2021年大学入試共通テスト「生物」第6問(A・B)(配点19点)問題・解答・解説
2021年4月 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴
2022年以降の共通テスト「生物」を受験する人を含む大学入試「生物」選択者、物理選択で大学に入り、大学で生物を学ぶ必要がでてきた方、生物学に関心のある市民の方々に、以下解答解説をお届けします。ご活用ください。入試問題は白黒ですが、イメージ補強のため一部カラー化しました。
第6問 次の文章(A・B)を読み、下の問い(問1~5)に答えよ。(配点19点)
A 脊椎動物の眼は、頭部の決まった位置に、左右対称に二つ形成されることが多い。しかし、(a)胚において、将来、眼ができる頭部の領域を移動すると、本来は眼をつくらない場所に眼ができる。他方、光の届かない洞窟に生息している魚類のなかには、一部の発生過程が変異して、(b)眼を形成しなくなった種もある。
問1
下線部(a)について、この現象の仕組みとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(3点)
卵の中で局在する母性因子(母性効果遺伝子)のmRNAも移植された。
移植した部位で、ホメオティック遺伝子(ホックス遺伝子)の発現に変化が起こった。
移植した部位から眼が再生された。
問2
下線部(b)に関連して、多くの魚類では、眼胞となる能力をもつ細胞からなる領域Mは、図1に示す位置に形成される。その後、領域Mの細胞の分化能力を抑制するタンパク質Xが脊索から神経板の正中線付近に分泌されることによって、眼胞が左右の小領域に形成され、眼が二つになる。しかし、眼を形成しなくなった種の一つでは、進化の過程でタンパク質Xの空間的な分布が変化したことが分かった。このことから考えられる、タンパク質Xの分布の変化とそのときにできる眼との関係の考察に関する下の文章中のア~ウに入る語句の組合せとして最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。
(4点)
眼を形成しなくなった種では、タンパク質Xが分布する範囲がアしたと考えられる。逆に、タンパク質Xが分布する範囲がイすると、眼がウできると予想される。
B 将来、眼ができる頭部の領域を全て切り取ったカエルの胚を発生させた場合、眼がないオタマジャクシ(以下、ノーアイ)になる。他方、同様にして切り取った領域を同じ胚の尾ができるところに移植して発生させた場合、頭部には眼はできず、本来は眼ができないはずの尾に眼をもつオタマジャクシ(以下、テイルアイ)になる。眼の役割を調べるため、ノーアイとテイルアイを用いて、実験1~3を行った。
実験1
正常とノーアイのオタマジャクシを、それぞれ別のペトリ皿に入れ、ペトリ皿の底面から赤色光もしくは青色光を照射した状態で遊泳速度を計測したところ、図2の結果が得られた。
問3
実験1の結果から導かれる考察として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
正常のオタマジャクシは、ノーアイのオタマジャクシに比べて遊泳速度が速い。
青色光を照射した状態では、赤色光を照射した状態に比べてオタマジャクシの遊泳速度が遅くなった。
赤色光が照射されている間、オタマジャクシの遊泳速度は速くなり続けた。
オタマジャクシが赤色光と青色光の照射状態を識別するためには、眼に光が入力することが必要ではない。
実験2
図3のように底面の半分(図中、灰色の領域)に赤色光を、もう半分(図中、白の領域)に青色光を照射したペトリ皿に、オタマジャクシを入れ、どちらに滞在するか調べた。そして、赤色光を照射した領域に入ったときにオタマジャクシが嫌う電気ショックを与えた(以下、トレーニング)。トレーニングに引き続き、電気ショックを与えない状態で赤色光もしくは青色光を照射し、オタマジャクシがどちらの領域に滞在するか調べた(以下、テスト)。なお、正常のオタマジャクシの一部では、トレーニングのときに電気ショックを与えなかった。トレーニング~テストを6回繰り返し、テストのたびにオタマジャクシが赤色光を照射した領域に滞在した時間の割合を調べたところ、図4の結果が得られた。
問4
実験2の結果から導かれる考察に関する次の文章中のエ・オに入る語句の組合せとして最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。(4点)
オタマジャクシがエ色光を照射した領域を避けることを学習するためには、オ。
実験3
テイルアイに形成された眼として、眼から軸索が伸長しなかったもの(以下、なし)、眼から胃まで軸索が伸長したもの(以下、胃方向)、眼から脊髄まで軸索が伸長したもの(以下、脊髄方向)という3種類が観察された。これら3種類のテイルアイを使って実験2と同様の実験を繰り返して、学習が成立したオタマジャクシの割合(学習成功率)を調べたところ、図5の結果が得られた。
問5
尾にできた眼について、実験2・実験3の結果から考えられる合理的な推論として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
尾にできた眼が受けた光の色の情報が、脊髄で反射を生じさせた。
尾にできた眼が受けた光の色の情報が、消化管を経由して脳に伝わった。
尾にできた眼が受けた光の色の情報が、脊髄を経由して脳に伝わった。
本来の眼があるオタマジャクシと、尾に眼ができたオタマジャクシで、学習成功率は同じだった。
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