2023年大学入試共通テスト「生物」第4問「窒素同化・窒素固定」、問題、解答、解説(計20点)

2023年9月1日 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

2023年大学入試共通テスト「生物」第4問の解答、解説(計20点)を作成しましたので、学習や入試対策にご活用ください。問題の最後の下にある「2」をクリックすると解答・解説のページに飛びます。(入試問題は白黒ですが、せっかくの画面上ですのでイメージ強化のため一部カラー化しました。

2023年大学入試共通テスト「生物」第4問(配点20点)

植物は、窒素を硝酸イオン(NO3)やアンモニウムイオン(NH4+)として、リンをリン酸イオンとして根から吸収し、(a)有機物の合成に用いている。窒素とリンはどちらも植物の成長に不可欠であり、どちらか一方でも不足すると、植物の成長が妨げられる。窒素やリンは自然界においても不足しやすく、(b)生態系の純生産量が制限される要因になる。植物Mが優占する3か所の地点A~Cにおいて、土壌水分中の窒素とリンの濃度を調べたところ、図1のように、場所によって濃度が異なっていた。
マメ科の植物など根粒菌と共生する一部の植物は、(c)根粒菌の窒素固定を通じて窒素を補うことで、窒素が不足する土壌でも成長することができる。しかし、多くの場所において土壌中の窒素が不足しているにもかかわらず、(d)根粒菌などの細菌との共生を通じて窒素を得る植物が常に有利であるわけではない

問1 下線部(a)についての記述として誤っているものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
核酸の合成とATPの合成のどちらにも、窒素とリンの両方が必要である。
アミノ酸は、タンパク質以外の有機窒素化合物の合成にも利用される。
タンパク質の合成過程では、アミノ酸の側鎖どうしがペプチド結合でつながることで、立体構造がつくられる。
カルビン・ベンソン回路によってCO2が固定される反応には、窒素を成分とする有機物の働きが必要である。

 

問2 下線部bに関連して、生態系の純生産量は、その一部が生産者の成長量となったり、消費者の摂食量となったりするほか、落葉や落葉のように枯死量として生態系内に蓄積される。一定期間のうちに生態系内に蓄積された有機物の量を求める方法として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
純生産量から、生産者の呼吸量を差し引く
純生産量から、分解者を除く消費者の呼吸量を差し引く。
純生産量から、分解者を含む消費者の呼吸量を差し引く。
純生産量から、生産者の呼吸量と、分解者を除く消費者の呼吸量を差し引く。
純生産量から、生産者の呼吸量と、分解者を含む消費者の呼吸量を差し引く。

問3 問1の地点A~Cにおいて、重量が同じ植物Mを複数個体用意し、それぞれの個体に窒素とリンのいずれか、またはその両方(以下、窒素+リン)を肥料として与え、何も与えなかった個体(以下、無処理)と成長量を比較する実験を行ったところ、図2の結果が得られた。この結果から、植物Mの成長量は、窒素とリンのうち、土壌から得られる量が必要量に比べて不足している栄養分によって制限されていると考えられた。図2のア~ウの結果が得られた場所の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。なお、与えた窒素およびリンの量は、いずれの処理でも、それぞれ等しいものとする。

問4 下線部(c)に関連して、窒素固定はATPと電子(e)を必要とする反応である。根粒菌では、植物から供給された有機物を利用してATPとeを得て、窒素固定を行っている。図3は、ある条件において、グルコースから呼吸を通じてATPが合成される反応、ATPの合成とは別の反応によりグルコースからeが供給される反応、および窒素固定反応について調べた結果を示した模式図である。図3を踏まえて、窒素が固定され、植物で利用される過程に関する後の文章中のエ・オに入る数値または語句として最も適当なものを、後ののうちからそれぞれ一つずつ選べ。ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。

1分子の窒素をアンモニアに還元するためには、エ分子のグルコースが必要である。生成したアンモニアはNH4+に変換され、植物細胞内で数段階の反応を経てオとなる。オのアミノ基は有機酸に転移され、様々なアミノ酸の合成に利用される。

問5 下線部dについて、根粒菌などの細菌を通じて窒素を得る植物が、そうではない植物に比べ必ずしも有利ではない理由に関する次の文章中のカ~ケに入る語句の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。

無機窒素化合物の還元には、エネルギーが必要である。そのため、植物が土壌から吸収した無機窒素化合物を用いて有機窒素化合物を合成するのに必要なエネルギー量は、よりもを用いる経路の方が大きい。植物が根粒菌と共生すると、窒素が不足した環境での成長できるが、問4で考えたとおり、根粒菌の窒素固定にはエネルギーが必要である。根粒菌はであるため、植物が根粒菌と共生してN2から有機窒素化合物を得る際、植物は窒素固定のエネルギーに加え、根粒を形成し、維持するためのエネルギーも負担している。したがって、根粒菌と共生する植物は、ケ環境では共生によって大きな利益を得ることができないと考えられる。

 

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