2021年大学入試共通テスト「生物」第5問A(配点12点)問題・解答・解説
【解説】
問1
受精直後の胚乳核に含まれるゲノムDNAの量は、受精直後の受精卵の核に含まれるゲノムDNAの量と同じである。
→×。被子植物の重複受精では、卵細胞(n)+精核(n)→受精卵(2n)→胚(2n)。極核2つ(n+n)+精核(n)→胚乳核(3n)→胚乳(3n)
なので、胚乳核のゲノムDNA量は、受精卵の核のゲノムDNA量の1.5倍含まれる。
フロリゲンは、花芽の分化に関係する遺伝子の発現を誘導する。→〇
花の4種類の構造(がく片、花弁、おしべ、めじべ)の形成には、A、B、およびCの三つのクラスの遺伝子が必要である。→〇(被子植物の花形成のABCモデル)
花粉母細胞は減数分裂により、4個の細胞からなる花粉四分子となる。→〇(上図内でも確認してください)
問2
植物の組織を細胞分裂や分化の観点で見ると、細胞分裂を停止し分化した永久組織と、細胞分裂を継続し未分化状態を保つ分裂組織に区分できる。分裂組織には、茎の肥大成長につながる細胞数増加に関わる形成層と茎や根の伸長成長につながる細胞数増加に関わる茎頂分裂組織・根端分裂組織がある。分裂組織自体は細胞分裂を継続し未分化状態を保つが、分裂して増えた細胞はしだいに分裂組織から周辺に押し出され、様々な組織に分化していく。
図1で細長いWと、細長くなりつつあるXは葉に分化しつつある状態である。未分化状態を保つ茎頂分裂組織は茎頂の先端部に近い位置にあるので、ZではなくYである。
この問題では、記述にもあるように葉は成熟すると扁平になるので、丸いP1が未成熟、扁平なP2がより成熟状態に近づいている。Iは分化したばかりである。したがって先に形成が始まったのはP2で、その次にP1、Iの順に形成が始まったと考えられる。よって、(Y、P2)(3点)。
問3
茎頂分裂組織には、葉を扁平にする作用がある。
→図3で、I(葉に分化を始めたばかりの部分)とM(茎頂分裂組織)の連絡が遮断されると、葉は扁平になれない。図4・5で、Iは、Mとの連絡があれば扁平な葉になることができている。したがって〇。
生じたばかりの葉には、次に生じる葉を扁平にする作用がある。
→図4で生じた生じたばかりの葉P1、P2とIとの連絡を遮断しても、IとMとの連絡が維持されていると葉は扁平になることができるので、生じたばかりの葉には、次の葉を扁平にする作用はない。×
茎頂分裂組織には、葉の向きを決める作用がある。
→すべての図で、必ず、茎頂分裂組織に向く側が表側になっているので、葉の向きを決める作用がある。〇
よって、(a、c)(5点)。(aのみ()、cのみ()は部分点2点)
★図のカラー化の意味と活用法
なお、最初にも書いたように、本当の入試問題は白黒で色はない。本問題・解説ではイメージ補強のため、葉に分化したP1、P2には緑色を付けた。しかしIは白のままに描いた。設問の実験2の記述には次のように書いてある。
「そこから生じたばかりの二つの葉(P1とP2)が見えた。P2は、P1より扁平で大きかった。このまま茎頂を培養すると、P1もP2も扁平な葉へと成長した。さらに、Iの位置から新たな葉が生じ、やはり成長して扁平になった。」
つまり実験(観察)時点でP1、P2は葉になっているのに対して、赤字で書いたように、Iは実験(観察)時点ではまだ葉になっていない。そこでP1、P2を緑、Iを白のままに描いた。実は、この問題は、そのことが理解できていないと解けないことがあり、このカラーによるイメージ補強により、実際の白黒の入試問題よりも、この画面の問題は解きやすくなっている。
このように、カラーのイメージ補強で問題を理解しやすく解きやすくすることには、当然、白黒で解かなければいけない入試本番に向けた演習としては、完全には正確ではない。
しかしながら、本サイトの解説は、「白黒の入試問題でもちきんと理解し解けてしまう」受験生対象というよりも、苦手な受験生や解けない受験生に向けた解説を目標に作っている。理解の出発点にカラーのイメージは有効と考え、カラーのイメージ図を描くようにした。この解説をとっかかりに理解を進め、しだいに入試本番に近づいたら、白黒の問題集や模試の問題などでもきちんと解けるように、本番に向けた準備をしてほしい。