2022年大学入試共通テスト「生物基礎」第3問「生態系」問題・解答・解説(配点15点)

2023年1月10日 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2022年大学入試共通テスト「生物基礎」第3問(生態系)の解答・解説を作成しました。ご活用ください。とくに下水処理における微生物の役割に関しては、船橋市高瀬下水処理場の微生物処理に関する2021年6月2日の船橋市議会での質疑も参考資料として掲載いたしました。

2022年大学入試共通テスト「生物基礎」第3問(生態系、配点15点

次の文章(A・B)を読み、後の問い(問1~5)に答えよ。

A 年降水量の多い日本列島では、主に(a)気温によってバイオームが決まる。中部地方の内陸から東北地方へを経て北海道南部にまで主に見られるバイオームは、ブナなどの落葉広葉樹が優占する夏緑樹林は、そこに生息する生物とから成立している。
ブナの葉を食うガであるブナアオシャチホコ(以下、ブナアオ)の幼虫は、しばしば大発生して一帯の葉を食いつくすことがある。(b)この幼虫は、日当たりの良い林冠につくられる陽葉よりも、日当たりの悪い下層につくられる陰葉から食い始める
(c)ブナアオが大発生すると、その幼虫を食う甲虫のクロカタビロオサムシが追いかけるように大発生する。同様に、ブナアオの蛹(さなぎ)を栄養源とする菌類のサナギタケも大発生する。そのため、ブナアオの大発生は長続きしない。

問1 下線部(a)について、地球温暖化の進行により、今後100年間で年平均気温は2~4℃で上昇すると見積もられている。これにより、現在の中部地方においてみられる図1のようなバイオームの分布が変化したとするとき、標高500mと標高1500mではそれぞれどのようなバイオームが成立すると予測されるか。予測の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。

問2 下線部(b)に関連して、図2は陽葉と陰葉における、光の強さと二酸化炭素吸収速度との関係である。図中の下向きの矢印は、陽葉か陰葉のいずれかが日中に受ける平均的な光の強さを示している。大発生したブナアオが陽葉と陰葉を共につけるブナ個体の葉を食い進むと、二酸化炭素吸収速度はどのように変化すると予測されるか。ブナ1個体当たりの変化の傾向を示すグラフとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。


問3 下線部(c)について、このような食物連鎖を含む生態系におけるブナアオ、クロカタビロオサムシ、およびサナギタケの栄養段階の組合せとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。

B 自然の生態系内で窒素は循環しているが、人間活動はその経路や量を変化させることがある。農地では、農作物が収穫されて食物として利用される。食物に入っていた窒素は排泄物として下水道に入り、その後、河川に出ていく。この場合、(d)下水中の窒素を取り除かないと、河川や海の富栄養化を引き起こす。また、森林では、(c)樹木の伐採および除草剤の散布による植生の一次的な消失が窒素の循環に影響することが知られている。

問4 下線部(d)について、下水処理場では、生物を利用して下水から窒素を取り除いている。この下水処理過程の順序として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。

無機窒素化合物の生成→脱窒
無機窒素化合物の同化→脱窒
窒素固定→脱窒
窒素固定→無機窒素化合物の生成
窒素固定→無機窒素化合物の同化

問5 下線部(e)について、人間活動によって森林植生の大部分が一時的に消失した後、そこから流れ出す河川水の窒素濃度の変化に関する記述としてもっとm適当なものを、次ののうちから一つ選べ。

植生が消失すると上昇し、植生の回復後も高い状態が続く。
植生が消失すると上昇し、植生の回復後に低下して元に戻る。
植生が消失しても変化しないが、植生の回復後に上昇する。
植生が消失しても変化しないが、植生の回復後に低下する。
植生が消失すると低下し、植生の回復後に上昇して元に戻る。
植生が消失すると低下し、植生の回復後も低い状態が続く。
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