2023年大学入試共通テスト「生物」第4問「窒素同化・窒素固定」、問題、解答、解説(計20点)

解説
問1
核酸の合成とATPの合成のどちらにも、窒素とリンの両方が必要である。〇
アミノ酸は、タンパク質以外の有機窒素化合物の合成にも利用される。〇
タンパク質の合成過程では、アミノ酸の側鎖どうしがペプチド結合でつながることで、立体構造がつくられる。×
アミノ酸のカルボキシ基(ーCOOH)とアミノ基(NH2ー)が縮合重合しペプチド結合となり、複数のアミノ酸がつながった長い鎖(「主鎖」という)となりタンパク質の一次構造となる。側鎖は鎖の「側面」に残される基(分子団)なので、側鎖どうしがペプチド結合するわけではない。
カルビン・ベンソン回路によってCO2が固定される反応には、窒素を成分とする有機物(酵素=タンパク質が主成分)の働きが必要である。〇
生産者の純生産量=成長量+被食量+枯死量
成長量は生産者の有機物の増加量である。
被食量や枯死量のうち、分解者も含む消費者に移行したものは、分解者を含む消費者の呼吸で使われ無機物となったものを除き、有機物の増加量につながる。
分解者に取り込まれなかった枯死量や不消化排出量(糞など)はそのまま生態系の有機物の増加となる。
つまり生産者の純生産量から、その後、分解者を含む消費者に呼吸で使われ無機物となったものを除いたものが、生態系全体の有機物の増加となる。
「一定期間のうちに生態系内に蓄積された有機物の量」は「純生産量から、分解者を含む消費者の呼吸量を差し引く。」ことで求めることができる。
問3
NO3-とNH4+をあわせたNの総量は、地点A<地点B<地点Cである。
一方でPの量は、地点A>地点B=地点Cである。
地点Aは、N不足、P十分
地点Bは、N中間、P不足
地点Cは、N十分、P不足
ア Nを加えると成長量が大きく増えるので、N不足地点のA。
イ Pを加えると成長量が大きく増えるので、P不測の地点C。
ウ Nを加えた時の増加量がアより大きくないので、N中間の地点B。
よって
(図2の「窒素+リン」を見ると差が少なく、2つの組合せによる影響も考慮しなければならず考えにくいので「窒素」「リン」を見て見分ける)
問4
N2の1分子をアンモニア(2NH3)に還元するには、16ATPと8e-が必要である。16ATPの合成のためには1/2分子のグルコース、8e-の供給のためには1/2分子のグルコースが必要である。よって、あわせて(1/2)+(1/2)=1分子(エ)のグルコースが必要である。よってエの答は。
アミノ基を転移して様々なアミノ酸を合成する前段階の物質は、以下のようにグルタミン酸である。よってオの答は。
<参考 葉での窒素同化>
問5
無機窒素化合物の還元には、エネルギーが必要である。そのため、植物が土壌から吸収した無機窒素化合物を用いて有機窒素化合物を合成するのに必要なエネルギー量は、カ(NH4+)よりもキ(NO3-)を用いる経路の方が大きい。
窒素同化の反応では、上図の左側のように最初に「グルタミン酸」にNH4+を結合させる反応からスタートする。NO3-の場合は、NH4+に還元するためのエネルギーが更に必要なので必要エネルギー量は大きくなる。
植物が根粒菌と共生すると、窒素が不足した環境での成長できるが、問4で考えたとおり、根粒菌の窒素固定にはエネルギーが必要である。根粒菌はク(従属栄養、自ら光合成などで有機物を合成できず、他の生物に有機物供給を依存(従属)している生物)であるため、植物(マメ科植物など)が根粒菌と共生してN2から有機窒素化合物を得る際、植物は窒素固定のエネルギーに加え、根粒を形成し、維持するためのエネルギーも負担している。したがって、根粒菌と共生する植物は、ケ(暗い。光合成ができないため根粒菌にエネルギーを供給できず、したがって根粒菌からの窒素提供もなくなる)環境では共生によって大きな利益を得ることができないと考えられる。