2023年大学入試共通テスト「生物」第1問「遺伝子と系統」、問題、解答、解説(計17点)

2023年8月 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2023年大学入試共通テスト「生物」第1問の解答、解説(計17点)を作成しましたので、学習や入試対策にご活用ください。問題の最後の下にある「2」をクリックすると解答・解説のページに飛びます。(入試問題は白黒ですが、せっかくの画面上ですのでイメージ強化のため一部カラー化しました。)

2023年大学入試共通テスト「生物」第1問(配点17点)

シアノバクテリアは、光合成に用いる光エネルギーを捕集する色素ータンパク質複合体(以下、集光装置)としてフィコシアノビリンータンパク質複合体を用いている。この複合体を構成する主なタンパク質は、αサブユニットとβサブユニットとが結合した複合体(以下、α/β複合体)であり、それらの遺伝子は(a)オペロンを形成している。
細菌は、必須元素の硫黄を硫酸イオンとして取り込み、硫黄を含むアミノ酸であるメチオニンやシステインの合成に利用している。ある種のシアノバクテリアは、硫酸イオンを十分取り込める培養条件(以下、硫酸十分条件)から硫酸イオンが欠乏する培養条件(以下、硫酸欠乏条件)に切り替わると、メチオニンやシステインをアミノ酸配列中に必要最小限した持たないα/β複合体を使うようになる。シアノバクテリアでは集光装置がタンパク質全体のおよそ半分を占めるため、このような応答によって、生育に必要な硫酸イオンの量を大幅に少なくすることができる。
シアノバクテリアの硫酸欠乏条件への適応におけるα/β複合体の発現調節の仕組みを調べるため、実験1を行った。

問1 下線部(a)に関連して、原核生物における遺伝子発現の調節に関する記述として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
オペロンを構成する個々の遺伝子の転写は、それぞれ異なる調節タンパク質によって制御される。
オペロンを構成する個々の遺伝子は、それぞれ異なる種類のRNAポリメラーゼによって転写される。
リプレッサーは、RNAポリメラーゼに結合して遺伝子の転写を抑制する。
転写には、核内にある基本転写因子が必要である。
調節タンパク質は、オペレーターに結合して遺伝子の転写を制御する。

実験1.酸素十分条件および硫酸結合条件で培養したシアノバクテリアで、α/β複合体のαサブユニットのアミノ酸配列を指定する遺伝子A・C・Eおよびβサブユニットのアミノ酸配列を指定する遺伝子B・D・Fの発現量を調べたところ、図1の結果が得られた。なお、遺伝子Aと遺伝子Bは、遺伝子Cと遺伝子D、および遺伝子Eと遺伝子Fは、それぞれオペロンを形成している。

問2 次の記述a~dのうち、実験1の結果から導かれる考察として適当な記述はどれか。その組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(4点)
(a) 遺伝子Aと遺伝子Bは、硫酸イオン濃度による制御を受けない。
(b)遺伝子Cと遺伝子Dは、主に硫酸十分条件で働く。
(c)遺伝子Eと遺伝子Fは、メチオニンやシステインの少ないα/β複合体の各サブユニットのアミノ酸配列を指定する。
(d)シアノバクテリアは、硫酸欠乏条件では光合成を行わない。

問3 図1の遺伝子Eと遺伝子Fの転写には、調節タンパク質Rが関わっていると考えられた。このかせつを証明するための実験として適当でないものを、次ののうちから一つ選べ。
調節タンパク質Rの機能を失っている変異体で、遺伝子Eと遺伝子Fの発現を調べる。
調節タンパク質Rを過剰に発現している変異株で、遺伝子Eと遺伝子Fの発現を調べる。
調節タンパク質Rが、遺伝子Eと遺伝子Fの転写調節領域に結合するかを調べる。
調節タンパク質Rが、遺伝子Eと遺伝子Fからつくられるタンパク質と結合するかを調べる。
調節タンパク質Rの発現が、硫酸イオン濃度の異なる条件によって変動するかを調べる。

問4 光合成を行う真核生物どうしでも、葉緑体内の集光装置は分類群によって異なる。表1は、光合成を行ういくつかの真核生物の分類群とその集光装置を示している。表1を踏まえて、図2に示す系統樹中のア~オに入る分類群の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。ただし、それぞれの集光装置は、フィコシアノビリンータンパク質複合体から1回の変化により生じたとする。



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