2023年大学入試共通テスト「生物」第5問「発生」、問題、解答、解説(計19点)

2023年9月4日 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2023年大学入試共通テスト「生物」第5問「発生」の解答、解説(計19点)を作成しましたので、学習や入試対策にご活用ください。問題の最後の下にある「2」をクリックすると解答・解説のページに飛びます。(入試問題は白黒ですが、せっかくの画面上ですのでイメージ強化のため一部カラー化しました。

2023年大学入試共通テスト「生物」第5問(配点19点)

 

ショウジョウバエでは、タンパク質XのmRNAは、(a)母性因子の遺伝子(母性効果遺伝子)(以下、母性遺伝子)から転写され、卵の後端の細胞質に蓄えられる。卵が産みだされると、mRNAからタンパク質Xが翻訳され、発生を開始した卵(以下、胚)の後端から前方の領域にかけて(b)タンパク質Xの濃度勾配が生じ、タンパク質Xの濃度が一定以上になった領域に腹部が形成される。

問1 
下線部(a)に関連して、ショウジョウバエの胚の生存に必要な母性因子を合成する母性遺伝子Mに関する次の文章中のに入る数値として最も適当なものを、後ののうちからそれぞれ一つずつ選べ。ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。なお、遺伝子Mは、常染色体上にあり、母性遺伝子としてのみ働くものとする。

遺伝子Mと、その働きを失った対立遺伝子とをヘテロ接合で持つ個体どうしを交配して得られた受精卵のうち、理論上は(2点)が成虫まで発生する。このとき成虫まで発生した全ての雌と野生型の雄を交配して得られる受精卵のうち、イ%(3点)が成虫まで発生する。

問2 
下線部bに関連して、ショウジョウバエの前後軸の形成に関わる母性因子のなかには、濃度勾配を形成するものがある。次の記述a~cのうち、濃度勾配を形成する母性因子の特徴として適当なものはどれか。それを過不足なく含むものを後ののうちから一つ選べ。(4点)

(a)タンパク質の濃度の違いによって、細胞に異なる応答を引き起こす。
(b)タンパク質が胚の全域に均一に分布した後、濃度勾配が生じる。
(c)において、核分裂だけを起こしている時期に、タンパク質の濃度勾配が生じる。

母性遺伝子の働きを明らかにするため、ショウジョウバエを用いて実験1~3を行った。

実験1 卵形成に先立って、タンパク質をつくる母性遺伝子Xの働きを失わせた雌から産みだされた卵を発生させたところ、腹部は形成されず、孵化しなかった。

実験2 腹部形成の制御には、母性遺伝子Xとは別の母性遺伝子Yも関わることが分かっている。卵形成に先立って、母性遺伝子Xの働きと母性遺伝子Yの働きをともに失わせた雌から産みだされた卵を発生させたところ、腹部が形成された。

実験3 母性遺伝子Yから転写されるmRNAの分布と、タンパク質Yの分布とを調べた。正常な発生の過程では、タンパク質YのmRNAは、卵の全域に分布するが、タンパク質Yは、腹部が形成される領域に分布しないことが分かった。そこで、この領域でタンパク質Yを強制的に合成させたのち卵を発生させたところ、腹部が形成されなかった。

問3 
次の記述d~hのうち、実験1~3の結果から導かれるタンパク質Xの働きに関する考察(3点)として適当なものはどれか。その組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。また、その考察に矛盾しないタンパク質Xの性質に関する推論(3点)として最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。

 

(d)正常な胚において、タンパク質Xは、腹部形成に必要なタンパク質Yの合成を促進するので、腹部が形成される。

(e)正常な胚において、タンパク質Xは、タンパク質Yと結合するので、腹部が形成される。

(f)正常な胚において、タンパク質Xは、腹部形成を阻害するタンパク質Yの合成を抑制するので、腹部が形成される。
(g)タンパク質Xの働きを失わせても、腹部が生成されることがある。
(h)ンパク質Xの働きを失わせると腹部が形成されることはない。

タンパク質Xは、タンパク質Yをつくる遺伝子YのDNAに結合する。
タンパク質Xは、タンパク質YのmRNAに結合する。
タンパク質Xは、タンパク質Yに結合する。
タンパク質Xは、タンパク質Yを細胞外に分泌させる。

問4 

母性遺伝子Xは、始原生殖細胞が成虫において配偶子に分化する過程にも必要である、始原生殖細胞の分化における母性遺伝子Xの働きについて調べるため、遺伝子Xの働きについて調べるため、遺伝子Xの働きを失った変異体(以下、変異体)を用いて実験4を行った。実験1~3の結果を踏まえて、実験4の文章中のウ~カに入る語句の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(4点)

実験4 の雌から産みだされた卵を発生させ、胚の後軸に形成された始原生殖細胞を、の雌から産みだされた卵を発生させた胚の後軸に移植したところ、移植した始原生殖細胞は配偶子に分化した。他方、の雌から産みだされた卵を発生させ、胚の後端に形成された始原生殖細胞を、の雌から産みだされた卵を発生させた胚の後端に移植したところ、移植した始原生殖細胞は配偶子に分化しなかった。

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