2025年大学入試共通テスト「生物」第1問問題(配点18点)・解答・解説

2025年12月10日 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴
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第1問 味覚の多様性に関する次の文章を読み、後の問い(問1~4)に答えよ。(配点18点)

舌の味覚芽(味蕾(みらい))に存在する味細胞は、水などに溶けた化学物質を受容し、興奮する。その興奮が(a)神経によって大脳に伝わると、味覚が生じる。味覚には、甘味・うま味・苦味・塩味・酸味の5種類があり、それぞれ異なる種類の受容体を発現した味細胞によって感知される。
ヒトでは、苦味物質であるフェニルチオカルバミド(以下、PTC)に対する感受性に多様性が存在し、苦味受容体の遺伝子の一つ(以下、遺伝子R)にある遺伝的多型がその原因であることが知られている。人の集団において遺伝子Rの塩基配列を調べたところ、タンパク質のアミノ酸配列を変化させる3か所の一塩基多型(以下、SNP1~3)があり、その組合せとして4種類の対立遺伝子が見つかった。表1は、それぞれの対立遺伝子から合成される受容体タンパク質のアミノ酸配列の違いを示す。ここでは対立遺伝子の名称として、SNP1~3によって変化するアミノ酸の組合せを用いた。


問1 下線部(a)に関連して、次の記述(a)~(d)のうち、神経が刺激の強さの情報を伝える仕組みに関与しているものはどれか。その組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(4点)

(a)ニューロンの束の中で興奮するニューロンの数

(b)個々のニューロンにおける興奮の頻度
(c)個々のニューロンにおける興奮の伝導速度
(d)個々のニューロンにおける活動電位の大きさ

問2 ヒトの近縁種であるチンパンジーの遺伝子Rの延期配列を調べたところ、表1にある人の多型部位と相同な部位は、対立遺伝子PAVと同じ配列であることが分かった。人でSNP1~3を生じさせる突然変異はヒトとチンパンジーの分岐後に起こったとした場合、これらの突然変異が起こった順序として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。ただし、遺伝子Rの進化の過程で、同じ部位に突然変異が複数回起こることはなく、多型部位の間に組換えはなかったものとする。(4点)


問3 表1のSNP2は、受容体タンパク質の262番目のアミノ酸にアラニンとバリンの違いを生じさせる。表2の遺伝暗号表を参照しながら、次の(1)(2)に答えよ。

(1)遺伝子RのDNAにおけるセンス鎖(RNA合成の鋳型とならない側のヌクレオチド鎖)では、SNP2は何と何の塩基の多型と考えられるか。最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(3点)

(2)遺伝子Rから転写されたmRNAにおいて、翻訳開始(開始コドンの1番目)の位置から塩基の数を数えたとき、SNP2の一は何番目となるか。最も適当な数値を、次ののうちから一つ選べ。(3点)


問4 表1にある対立遺伝子をホモ接合で持つ複数個体(それぞれの遺伝子型をAAI/AAI、AAV/AAV、AVI/AVI、PAV/PAVとする)と、対立遺伝子AVIとPAVをへテロ接合で持つ複数個体(AVI/PAVとする)の、PTCに対する感受性を測定した。その結果、それぞれの平均値は図1のようになった。


図1の結果を考察した次の文章中のに入る語句の組合せとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)

SNP1~3のうち、受容体タンパク質の機能への影響が最も小さいアミノ酸の変化に対応するのは、である。また、PTCに対する感受性(相対値)が0.5以下の場合を多感受性と定義すると、対立遺伝子AVIによる低感受性は形質であるといえる。


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