2021年大学入試共通テスト「生物」第1問(配点14点)問題・解答・解説

2021年4月 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2022年以降の共通テスト「生物」を受験する人を含む大学入試「生物」選択者、物理選択で大学に入り、大学で生物を学ぶ必要がでてきた方、生物学に関心のある市民の方々に、以下解答解説をお届けします。ご活用ください。入試問題は白黒ですが、イメージ補強のため一部カラー化しました。

第1問 次の文章を読み、下の問い(問1~4)に答えよ。(配点計14点)

牛乳をはじめ、多くの哺乳類の乳にはラクトース(乳糖)が含まれている。乳糖は消化酵素の一つであるラクターゼによって消化されるが、ラクターゼの働きは個体の成長とともに弱まるので、成長した個体が大量に乳を飲むと、(a)乳糖を消化しきれずに下痢をする。ヒトでもこの性質は一般的だが、成長後もラクターゼの働きが持続し、乳糖を消化できる形質(以下、L有)をもつ者もいる。(b)L有は常染色体上のラクターゼ遺伝子で決まる性質で、ラクターゼの働きが持続しない形質(以下、L無)に対して優性である。L有およびL無の遺伝子は、ラクターゼの(c)遺伝子発現を制御している転写調節領域の塩基配列に違いがある対立遺伝子である。この二つの形質の頻度は世界の各地域によって差があり、(d)この地域差の出現には自然選択が関与したと考えられている

問1

下線部(a)に関連して、このような現象が起こる仕組みを説明した次の文章中のに入る語句の組合せとして最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。

柔毛では乳糖は吸収されないが、乳糖がラクターゼによって分解されて生じるグルコースは吸収される。柔毛表面の細胞は、グルコースを輸送するタンパク質を発現しており、グルコースを小腸管内の濃度にかかわらず取り込む。他方、未分解の乳糖が大量に大腸に入ると、大腸管内の浸透圧が高くなり、便の水分が吸収されにくくなる。さらに、大腸内の細菌による発酵で乳糖が代謝されて生じるなどの影響で腹部が膨満することがある。

問2

下線部(b)について、L無の成人の頻度が0.16の集団でのヘテロ接合の頻度として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。ただし、ラクターゼ遺伝子には二つの対立遺伝子しか存在せず、この集団はハーディ・ワインベルグの法則が成立しているものとする。

0.81    0.64 0.48    0.24 0.16     0.018

問3

下線部(c)について、真核生物における遺伝子発現に関する記述として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。

乳糖の代謝に関係する複数の遺伝子が、オペロンという共通して転写の制御を受ける単位を構成している。

DNAポリメラーゼがプロモーターに結合することにより、転写が開始される。
一つの遺伝子からは、一種類のポリペプチドのみが合成される。

タンパク質合成は、核内で起きる。

細胞の種類が違うと、発現する調節遺伝子の種類も異なる。

問4

下線部(d)に関連して、ヒトでのL有とL無の進化を知るため、実験1~3を行った。実験1~3の結果から導かれる考察として最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。

実験1

世界の6つの地域について、そこで生活する多人数のヒトを対象にラクターゼ遺伝子の転写調節領域の塩基配列を調査すると、塩基がCまたはTである一塩基多型(SNP)が見つかった。このSNPの塩基に基づいたラクターゼ遺伝子の対立遺伝子の頻度を、これらの地域で比較したところ、表1の結果が得られた。

実験2

実験1のSNPを含むDNA断片について、ラクターゼ遺伝子の転写を促進する調節タンパク質Yが結合できるかどうかを、培養細胞を用いて確かめたところ、調節タンパク質YはTを含む配列と強く結合したが、Cを含む配列とは強く結合しなかった。この実験から、Tをもつラクターゼ遺伝子のほうが、転写活性が高いことが分かった。

実験3

実験1のSNPの塩基について、チンパンジー、ゴリラ、およびオランウータンのそれぞれ複数の個体のゲノムを調べたところ、全ての個体がCのホモ接合であり、ヒトの祖先型はCであることが分かった。

L無はアジアで生存上有利だったが、アフリカでは不利だった。

L無対立遺伝子は、ヨーロッパで最初に出現し、その後のヒトの移動に伴ってアフリカにも伝わった。
ヨーロッパではL有が生存上有利だったので、ほぼ全ての人がL有対立遺伝子をもっている。

ヒトでは、L無対立遺伝子に突然変異が起きて、L有対立遺伝子が生じた。

どの地域でも、L無のほうがL有よりも頻度が高い。

 

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