2016年7月28日(木) 千葉県公立高等学校入学者選抜方法等改善協議会(平成28年度第1回)概要~ほとんどの発言者が入試1本化(「前期・後期の廃止」)を求める~
本日、千葉県庁の近くの千葉県教育会館で、千葉県公立高等学校入学者選抜方法等改善協議会(平成28年度第1回)が開催され、私は、船橋も含む千葉県の中学生たちががんばってのぞむ高校入試がよりよきものになることを求めて、市議としても、また直接中3の高校受験指導をを学習サポートで続けてきたものとして、傍聴してまいりました。以下、ご報告します。
(これは今日の会議の正式な議事録ではありません。討議の順番を時系列ではまとめず、論ごとにまとめ、これまでの経過説明も含めて書いた文章です。ただし、今日、委員から発言があった内容については、太字にしてありますので、太字の部分は(正式ではないが)今日の会議の発言内容を要約したものとお考えください。)
【協議会の構成と位置づけ】千葉県公立高校入学者選抜方法等改善協議会は、千葉県教育委員会が、関係方面から意見を聴くために開く協議会で、16名の委員(学識経験者1名、公立高等学校代表3名、公立中学校代表3名、公立小学校代表1名、私立学校代表1名、市町村教育長2名、PTA代表2名、職員団体代表2名、企業関係者等1名)から構成される。委員は1年任期で、これまでは年に2回(7月・11月)開催されてきた。この協議会の意見も踏まえた上で千葉県教育委員会事務局が入試形式・日程などの案を作り、最終決定は千葉県教育委員会会議が持つ。
●論点1~複数回受験(前期・後期)を維持するのか?一本化するのか?
【本日の会議の流れの要約】(正式に決議をとったものではなく、会議の議論の中身から推定されること。今後(第2回以降)の改善協の議論を受け、教育委員会会議が決定したものが正式最終決定になります)
・現中3は前期(学力2017年2月13日(火))・後期(2017年3月1日(水))(決定済)
・現中2も前期・後期維持(2018年の具体的な試験日日程案が2案出されています)
(まだ未定なのですが、仮に1本化を目指す場合でも準備や周知期間が間に合わず維持)
・現中1(あるいは現小6以下)の入試(2019年以降の入試)は、1本化される可能性あり。
(発言したほとんどの委員が1本化を主張しているので、1本化の流れが強まっていますが、いつの時点で改善協が公式にこの方向を選ぶか?それをふまえて教育委員会会議がいつ決定するのかで、現中1から実施されるのか、現小6あるいはそれより実施が伸びるのかが変わってきます。)
【これまでの経過】
東京近郊4県では、東京都は早くから一本化していたが、埼玉県・神奈川県は、千葉県と同様、複数回受験(前期・後期)であった。
(正式用語では「受検」を使用しているが、「受験」のほうがなじみが深いので、私の文章の中では「受験」と表記する。)
しかし、埼玉県は2012年度(平成24年度)、神奈川県は2013年度(平成25年度)から一本化しており、複数回受験(前期・後期)が残っているのは千葉県のみとなった。
千葉県でも、一本化の要望はこの改善協などで、学校関係者が主張してきた。その主な理由は以下のような
・2回の入試の監督・採点業務が重い。(高校)
・高校側も2回の入試と採点などの業務のため、全学年が1~3月の大切な時期に、休講や短縮授業を行わざるを得ない。(高校)
・入試日程が長いため、中3の1・2月にまともに授業ができない。(中学)
にも関わらず、複数回受験(前期・後期)が維持されてきた主な理由は
・機会が多いほうがありがたい ・入試本番に体調が悪い可能性もあるので2回あったほうがよい
という生徒と保護者の一部の意見であったようである。しかし
・その意見が本当に全体の意見だったのか?
・またそれに伴うデメリットを被ってでも維持すべき形式であるか?
との疑義が今日も複数の委員から発言された。
【現時点での教育委員会会議決定(2014(平成26)年4月16日】(要旨)
(1)受検機会が複数回ある現行の選抜制度を継続する。
(2)前期選抜において、専門高校・専門学科等の活性化を図る。
(3)入学者選抜に係る、生徒の負担や中学校・高等学校における業務を軽減する。
今の教育委員会事務局は、(1)について2015年2・3月の入試を経験した中3(現高2)に入試直後にとったアンケートと、2016年2・3月入試を経験した中3(現高1)に入試直後にとったアンケートを、今年度(2016年度)は分析し、さらなる調査をすることを提案しています。
【高校代表(県立東葛高校校長)による千葉県高等学校校長会協会による校長アンケート】
委員である大森栄一さん(千葉県立東葛高等学校長)より、千葉県高等学校校長協会に加入しているすべての高等学校長(189校、公立130校、私立59校)を対象とし、168校(回答率88.9%、公立129校・私立39校)から得た入試に関する様々な内容に関するアンケート結果が配布・説明されました。
この中でも81.9%が一本化を求めていることが紹介され、一本化を強く求める発言をされました。
(画像をクリックすると大きくなります)
【千葉県高等学校教職員組合のアンケート結果配布】
サンプル数が多くはないという制約はありますがこの中でも2回実施反対が多数でした。
【一本化を求める他の発言(一例・この部分のみ全体が発言のため太字は強調の意味】
・入試業務のため高校では、1~3月の中の15日間ぐらいは休講や短縮授業にならざるを得ず、まとまった授業ができない。
・現中2が受ける大学入試から、大学入試制度が改革され、思考・討議する能力が重視される。にも関わらず高校の各学年の1~3月にまともに授業ができないことで、前期・後期制をとっている千葉県の受験生は他県に比べて損をしているというとになりかねない。
・2回に分けるため、前期の選抜枠を狭めるため、多くの中3を前期で不合格にしている。その中の約60%は同じ高校を後期でも受け、そのうち何割かが受かっている。つまり、最初から1本化して合格枠を増やしておけば、前期不合格の負担をかけることなく合格できる生徒に無用な精神的苦痛を与えていることにならないか?
・今年、中3の数が約130減ったのは事実であるが、それ以上の数(公立200・私立20)全日制の定員を減らした。こちらのほうが問題ではないか?
【PTA代表(千葉県高等学校PTA連合会副会長・千葉県PTA連絡協議会副会長、2人とも女性)からの発言】
他の発言委員も、全員が一本化を求める中で、PTA代表(2人)より「いつを期限に一本化を決定するのか?」「いつ決めれば改革に間に合うのか?」との質疑
があり、それに対して、教育委員会事務局が、「仮に一本化にする場合でも、周知や準備に3年はとりたい」と発言しました。委員は「3年」という期間に納得した様子はなく、千葉県高等学校教職員組合の委員(高校教師)からは、「年2回といわず、きちんと一本化についてしっかり議論する回を作るべきだ」との発言がありました。
●論点2~入試問題の内容が適正であったかの分析は?~
県立東葛高等学校長より、2016年2月実施の前期入試の平均点分布について以下のような発言がありました。
入試というものは、得点分布が正規分布になるのではないかと思う。しかし、英語と社会の得点分布はそうではなく、独特の分布をしている。これに対して教育委員会事務局のほうで原因分析、科目の特性なのか?入試の内容の問題なのか?分析しているか?
2016年2月前期入試、英語得点分布
2016年2月前期入試、社会得点分布
参考1(もっとも正規分布に近い国語)
参考2・3
数学
理科
教育委員会事務局は「分析できていません。年によっても変動があります」との答弁でした。
<<参考資料>>
本日の会議ではありませんが、東葛高等学校長が発現されていた得点分布(具体的には低得点群と高得点群の2つの山)は昔から、千葉県公立高校入試が抱えている「特徴」(私から見ると「ゆがみ」)であり、問題の出し方によって改善ができるのではないかと思います。そのことを2010年12月船橋市議会で議論し、千葉県に提出しようとした意見書案です。(なお「県のことは県にまかせるべき」との意見のほうが若干多数で賛成22反対27で否決されたため、意見書は千葉県には提出されませんでした)
発議案第9号 千葉県公立高等学校入学者選抜学力検査の内容改善に向けた公開議論に関する意見書
(提出者)朝倉幹晴(賛成者)橋本和子、鈴木郁夫、中沢学、伊藤昭博
大学進学を目指す約52万人が受ける大学入試センター試験は、各出題科目の関連学会や高校教員に、出題内容の他者評価を依頼している。そして、その他者評価をも踏まえた自己分析と次年度に向けた出題方針を決定し、だれもが見られる形でホームページに公開している。平成22年度実施分については、センター試験6教科28科目についてA4で計511ページもの報告書が出され、関係者の間で作問の質と改善について徹底的な討論がなされている。そして、その中で次年度の作問について改善がなされており、多くの科目で平均点が50~70点の正規分布となるような作題がされつつある。
千葉県公立高等学校入学者選抜は、3.5万人もの中学生が受験し、一県単位の比率ではセンター試験と同様な受験者率となっているにもかかわらず、試験の質に対する外部評価や改善が不十分である。他者評価については、中学高校関係者の評価が、内容の記述なしに「適当である」「改善を要する」のパーセントでしか示されず、改善を要するのがどの中身か、公開されていない。そして、5教科全教科でA4で13ページの自己評価「公立高等学校入学者選抜学力検査の結果」が公開されるのみで、その中の各科目の評価は、漠然と数行程度書かれているのみである。そのような中で、標準的な学力を問う試験としては疑問が出されてもおかしくない作題のされ方が放置されている。
県公立高校入試は、多くの中学3年生が、進学や夢をかけて必死に勉強し取り組む試験である。それに対し、県の行政担当者や関係者は、その重みに相当する徹底的な討論とその県民への公開、改善を図る必要がある。
よって、千葉県においては、県公立高等学校入学者選抜学力検査の内容改善に向けて徹底した公開的議論がなされるために、下記事項を実施するよう、強く要望する。
記
1.平成23年2月実施の入学者選抜学力試験について、大学入試センターの試験問題評価委員会が行っているのと同様に、その問題に対する他者評価を、県内教育団体等に依頼すること。
そして、他者評価を踏まえた出題者の自己分析と今後の作問姿勢を明記した見解双方を、平成23年度に県ホームページに公開すること。
また、平成23年度以降の入学者選抜試験についても、同様な方向を目指すこと。
2.平成23年度以降実施の試験のうち、過度に平均点が低い科目について、高校入試において適切かどうか再検討し、適度な平均点を目指すように、作題の質について再検討をすること。
3.得点分布グラフが、正規分布でなく、得点25~30点の分布が最も多く、高得点側がなだらかに分布する試験については、その適否・是非に関する見解をホームページ等で公開し、改善できる点は改善すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先)千葉県知事
●論点3 「外国につながる子どもたち」の入学者選抜方法についての要望書」
市民団体から提出された要望書について、今後話し合うことが確認されました。