2023年大学入試共通テスト「生物」第6問「種内関係・種間関係」、問題、解答、解説(計14点)

2023年9月 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2023年大学入試共通テスト「生物」第6問「種内関係・種間関係」の解答、解説(計17点)を作成しましたので、学習や入試対策にご活用ください。問題の最後の下にある「2」をクリックすると解答・解説のページに飛びます。(入試問題は白黒ですが、せっかくの画面上ですのでイメージ強化のため一部カラー化しました。

2023年大学入試共通テスト「生物」第6問(配点14点)

ヒカルさんとユウさんは、アユの縄張りと群れについて話をした。

ヒカル:この前、アユの縄張りのことが授業に出てきたよね。教科書には、縄張りを持つアユと群れるアユがいるって書いてあったけど、そうなったんは個体どうしが、(a)資源をめぐって争った結果だよね。縄張り個体と群れ個体との間には何か違いがあるのかな。
ユウ:そうだね。縄張りを維持することで食物の藻類を確保できるのだったら、縄張り個体と群れ個体の成長も違うかもしれないね。アユの縄張りに関する論文があるかインターネットで調べてみようよ。

問1
下線部(a)に関する次の記述a~dのうち、適当なものはどれか。その組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(4点)
(a)群れの大きさは、種内競争の影響を受けないが、捕食者の数の影響を受ける。
(b)種内競争によって縄張りを形成した個体の分布は、集中分布になりやすい。
(c)同じ種類の食物を利用する2種でも、異なる大きさの食物を食べることで、同じ大きさの食物を食べるときと比べ、種間競争が緩和される。
(d)種間競争は、広範囲を移動できる生物間でも、ほとんど移動できない生物間でも起こる。

ヒカルさんとユウさんは、実験1・実験2を行った論文を見つけた。

実験1 集団で飼育していたアユの体重を測定し、標識をつけて個体を識別できるようにした。その後、大きさや環境条件が等しい人工水路A~Eのそれぞれに、異なる数のアユを放した。1か月後に、縄張り個体の数、群れ個体の数、および縄張りの大きさを調べたところ、表1の結果が得られた。また実験前の体重が重かった個体が縄張り個体に、軽かった個体が群れ個体になっていた。さらに、実験期間中の体重増加量は、どの水路でも、縄張り個体になったアユが、群れ個体になったアユよりも大きかった。なお、アユの食物は水路の底面に生える藻類のみであり、同じ水路内において、縄張り個体間で縄張りの大きさにはほとんど違いはなかった。

 

実験2 実験1の後、水路Dから全ての縄張り個体を、水路Eから全ての群れ個体を、それぞれ鳥の除いた。1か月後に調べたところ、どちらの水路でも、縄張り個体と群れ個体が観察された。

問2
実験1・実験2の結果から導かれる考察や推論として適当でないものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
どの水路でも、実験1の後は、実験の前に比べて、体重の個体差がより大きくなった。
実験1の終了時の水路内における縄張りの総面積は、どの水路でも変わらない。
実験2の結果、水路Dでは、より体重の重い個体が縄張り個体になった。
実験2の結果、水路Eでは、各縄張り個体の縄張りは、より大きくなった。

ヒカル:この実験の結果から二人の疑問は解決したけど、他の種の魚でも、アユのように縄張りの大きさは変化するのかな。
ユウ:たしかに、縄張りを維持する労力(コスト)は個体群密度の違いで変わるよね。でも、どうして推進が縄張りの大きさと関係するのかな。
ユウ:藻類の成長には太陽の光が関係しているからだと思うよ。
ヒカル:そうだね。水の中では深くなるにつれて暗くなっていくからね。

問3 
下線部bに関連して、論文中では、湖の地点X~Zで藻類食の魚Tの縄張り行動が観察され、縄張り個体の数と群れ個体の数の合計から個体群密度が算出されている。さらに、各地点の水深と藻類の量が調べられている。表2は、各地点の水深と個体群密度を表したものである。また図1は、地点Xにおいて、藻類の量と縄張り行動から推定された、縄張りの大きさと利益・労力の関係(以下、モデル)を示したものである。地点Yと地点Zのモデルが後ののいずれかとすると、地点Yのモデルとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選び、地点Zの最適な縄張りの大きさとして最も適当な数値を、後ののうちから一つ選べ。

地点Yのモデル(3点)
地点Zの最適な縄張りの大きさ(3点)

 



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