映画(ネトフリ・アマプラ配信作品中心)、小説、本、アニメお勧めリスト

2023年12月28日(2024年2月27日最終更新) 船橋市議・予備校講師 朝倉幹晴

私の主観による「映画(ネトフリ・アマプラ配信作品中心)、小説、本、アニメお勧めリスト」です。私は、市議として全世代の方々と対話させていただいていることに加えて、学習サポートや予備校講師で10代の皆さんとも交流します。その過程で、各世代で話題になっている映画・小説・本・アニメなどをお聴きし、できる限り読んだり観たりしてまいりました。皆様がこれから鑑賞・読書する上でご参考にくだされば幸いです。

【紹介にあたっての留意点】
1、コロナ以降、映画は映画館で観るより、自宅でNetflix(ネトフリ)、アマゾンプライムビデオ(アマプラ)、FOD(フジテレビ・オンデマンド)で観ることが主体となりましたので、それらで観られる作品を中心に紹介しています。
2,小説についてもできるだけ小規模な書店でも置いてある作品を中心に紹介しました(西船橋駅構内の本屋や、熊沢書店にあるもの)。ただし「本」にはなかなか入手しにくいが図書館にはありそうなものを含めました。
3、全世代が観ることができ、世代間対話のきっかけにできるものを紹介しています。世代によってあまりに感覚が違いすぎ拒否感があるかもしれないと私が感じるものは紹介を控えています。
4、職業・専門・関心が違っても誰でもが関心を持つもの(もってほしいもの)を紹介するように留意しました。
5、小説と映画が両方あるものは、主に映画で紹介しています(一部逆もあり)。原作小説がある場合はその旨書きますので、映画の前に小説を読みたい方は、ご留意ください。
6,本の裏表紙の紹介文や公式PVをまず紹介します。その上での私の紹介文ではネタバレをできるだけ避けて紹介しています。(それでもネタバレをご心配の方はタイトルだけをご確認ください。)
7、時折更新し、最新のお勧めにアップデートします。(更新した際は冒頭の日付に「●年●月●日最終更新」と表記します。

以下、「お勧め映画・ドラマ12選」「お勧め小説12選」「お勧めアニメ12選」「お勧め本12選」の順に以下紹介していきます。

●お勧め映画・ドラマ12選

「記憶屋~あなたを忘れない~」「糸」「エルピス~希望あるいは災い~」「カサブランカ」「蜜蜂と遠雷」「ショーシャンクの空に」「男はつらいよ~お帰り寅さん~」「(ネットフリックス連続ドラマ)僕だけがいない街」「翔んで埼玉」「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」「2001年宇宙の旅」「昼下がりの情事」

1、「記憶屋~あなたを忘れない~」

「記憶屋~あなたを忘れない~」PV
【朝倉による紹介】映画館公開が2019年1月であり、コロナにかぶさったが故もあって、「埋もれた名作」となってしまったと感じている。ある「都市伝説」をテーマに、ちょっと暖かく、ちょっと切なく物語が進む。記憶や身近なはずの人の大切さを感じさせる作品である。

2、「糸」

「糸」PV

【朝倉による紹介】小学生・中学生の頃、少しお互いを意識していた(「初恋」)の2人が、その後、様々な人間関係を経て再会していく物語。「初恋再会系」では「ハナミズキ」と並ぶ名作。テーマとなった中島みゆき「糸」が切なく、また「子ども食堂」など現代にもつながる場面もあり、いろいろ考えさせられる。

3、「エルピス~希望あるいは災い~」
エルピス公式サイト

【朝倉による紹介】現実社会でも起きていることをベースにしながら、国家権力(民自党、大門副総理は麻生太郎氏を思い起こさせる)とTV局の関係を背景にしながら、ある冤罪事件とそれを追求しようとするTV局内部の動きを10回ドラマ化したものが、「エルピスー希望あるいは災いー」(主演、長澤まさみ、真栄田郷敦、鈴木亮平)です。X(ツイッター)上では、「エルピス」ファンの方の一部が、上記の日本テレビの「赤木ファイル特集」を「リアルエルピス」と表現しているポスト(ツイート)もあります。

4,「カサブランカ」

【朝倉による紹介】映画史上不朽の名作の一つ。ナチズム(ファシズム)が世界を席巻する中、運命に振り回されながら、恋と歴史の節目の中の使命・役割の間で揺れ動く、リック、イルザ・ランド(イングリッド・バーグマン)、ラズロ。「どんでん返し」が何度もあり、またリックの「カッコよさ」はある世代の男性の理想とされた。

5、「蜜蜂と遠雷」
「蜜蜂と遠雷」PV
【朝倉による解説】同名小説の映画化なので、小説から先に読みたい方は小説をお読みください。これもコロナに入った2019年映画館放映の作品なので、「埋もれた名作」となってしまったと感じている。4人のピアニストが過去の思いを抱きながら最後の演奏に向かう葛藤と素敵なメロディーが折り重なる。(ご自身の体験から、習い事や楽器演奏に何らかの強い想いをお持ちの方にはきついと感じる場面がありますのでご留意ください。)

6、「ショーシャンクの空に」
「ショーシャンクの空に」PV

【朝倉による解説】どんな環境でもあきらめず、地道に続けることの大切さを強く感じさせてくれる。(もっと深い解説ができるはずの内容でありますが、朝倉が最も感じたのはこの点です。)

7、「男はつらいよ~お帰り寅さん~」
「男はつらいよ~お帰り寅さん~」PV

【朝倉による解説】「寅さん」シリーズは、その世代にとっては不朽の名作ですが、その「大家族的」雰囲気や「ちゃぶ台返し」のケンカ文化(その後、冷却期間を経て再び仲良くなるのですが・・・)が、若い世代には理解されにくいかと感じています。ただ、この「お帰り寅さん」は、寅さんの甥、光男と泉(後藤久美子)との恋をベースにしながら、回想場面に「ちゃぶ台返し」などの昔の場面を織り込み、また国連難民高等弁務官事務所(UNHCER)という現代的なテーマを折り込み、「寅さん」リアル世代も、その後の世代が想いを共有できる名作。

8,「(ネットフリックス連続ドラマ)僕だけがいない街」
同名マンガのネットフリックス連続ドラマ化。
 Netflixオリジナルドラマ『僕だけがいない街』予告編PV

【朝倉による解説】有村架純出演の2時間映画もあるが、この名作を2時間だけに圧縮するのはもったいないので、できればネットフリックス連続ドラマで観てほしい。江口のりこさんもある役で登場する。主人公の藤沼悟は北海道(おそらく苫小牧市)出身で、船橋市湊町のアパートに一人暮らしし、マンガ家をめざしている29歳の青年。舞台は北海道(苫小牧市?)と船橋市の両方である。船橋市である事件に巻き込まれそうになった藤沼悟は、北海道の小学生時代に「リバイバル」する。船橋市でのヒロイン片桐愛梨(「梨」を「愛」という名前が船橋らしい)、北海道の小学校時代、雛月佳代との接点で藤沼悟はどう生きていくのか?

なお、以下は船橋を舞台にしたという観点で2年前に紹介したリストです。
船橋を舞台にした映画・小説・アニメ

9、「翔んで埼玉」
【朝倉による解説】同名マンガの映画化。関西を舞台にした続編が話題になっているが、第1作の舞台では埼玉とともに、ライバル県である「千葉」も多数登場する。ふなっしーとチーバくんも一瞬登場する。非常に面白く笑ってしまう場面が多々あると共に、逆説的に郷土愛を考えさせられる名作である。

10、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」
「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」PV
【朝倉による解説】第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの実話をもとにした映画。その天才的発想と努力に感動する一方で、天才を苦しめた古い時代の価値観の問題点が浮き彫りにされる。

11、「2001年宇宙の旅」
【朝倉による解説】SFの名作であるとともに、最初の場面に象徴される。人間の本質についても考えさせられる。AI(人工知能)時代に見返しておきたい名作である。

12、「昼下がりの情事」
オードリー・ヘップバーンでは「ローマの休日」が有名である。しかし、「昼下がりの情事」も引けをとらない名作である。英語名では「The afternoon love」で、直訳すれば「午後の恋」のはずだが、実際に日本で普及した名称のため敬遠され埋もれてしまったのが残念である。アン王女ではなく、普通の庶民の女の子の、がんばる恋の物語とラストシーンに感動する。

●お勧め小説12選
「ハンチバック」「世界でいちばん透き通った物語」「神様には負けられない」「その扉をたたく音」「推し、燃ゆ」「まち」「片想い」「1Q84」「おいしくて泣くとき」「高校入試」「デフ・ヴォイス」「すべてがFになる」

1、市川沙央「ハンチバック」
【本の帯の裏での紹介】井沢釈華(しゃか)の背骨は右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。両親が終の住処として遺したグループホームの、十畳ほどの部屋から釈華は、某有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」と呟く。ところがある日、グループホームのヘルパー・田中に、Twitterのアカウントを知られていることが発覚し・・・・。

【朝倉による解説】重度障害当事者女性による芥川賞受賞作品。出だしと途中からの展開の「ギャップ」をはじめ、健常者が当たり前としている文化や生き方が決して「あたりまえ」でないことを問題提起してくれる。最後の別視点も考えさせられる。

2、杉井光「世界でいちばん透きとおった物語」
【本の帯での紹介】 電子書籍化絶対不可能!?
“紙の本でしか”体験できない感動がある!
【本の裏表紙での紹介】衝撃のラストにあなたの見る世界は『透きとおる』。
大御所ミステリ参加の宮内彰吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだがー。予測不能の結末が待つ、衝撃の物語。
【朝倉による解説】私(朝倉)は愛知県立時習館高校2年生の時、学園祭で、演劇作家、寺山修司さんの講演を聴いた。その一節が以下である。

寺山「僕たちは何も疑問を持たずに生きている。皆さん、映画の画面ってなんで四角いか考えたことありますか?(高校生・笑)いや、技術的には丸くも三角にも写せるんですよ。そんなことで、フランスで前衛的な映画を作っているジャン・リック・ゴダールに会った時に、『なぜ、あなたの映画の画面、四角く作るのですか?』と聞いたら、『いや、みんな四角く作っているので、俺も四角く作っている』と言ってました(高校生・笑)」

巨匠ジャン・リック・ゴダールすら考えていなかった手法の問い直しを問題提起した寺山の言葉に感銘を受けた。実際、寺山修司は、演劇の「内容」だけでなく、その「手法」そのものに対して既存の手法を問い直す新しい試みを続けていた。

本小説を読み終えた直後に、この寺山の言葉を思い出した。紙の本でしか感動できない体験とは「これだったのか!」の改めて感銘を受け、ページを読み返した。もちろん、最初からストーリー・登場人物・流れとも素朴でコミカルで温かみがあり、読んでいる途中の心地よさや展開のおもしろさもあった上で、最後の感動にいたる。
(最初に紹介した「ハンチバック」は、「紙の本」を読める人による狭いコミュニティを批判している。対照的な見解であるが、可能な方は両方受け止めてほしい。)

 

3、山本幸久「神様には負けられない」
【本の裏表紙での紹介】クラスで一人だけCマイナスー。7年勤めた会社を辞め、義肢装具士を目指す26歳の二階堂さえ子は専門学校の製作実習で最低評価を受け、激しく落ち込む。同じ班のメンバーは内気だが実力抜群の戸樫博文と、ピンク色の壁にドクロの服を好む永井真純という個性はだったが、次第に打ち解けて切磋琢磨してゆく。けれどさえ子には隠しごとがあって・・・・。つまづいても立ち上がる大人の仕事小説。
【朝倉による紹介】20代に1つの仕事(建築デザイン)の中の出会いがきっかけで、別の仕事を目指していく。その中で挫折を感じながらも前向きに生きていく姿は多くの20・30代にとって励みとなる作品と感じられる。技能取得を目指す生活の中、芸者・ボクシング・太極拳・人力車・学校教育など様々な出会いがそれぞれ、主人公の生き方に厚みを加えていく。職業人となった主人公を見つめる第三者の視点も興味深い。同じ「障がい」を扱った作品であるが、「ハンチバック」は鋭くきつい問題提起であるのに対し、この「神様には負けなれない」は、日常のコマの中に「障がい」に関する気づきが自然にちりばめられている。「神様には負けられない」の書名のセリフは2か所出てきて、「なるほど」と感じさせられる。

4、瀬尾まいこ「その扉をたたく音」
【本の裏表紙での紹介】ミュージシャンの夢を捨てきれず、親からの仕送りで怠惰に暮らす、29歳無職の宮路。ある日、ギターの弾き語りに訪れた老人ホームで、神がかったサックスの音色を耳にする。演奏していたのは年下の買い越し・渡部だった。「神様」に出会った興奮に突き動かされ、ホームに通うようになった宮路は「ぼんくら」と呼ばれながらも、入居者たちと親しくなっていき・・・。音楽と人が奏でる、確かな希望の物語。
【朝倉解説】ほんわかと暖かくなる作品。人にとって仕事を持つことが本質ではなく、本当に自分に合った仕事は触れ合った人との対話の中で気づいていくことを気づかせてくれる。人生の「先輩」たちと主人公が、妙なところで琴線が触れ合うのが面白い。

5、宇佐美りん「推し、燃ゆ」
【本の裏表紙での紹介】「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」。高校生のあかりは、アイドル上野真幸(うえのまさき)を解釈することに心血を注ぎ、学校の家族もバイトもうまくいかない毎日をなんとか生きている。そんなある日、押しが炎上しー。第164回芥川賞受賞のベストセラー。時代を映す永遠の青春文学。
【朝倉による紹介】各世代ごとに共通の文化がある。たとえば、スポーツ根性マンガ・手塚治虫の世代は、その共通の文化を言葉で他世代に伝えることができる(伝えようと努力してきた)だろうか?「推し」という文化は、今の10・20代の共通文化である。単にそれを同世代だけで雰囲気を共有するのだったら当たり前のことであるが、本作品は、上の世代にも「推し」の文化と意味が伝わるように書かれた作品である。当時21歳の著者がこれを書き上げた意味は大きい。

6、小野寺史宣「まち」
【本裏表紙の解説】両親を亡くし、尾瀬(おぜ)の荷運び・歩荷(ほっか)を営む祖父に育てられた江藤瞬一(えとうしゅんいち)は、後を継ぎたいと相談した高三の春、意外にも「東京に出ろ」と諭(さと)された、よその世界を知れ。知って、人と交われー。それから四年、瞬一は荒川沿いのアパートに暮らし、隣人と助け合い、バイト仲間と苦楽を共にしていた。そんなある日、祖父が突然東京にやってきて・・・・。孤独な青年が強く優しく成長していく物語。
【朝倉による紹介】小野寺史宣の三部作「ひと」「まち」「いえ」の第2作。本当は第1作の「ひと」から順番に読むのがよいが、「まち」からでも読むことはできる。これは、現代のアパート文学の名作である。
そもそも、小説自身が20・30代を主人公とし、街(田舎含む)から街への転居を舞台に設定していることが多い。だから多くの小説主人公がアパートに住んでいる。ただ多くの場合、そのアパートは主人公の住処であって、そこ自身で物語が展開されるものではない。しかし本作品は「アパート」自身が舞台となり、普通は出会わないはずの「単身若年男性」と「子育て世代」が出会って(その出会いの設定も絶妙で、これだったら出会わざるを得ないだろうという設定)、物語が展開していくのが興味深い。
船橋市でもアパート生活者は市民の世帯の3割を占める。本作品は、江戸川区平井のアパートであるが、同じ物語は船橋のアパートでも展開されているかもしれない。

7、東野圭吾「片想い」
【本の裏表紙での紹介】十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが・・・・。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長編ミステリー。
【朝倉による紹介】性的志向が異性に向かうとは限らず、性自認が身体的性と一致するとは限らないLGBTQに対する認識は2010年代後半から強く認識されてきた(船橋市でもパートナーシップ宣誓制度が創設される)。しかし本作品はその認識が非常に少なかった2000年に書かれたこと自体が先駆的である。著者のもう1つの代表作「秘密」とのつながる雰囲気のある作品である。
(なお私は東野圭吾さんは好きで「放課後」「聖女の救済」「昔僕が死んだ家」「カッコーの巣は誰のもの」も読んでいる)

8、村上春樹「1Q84」
【朝倉による紹介】1984年から、パラレルワールド「1Q84」に移動してしまった大吾と青豆。二人は、千葉県市川市の公立小学校時代の同級生である。「初恋再会系」ではあるが、背景が深い。オウム真理教、山岸会(もともと毛沢東主義の影響を受けた新島淳良が参画)、エホバの証人という1970~90年代に独自の体系で一般社会との軋轢を生んだ団体をモデルとし、その実感がある世代には、物語の筋・展開自体が興味深い。
一方で、その時代背景を知らないが本作品に魅力を感じている大学生と話をした。時代背景は知らなくても、大吾・青豆(最後に出てくる牛河)の心理描写のきめ細やかさが好きだという。同じ作品でも違う部分に魅力を感じる例として興味深かった。
大吾と青豆は再会できるのか?謎の多い「リトルピープル」「空気さなぎ」「猫のまち」をどう解釈してよいか?深まる謎に結論は出るのか?

9、森沢明夫「おいしくて泣くとき」
【本の裏表紙での紹介】無料で「こども飯」を提供する『大衆食堂かざま』。店のオーナーの息子・心也(しんや)は、怪我で大好きなサッカーができなくなり、中学最後の夏休みを前に晴れない気持ちを持て余している。また心也は、時々こども飯を食べにくる同級生のことを気にしていた。一人は夕花(ゆうか)。クラスから疎外され、義父との折り合いも悪い。もう一人は金髪パーマの不良、石村。友情と恋心、夏の逃避行。大人たちの深い想い。<子ども食堂>から始まる思いやりの連鎖が、温かな軌跡を呼ぶ。傑作長編、待望の文庫化!
【朝倉による紹介】村上春樹「1Q84」は、「青豆」「大吾」(+最後「牛河」)の2者(途中から3者)の視点で物語が進む、本作品も、3者の視点で物語が進み、「子ども飯」と「子ども食堂」がやがてある形で「思いやりの連鎖」としてつながっていく。
船橋市にお住いの小説家、森沢明夫さんの作品は本書の他にも心温まるものが多い。私は「きらきら眼鏡」「ミーコの宝箱」を読ませていただいた。

10、湊かなえ「高校入試」
【朝倉による紹介】湊かなえの小説では映画化もされた「告白」が有名である。本作品は「告白」ほどきつくはないが、ある人のやりきれない強い想いが事件を生み出し、他の人の人生を狂わせていく。本書がモチーフとしたネット社会は「2チャンネル」など公開掲示板の世界であり、現時点(2024年時点)のネット文化ではない。しかし、現場の混乱を茶化すネットの書き込みの日時と、高校入試の現場での動きがリアルタイムで連動していくことは、私たちがネットと現実の両方の接点の中で生きていることを象徴的に表現した作品と感じる。

11、丸山正樹「デフ・ヴォイス~法定の手話通訳士~」
【本の裏表紙での紹介】仕事と結婚に失敗した中年男・荒井尚人。今の恋人にも半ば心を閉ざしているが、やがて唯一つの技能を活かして手話通訳士となる。ろう者の法定通訳を務めていたら若いボランティア女性が接近してきた。現在と過去、二つの事件の謎が交錯を始め・・・・。マイノリティーの静かな叫びが胸を打つ。衝撃のラスト!
【朝倉による紹介】ドラマ化もされたが、私の場合は小説を先に読んだので小説で紹介させていただく。最初は聴覚障がいに対する啓発的な小説のような雰囲気であるが、しだいに予想外の展開を見せていく。日本手話と日本語対応手話の違い、ろう者・中途聴覚障がい者・コーダそれぞれの微妙な違いなどがストーリーの中で自然に展開されていく。表面上はおめでたい出来事の中で、クライマックスの緊張感のある展開でのラストには考えされられる。

12、森博嗣「すべてがFになる」
【本の裏表紙での紹介】孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季(まがたしき)。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平(さいかわそうへい)と女子学生・西之園萌絵(にしのそのもえ)が、この不可思議な密室殺人に挑む。新しい形の本格ミステリイ登場。
【朝倉による解説】理系にとってはなじみやすい文体や論理が続く。文系の人間にとっても、その導入のヒントになると感じる。若干ネタバレになるが、本当の最初のあたりのページになるので、小説全体を象徴する文章を紹介する。

「ほら、7だけが孤独でしょう?」真賀田女史が言った。

●お勧めアニメ12選

「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」(アニメ版を全部見た後に「劇場版」「総集編」「外伝」を観ることをお勧めします。)
「ドクターストーン」「葬送のフリーレン」「銀河鉄道999(1979年劇場版)」「あしたのジョー2」「機動戦士ガンダム3~めぐりあい宇宙~」「進撃の巨人」「もののけ姫」「君の名は」「AKIRA」「推しの子」「新世紀エヴァンゲリオン(TVアニメ版)」

以下工事中(後日書きます)

●お勧め本12選

「方丈記」「資本主義の次に来る世界」「社会の変え方」「たかが住まい、されど住まい」「暇と退屈の倫理学」「戦後日本史」「物語ウクライナの歴史」「ナイチンゲール~神話と真実~」「野生の哲学~野口晴哉の生命宇宙~」「ソロモンの指輪」「もし、あと1年で人生が終わるとしたら」「少年の名はジルベール」

 

以下工事中(後日書きます)

方丈記だけ先に紹介します。(2月27日追記)
鴨長明「方丈記」を読んで想う~812年前(1212年3月)からの問い分けを受け止める~

あわせて拙著もお読みいただければうれしいです。
朝倉幹晴著作(アマゾン取扱い)