介します。教育関係者の方はご参考にくだされば幸いです。

●12月11日授業での教師の適切な問題提起

観覧車は以下のような動きをしますが、これは回転移動でしょうか?

もし本当に完全に回転移動だったら以下のようになるのではないでしょうか?


すると特に頂点に来た時はたいへんですね(笑)。(ここまでが教師による問題提起で、生徒たちも面白く受け止めてました。)

●対称移動に移行せず、そのまま回転移動を深めていく授業(案)

(時間の関係で教師の問題提起は上記の図どまりでしたが、もし時間があれば以下のような図を書いて説明も補足できますね。)

「観覧車の円周や軸は回転移動です。しかしゴンドラは連結部が固定されておらず、乗った人が安定するように、底面が重い構造になっており、常に下を向くように連結部で回転します。観覧車の軸が1周(360°)回転移動したとき、ゴンドラは同時に、連結部を中心に1周(360°)回転する回転移動しています。つまり、観覧車は2つの回転移動を組合せた乗り物です。
このように2つの回転移動を組合せた動きについて、思いつくものありますか?」

生徒との対話と討論

「たとえば、太陽系における地球と月(惑星と衛星)の動きがそうですね。ただ地球と月は観覧車のようにが1回転と1回転が同時に起きてない点が違います。他に2つの回転移動の組み合わせのものをできるだけ考えてみましょう。」

 

 

 

なお、「図形の移動」(図の対称)そのものの内容にご関心のある方は、私が緊急事態宣言中に発信した以下のYou tube動画とそのために作った図もご覧ください。

●【16分動画】「線対称・点対称・回転対称」WEB朝倉学校(数学)。2020年4月10日。朝倉幹晴(船橋市議・予備校講師)。

 

<参考 私の教育実践と想い>

●大学受験予備校でのプロジェクター・大型スクリーン活用授業&対面授業

私自身も、大学受験予備校にて1990年代より、プロジェクター・大型スクリーンを活用した授業や特別講座を実施しながら、機器を使用しない通常の講座もしています。機器利用と機器を利用しない対面授業の兼ね合いや効果などについていろいろ経験上の想いを持っていますので、それも含めて、船橋市教育委員会への提言を続けていきます。写真は福島原発事故に関するプロジェクター・大型スクリーンを使った講座(2015年)。

●学習サポート

ボランティアスタッフとともに個別の学習サポートもしています。
(特に毎月第3土曜日10~20時の船橋市青少年会館(若松)での無料学習サポートは誰でもご利用いただけます。必要な場合はご連絡ください)

●アマゾンなど取り扱い拙著紹介

「ウイルスと遺伝子」「休み時間の生物学」「円」「三角形」「図形の証明」「ナイチンゲールーその執念と夢ー」
朝倉幹晴著書一覧(アマゾン取り扱い)

 

●私の高校(愛知県立時習館高校)時代のノート。

私の時代はICT機器などなく、授業を聴き、板書をうつしながら理解し、整理していきながら、学んでいく伝統的な勉強で、基礎知識と理解を深めていきました。小・中学校のノートは見当たりませんが、高校時代のノートは40年たった今でも大切にとってあり、読み返すと記憶がよみがえります(松本零士ファンだったので、表にも裏にも「大化学」と書いてあります)。伝統的な手法も決して軽視すべきではありません。ICTと伝統的な授業との適切な融合・使い分けが必要と思います。

 

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