2024年 #大学入試 #共通テスト #生物 第1問(配点14点)問題・解答・解説

【解説】
問1

呼吸に反応プロセスは以下の通りである。


「解糖系には、ATPを利用する反応があり、解糖系全体の反応において、ATPが合成される量よりも消費される量のほうが多い。」×

上図のように呼吸の第一過程の解糖系(アルコール発酵も解糖系は共通)では、グルコース1分子あたり、まず2分子のATPを消費するが、その後4分子ATPが生成されるので、「ATPは消費される量のよりも合成される量が多い。」

「クエン酸回路では、NADHが生成されるだけでなく、ATPも合成される。」

図で「→2H2と略記している部分でNADHが生成されるとともに、αケトグルタル酸→コハク酸のプロセスでATPも合成される。

④「呼吸の過程では、酵素を必要とする電子伝達系において、ATPの合成に伴い二酸化炭素が生成される。」×

上図にあるように二酸化炭素(CO2)が生成されるのは「クエン酸回路」であり、「電子伝達系」で生成されるのは水(H2O)である。

発酵の反応過程は以下のプロセスである。


 「アルコール発酵においては、解糖系で生じたNADHの酸化に伴いATPが合成される。」×

ATPが合成されるのは前半の呼吸と共通の解糖系部分であり、この時NADHも合成される。NADHが酸化されNAD+に戻る後半の過程(アセトアルデヒド→エタノール)ではATPは生成されていない。

問2
本設問のキシロースは、教科書などには載っていなく、キシロースオペロンの存在も始めて知る受験生がほとんどであったと思う。しかし、大腸菌で「オペロン説」を最初に確立する素材となった「ラクトースオペロン」のことを理解していれば、簡単に考察ができる問題である。一般に、原核細胞も真核細胞もグルコースを呼吸の呼吸基質として使う代謝を基本としてきた。したがって、グルコース存在下では、できるだけグルコースを使えば、ATP生成ができるので他の基質を使う必要がない。ラクトース(乳糖)はグルコースとガラクトースが結合した二糖類である。ラクトースを利用するためには、まず、グルコースとガラクトースを分解しなければならず、グルコース単体利用に比べ非効率である。したがってグルコースが十分にある時は、(非効率な)ラクトース利用は控えるようにし、グルコースがなくなりラクトースが存在する場合はラクトースを分解利用する遺伝子群(ラクトースオペロン)が働くようになっている。
グルコースがある場合には、ラクトースがあってもラクトースオペロンは働かないので、グルコースがない条件で、ラクトースオペロンのスイッチON・OFFのしくみを図示すると以下のようになる。

ラクトースがない場合は、調整遺伝子が発現しリプレッサー(抑制物質)が合成され、それがラクトース分解酵素等の上流のオペレーターに結合する。すると遺伝子群を転写するRNAポリメラーゼは結合できず、遺伝子群の転写はされない。
ラクトースが存在すると、ラクト―ス(代謝産物)がリプレッサーに結合し、オペレーターに結合できなくなるため、オペレーターの上流のプロモーターにRNAポリメラーゼが結合できるようになり、ラクトース分解酵素等を転写し、ラクトースが分解利用できるようになる。
ラクトースが分解されつくしてラクトースがなくなると、図の左に戻り、ラクトース分解酵素群は転写されないようになる。

ラクトースオペロンのことを知っていれば、ほぼ同様の位置であると類推できる。
本設問では図1より、グルコース存在下ではキシロースオペロンは発現せず、グルコースがなくなると発現するので、ラクトースオペロンと類似していることがわかる。(キシロースは単糖であるが、グルコースに比べて使いにくい。しかし、そのことは知識として知らなくてもラクトースオペロンとの類似性は推定できる。)

図1で、グルコースが利用され減り始めたころ、キシロースは減らず、グルコースがなくなったころ、キシロースがようやく減りはじめキシロースオペロンが発現し始めていることから「ア(グルコース)が先に利用される」とわかる。

キシロースオペロンがラクトースオペロンと類似であるとわかれば、
「グルコース存在下では、リプレッサーはオペレーターイ(に結合して)」とわかる。

細胞数を比べてみると200・400・600時間時点ともに野生株(図1)のほうが多い。よってウ(野生株)のほうが増殖が速く、両者を混ぜた場合、ウ(野生株)が優勢になる。
よって、
問3

 

ラクトースオペロンの発現の条件は以下のようになる。

発現の有無にグルコース・ラクトース両方の条件が関与し、「グルコースなし・ラクトースあり」の時のみの発現となる。

問3の冒頭文
「キシロースオペロンは、キシロースが存在すると発現するが、グルコースが存在するとキシロースが存在しても発現は抑制される。」はこのラクトースオペロンの同様な発現である可能性を述べている。それを「可能性1」としよう。

しかし、それに続く、「『キシロースオペロンの発現は、グルコースのみによって制御される』という可能性も考えられる。」とは、キシロース(の有無)に関係なく、グルコース(の有無)によってのみ制御されるということである。図1よりグルコース存在下でキシロースオペロンは発現していないので、グルコース〇→発現×、グルコース×→発現〇とわかる。それを「可能性2」としよう。
それを表にすると以下のようになる。


可能性2の「グルコース×」だと「キシロース×」でも発現ということは無意味と感じるかもしれないが、(酵素などの)遺伝子は発現するが、基質であるキシロースがないために結果的に反応が起こらないということである。基質がなくても遺伝子は発現するということは可能性としてはありうる。

(ラクトースオペロンの洗練された合理的な反応を見て、生物はいつも洗練された反応をしていると勘違いしてはいけない。生物の中には結構「無駄」な反応を続けているものもある。その無駄さが、生存に明らかに不利だったりする場合は、その反応を行う生物は自然淘汰されるするかもしれないが、そうならず無駄を抱えたまま存続しているものもある。)

この可能性1と可能性2のどちらが正しいか判断するためには、表の青で囲んだ右段「グルコース〇、キシロース×」(条件a)「グルコース×、キシロース×」(条件c)を比較し、特に「グルコース×、キシロース×」(条件c)で発現するか否かを確かめればよい。よって(a、c)