結核集団感染事例の発生について(9月27日、保健所理事より報告)

2021年9月27日 船橋市議 朝倉幹晴

2016年7月に学習塾における集団発生以来ですが、結核の集団感染事例が以下のように発生しました。ご留意ください。

 

 

 

参考 2016年9月28日(学習塾集団感染発見後) 船橋市議会質疑議事録

◆朝倉幹晴 議員  次に、結核対策について質疑させていただきます。
本年7月に発覚しました船橋市内の学習塾での集団感染事例につきましては、全国放送になったこともあり、私のところにも電話あるいはメール等で多数問い合わせが来ております。
発覚からまず現時点まで、9月の下旬時点までの保健所の対応はどうだったでしょうか。そして、接触者調査ですね、実際の発病者に接触した人の調査、そして発病者、感染者数総数、そして小中高校生のそれぞれの数はそれぞれどうなっているでしょうか。
実は、今、必死に封じ込めを行って検査をしているところですので、基本的に市内で例えば普通に歩いていて感染することはないんですが、やはり私のところに問い合わせた電話の中には、歩くこと自身が不安になっているというような声も聞いております。きちんと、その、発病者と濃厚な時間、同じ狭い部屋で接触して、この風邪のしぶきを浴びるような範囲にいたり、あるいは換気が悪いところでいたりすると感染の可能性は高まるわけですが、通常の生活においては、どうしても心配だったらマスクをする必要がありますけど、その、心配ないはずなんですけど、それでも不安が広がっている状態ですから封じ込めを徹底していただきたいということで、まずお聞きします。
それから、市保健所が結核感染検査と、IGRAの中でQFT-3Gという方法を選んでいます。これはお手元の資料のように、実は結核菌に私たちが感染が成立してしまうと、それに対して免疫系が働き出すんです。その免疫系のリンパ球がインターフェロンガンマ(interferonγ、IFNγ)というのを出して、それが結核菌に感染した一つのしるしになるんですが、一般の普通の事例、ほかの事例に対してもIFNγ(インターフェロンガンマ)は出るわけですから、結核菌特異的なIFNγが出るかどうかをほかのIFNγと区別しながら検査するという方法が確立されておりまして、船橋市保健所ではそれを採用しております。ただ、Tスポット(T spot)という別の方法もありますので、なぜQFT-3Gを選んでいるかについてお聞きします。
それから、実は、今回のように感染の箇所が限られていて、そこでだけで発生が止まっていればいいんですが、例えばまた別の場所で、単独で1人発生したとなってくると、もしかしたらその塾関係者からこう、まあ、どこかで感染が広がっている可能性もあるんですね。で、そうするときには、遺伝子を検査して、その遺伝子の菌株ごと、菌種ごとにタイプが違うので、感染ルートが明らかにできる方法が遺伝子解析、VNTRという方法があります。反復配列多型解析(Variable Numbers of Tandem Repeats)という方法があるんですけど、これを今どこで行っているんでしょうか。そして、今回の事例については、その分析はどうなっているんでしょうか。
それから、発病者、感染者への、児童生徒への治療体制、そしてその期間、保護者と本人への説明はどのようになっているでしょうか。それから、今回、感染症予防法に基づく感染症審査協議会、今回も動かれたと思うんですが、その構成、役割、今回の事件のかかわりはどうだったでしょうか。
そして、やはり保護者の中で塾に対する不安が広がっております。ちなみに、2015年度の市立学校教員の腹部(10月18日「胸部」と訂正許可)X線検査の実施率は94.1%。未受診者は妊娠中などの事情がある人を含んでいますので、ほぼ完全な検査が行われています。ところが、塾に対してはそういう検査が行われていません。私も船橋の中学生の高校入試対策や学習サポートも続けていることもあり、先日結核検診、胸部X線撮影を受け異常なしと判定されました。学校教員のみならず私的な教育機関も含めて、結核感染予防を徹底すべきであります。
お手元に、ある予備校が講師向けに出している結核検診の案内があります。このように徹底しているところもある一方、今回のように結核検診や対策が徹底していないところもあります。小中学校へは学校薬剤師制度によって薬剤師が公衆衛生環境、光量や授業後の二酸化炭素量まで年1回は検査、それを行っていまして、教室環境もチェックされているんです。塾は法的には同様な観点の検査が義務づけられていないのですが、各塾の努力と市からの何らかの啓発が必要です。X線検査実施促進とともに教室などの環境保持も含めて、塾に対して働きかけていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
[保健所理事登壇]

◎保健所理事(小原隆之) 結核対策について、順次お答えいたします。
まず、今回の塾の発生で結核集団感染事例に対する保健所の対応でございますが、7月6日に感染症法に基づく発生届を受理し、患者や職場等に調査を開始し健康診断の対象者を決定し、家族や職場、同僚の健康診断を開始いたしました。塾の生徒の健康診断は、開始に先立ち保護者説明会を開催した上で実施いたしましたが、感染者が多く発見されたことから、健康診断の対象を拡大いたしました。感染が確認された方には医療機関を紹介して治療を開始しております。
次に、接触者調査の範囲でございますが、患者と接触のあった家族、親族、友人、職場同僚、塾を利用している児童生徒及び講師等の面談等で接触のあった保護者を対象とした165人でございます。9月21日時点での健康診断の結果は、発病者18人、感染者37人でございます。そのうち、小中高校生の健康診断の結果は、発病者が小学生1人、中学生5人、高校生8人。感染者は小学生6人、中学生8人、高校生14人となっております。
次に、保健所が結核感染の検査方法にQFT-3Gを選んでいる理由でございますが、検査手順が簡便であること、採血量が少なくて済むことからQFT-3Gを採用しております。
続きまして、遺伝子解析VNTRのご質問でございますが、千葉県衛生研究所に解析を依頼しており、最初に届け出のあった患者を含めて3人の菌株の検査を依頼して、全て一致しております。
次に、発病者、感染者への治療体制、期間及び保護者と本人への説明でございますが、結核は通常6カ月間服薬治療を行いますが、薬の飲み忘れ等は再発のリスクが高くなるだけでなく、薬に対する耐性菌をつくってしまうおそれがあるため、飲み忘れのないよう確実に服薬するよう指導しております。また、服薬による副作用が発生した場合の対処方法、治療中の生活、医療費の公費負担制度、服薬の確認方法についても保護者を含め個別に説明しております。
次に、船橋市感染症審査協議会でございますが、医師3名、弁護士1名、医療・法律以外の有識者1名の5名で構成されており、その役割は感染症法で就業制限、入院の勧告、入院期間の延長、通院医療費の公費負担を行う場合に審査協議会に意見を聞くことと規定されております。今回のような集団感染事例が発生した場合には、健康診断の実施方法等について意見を伺う場合もございます。
最後に、塾の講師に対する対応でございますが、塾の講師は感染症法上の結核定期健康診断の対象者に規定されていないことから、受診率等の実態把握ができませんが、労働安全衛生法など各種法律の規定により実施していると認識しております。学習塾に対しては、今回の集団感染事例を受けて個別通知により講師等職員の健康管理や施設の環境保持について注意喚起を行ってまいりたいと考えております。
以上です。
[朝倉幹晴議員登壇]

◆朝倉幹晴 議員  先ほど、教室で授業をする市立学校の教員のX線検査が徹底しているという話は私のほうからしたんですが、市の職員も結核のハイリスクのグループ……方々と接触する機会もありますし、あるいは市の職員が何らか、結核に感染する可能性もあります。市の職員全体の胸部X線検査やQFT-3Gの検査状況はどうなっているんでしょうか。
日本の全年齢の結核感染率は、「医療者のための結核の知識」によれば、20%程度とされております。潜在的結核感染者──LTBI(Latent Tuberculosis Infection)への啓発と治療はどうなっているんでしょうか。これは、先番議員の質問にありましたので、2番についてはご答弁……この、あ、ごめんなさい、これは答弁求めます。
次、3なんですが、日本は結核の中蔓延国というふうに言われています。2015年は10万人当たり罹患率14.4人、千葉県は14.1人です。10万人当たり10人以下(10月18日「10人未満」と訂正許可)にすると低蔓延国に至るわけですが、まだ14人という状態です。2016年7月1日発表の「改訂版ストップ結核ジャパンアクションプラン」、外務省や厚生省などが発表しているプランでは、日本はオリンピックの2020年までに低蔓延国10人未満を目指すというふうにされております。これについて、本当にあと3年でできるのかということで国が言っているんですが、本当にできるのかということをちょっと、なかなか難しいんではないかと思うんですが、これについて先般議員がご答弁を求めていましたので、これについては結構です。
次に、受診のおくれと診断のおくれ。まず、その結核感染した人が受診をするのがおくれてしまう、そして受診をした医師が結核と判断できない。それぞれおくれが指摘されておりまして、それが結核の集団感染などを引き起こすというふうに言われておりますので、それをどのように防ぐのかについてお聞きします。
ツベルクリン反応検査、BCGの接種とツベルクリン反応検査というのが、私たちの世代には従来行われてきました。ですから、皆さんの中にもツベルクリンとBCGの昔のイメージがあって、小学生のころにBCGやって、それでツベルクリンも検査するんだろうというようなイメージがある方も市民の中におられると思いますが、現状は実はその後の結核の医療の発展に伴って、BCG接種についても時期が異なっていますし、ツベルクリン反応(Tuberculin reaction)検査についても、BCGの免疫が獲得されたかどうか確かめるためには特に行わずに、感染時にはQFT-3Gなどにとってかわられておるという状況がありますので、そこら辺の詳しい経過についてご説明いただければと思います。
次に、「結核マンガ 沖田くんのタイムスリップ」というのがあります。これは沖田総司が現代にタイムスリップをして、そして結核を治療しかけたんだけど、治療の途中にまた幕末に戻ってしまったために感染が広がったというような、結核と闘いながらやったという話で、そういうストーリーでつくりながら非常に結核についてわかりやすく説明している冊子であります。このような資料も使いながら、結核に関する啓発をしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
最後に、感染症を予防し発生時も迅速に対応できる安心のまちづくりを目指そうということで、総括的な質問をさせていただきます。
さて、これまで結核を中心にインフルエンザ、ノロウイルスに関する各論の対策をお聞きしましたが、私の質疑の最後に感染症対策総論をお聞きします。
船橋市は、今、世界的な感染症流行の時代に直面しています。中でも重大なのは、まず、はしかです。日本では麻疹として感染症法に基づく5類感染症に指定され、ワクチン接種が2回必要です。しかし、1990年代以降は2回接種を義務づけている日本でさえ2回接種してない人が3割近くいます。また、流行しているはしかウイルスの型は数年ごとに変化していきます。このため、近年でも日本国内ではしかは流行を繰り返しており、ことし8月インドネシア・バリ島で感染し帰国した兵庫県在住の男性が関西空港を利用した際に、空港職員や医師に感染が広がり、この男性は8月14日に千葉県の幕張メッセで開催されたコンサートに参加したため、千葉県内でも感染が広がったとのことです。
従来、はしかはアジア・アフリカ諸国で流行していましたが、近年では欧米でも増大しております。増大の理由は、はしか流行国からの渡航者の増加とワクチン接種率が低下していることにあるとされています、船橋市ははしかに関する啓発活動も含めて行うべきです。
また、ジカ熱の国際的流行も重大な脅威です。ジカ熱は妊婦に感染すると子供が小頭症になるばかりでなく、感染した成人にも知能低下をもたらす可能性があると言われています。
2016年2月5日に4類感染症として指定されたジカ熱は、2008年に太平洋のヤップ島で初流行して以来、全世界に流行が広がり、今月初頭に患者数が300人を超えたシンガポールでは、そのニュースによって平均株価が大きく下落など、流行が社会に与える打撃ははかり知れません。
ジカ熱は主に蚊によって感染するために蚊が発生しないような環境を含む公衆衛生環境の整備が防疫体制として重要です。これも含めて感染症を予防し発生時も迅速に対応できるまちづくりについて、船橋市はどのような方向を目指しているのか、最後にお聞きして私の質問を終わらせていただきます。
[総務部長登壇]

◎総務部長(笹原博志) 所管事項についてお答えします。
市職員の胸部X線検査につきましては、労働安全衛生法に基づく定期健康診断実施時に肺がんや結核、心臓疾患などの早期発見の見地から、全員実施しております。人間ドッグや主治医による健康診断の結果を証明する書面を提出することで、定期健康診断にかえている職員についても同様に、1年度に1度、胸部X線検査結果を提示していただいております。
これに加えて、職務上結核に罹患している、もしくはその疑いのある者と接触する機会のある保健所保健予防課結核感染症係、総務課検査係の職員については、平成23年度より2年に1回、さらに平成26年度からは消防局救急隊員、生活支援課ケースワーカー、平成27年度からは看護専門学校の教員として新たに配属された職員に対し、結核に罹患している者との接触による結核感染の有無を判定できるようにするため、ベースラインとしてQFT-3G検査を実施しております。
[保健所理事登壇]

◎保健所理事(小原隆之) 結核対策について、順次お答えいたします。
最初に、潜在的に結核感染している人への啓発についてでございますが、潜在的に結核に感染しているかどうかわからないことから、潜在性結核感染症として治療することはできませんので、結核住民健診や職場の定期健診等の機会を捉えて受診勧奨、咳が2週間以上続くなどの症状があるときの早期受診を広報やホームページ、出前講座、ヘルシー船橋フェア等の機会を利用して呼びかけ、結核の早期発見を推奨しております。
次に、受診のおくれに対する対策といたしまして、市民向けに広報やホームページ、出前講座、ヘルシー船橋フェア等、機会があるごとに症状があるときの早期受診を呼び掛けてまいります。また、診断のおくれについては、医師会等関係機関と連携して研修会を開催するなどして周知してまいります。
次に、ツベルクリン反応検査とBCG接種についてでございますが、結核の感染の有無を調べるツベルクリン反応検査を、小中学生に対しては平成15年3月まで、乳幼児に対しては平成17年3月まで実施し、その結果、感染が認められなかった者に対してBCG接種を実施していました。しかし、一度接種を受けた人への再接種の効果が認められないことがわかり、また乳幼児の結核感染率が著しく低下したことから、現在ではツベルクリン反応検査を行わず、生後1歳に達するまでにBCG接種をする方法に変更されております。なお、本市のBCG接種率は毎年100%に近く、高い状況でございます。
次に、議員からご紹介のあった結核の啓発漫画につきましては、非常に的確にわかりやすくつくられておりますので、今後市民に対する啓発に当たり参考にしたいと考えております。
最後に、麻疹、ジカ熱を含むさまざまな感染症を予防し、発生時も迅速に対応できる安心の町を目指すためには、保健所と医療機関、社会福祉施設等、市民一人一人が感染症の予防、拡大防止に対するそれぞれの役割を果たしていくことが重要であると考えております。保健所の役割といたしましては、常に感染症に関する最新の情報や発生動向をいち早く収集して市民、医療関係者及び社会福祉施設等に必要な情報を正確・迅速に提供し、的確に予防策がとれるよう啓発してまいります。
なお、感染症発生時には積極的に疫学調査を行い、迅速に必要な対策を行うことにより、感染症の拡大を防止し市民の健康を守り、安心安全に暮らせるよう取り組んでまいります。