2023年大学入試共通テスト「生物」第3問「葉緑体」、問題、解答、解説(計12点)
2023年8月 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴
2023年大学入試共通テスト「生物」第1問の解答、解説(計12点)を作成しましたので、学習や入試対策にご活用ください。問題の最後の下にある「2」をクリックすると解答・解説のページに飛びます。(入試問題は白黒ですが、せっかくの画面上ですのでイメージ強化のため一部カラー化しました。
2023年大学入試共通テスト「生物」第3問(配点12点)
太陽からの直射光が到達する場所の光環境(以下、日なた)に対して、葉に覆われて陰になっている場所の光環境(以下、葉陰(はかげ))は異なる。(a)植物は、このような周囲の光環境の違いを種々の光受容体により感知して、光環境に応答しながら生きている。
問1 下線部(a)に関連して、次の文章中のア~ウに入る語句の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(4点)
日なたは葉陰と比較して、遠赤色光に対する赤色光の割合がア。このことから、植物によっては、日なたでPfr型フィトクロムがイにすることで、種子の発芽が促進される。この発芽の調節は、Pfr型フィトクロムのイにより、ジベレリンの合成が誘導されアブシシン酸の働きがウされることによる。
光環境は、細胞内での葉緑体の分布にも影響を与える。そこで、光環境を変えたときに葉緑体の分布がどのように変化するかを調べるため、実験1を行った。
実験1 日なたで生育させたシロイヌナズナを、よく晴れた日の正午に葉陰に移した(処理1)。そのシロイヌナズナを、翌日の正午に葉陰なら日なたに再び移して3時間置いた(処理2)。図1はその処理を模式的に表したものである。また図3は、処理1を施す前、処理1終了直後、およぶ処理2終了直後のそれぞれについて、細胞内の葉緑体の分布を模式的に示したものである。
問2
葉緑体の分布の違いが、葉を通る光にどのような影響を及ぼすかを調べるため、処理1終了直後と処理2終了直後のシロイヌナズナの葉の表側表皮から波長400~700nmの一定の強度の光(以下、入射光)を照射して、裏側表皮に透過する光(以下、透過光)の強度を波長ごとに測定し、波長400~700nmの光の透過率(入射光に対する透過光の割合)を記録した。得られた各波長の光の透過率を示すグラフとして最も適当なものを、次ののうちから一つずつ選べ。なお、図中の実線は処理1終了直後、破線は処理2終了直後の結果を示したものである。(4点)
問3
光環境の違いにより葉緑体の分布が変化する仕組みと生理的な意味を調べるため、実験2・実験3を行った。実験1~3の結果から導かれる考察として適当でないものを、後ののうちから一つ選べ。
実験2 光受容体のどれか1種類を欠失した種々のシロイヌナズナ変異体に、実験1と同様の処理1・処理2を施し、葉肉細胞内の葉緑体の分布を観察した。その結果、青色光受容体であるフォトトロピンを欠失した変異体のみが、光環境の違いによる葉緑体の分布の変化を示さなかった。
実験3 シロイヌナズナの野生型と葉緑体が細胞上面と細胞底面に分布して動かない変異体Q、および細胞の側面に分布して動かない変異体Rを、あらかじめ葉陰に一日置いてから、よく晴れた日の正午に日なたに移し、3時間にわたって、光合成速度を測定した。その結果、野生型、変異体Q、および変異体Rの光合成速度は徐々に低下し、低下の程度は変異体Rが最も小さかった。
葉緑体の位置の違いに関係なく野生型・変異体ともに光合成速度が低下したことから、強い太陽光は、葉緑体に損害を与える可能性がある。
よく晴れた日が続くときに日なたで変異体Qと変異体Rを西域させると、変異体Qの方が変異体Rよりも成長速度が大きい。
野生型は、日なたでは葉緑体を細胞の側面に分布させることで、強い太陽光による葉緑体の傷害を避けている。
葉陰以外の場所でも青色の光が弱い環境では、野生型の葉緑体は細胞上面と細胞表面に移動する。
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