2024年 #大学入試 #共通テスト #生物 第2問(配点17点)問題・解答・解説


【解説】
問1
生体膜に存在する輸送タンパクは以下の通りである。

 

選択的透過性は、能動輸送でみられる性質であり、受動輸送ではみられない。×
   「選択的透過性」とは、特定の物質を輸送タンパクを通して選択的に透過させる能動輸送だけでなく、受動輸送でも見られる。
チャネルは受動輸送に関わり、担体(輸送体)は受動輸送に関わらない。×
   チャネル・担体(輸送体)ともに、受動輸送に関わる。(ポンプのみ能動輸送である)
生体膜の水の透過性は、特定の輸送タンパク質の働きにより高められる。
   水チャネル(アクアポリン)により受動輸送が促進される。

ポンプは、濃度勾配に逆らって物質を輸送することができない。×
   ポンプは、ATPのエネルギーを使い、濃度勾配に逆らって輸送する輸送タンパクである。
アミノ酸は、生体膜の脂質二重層を自由に透過するため、輸送タンパク質を介さずに輸送される。×

アミノ酸はグルコースと同じく担体(輸送体)という輸送タンパク質を介して輸送される。
脂質二重層を自由に透過できるのは図のように「水・気体・(リン脂質に溶けやすい)脂溶性物質」である。 なお水は脂質二重膜を通じた輸送もできるが、大量に輸送する時は、
 
のようにアクアポリンという輸送タンパク質で輸送される。

よって、

問2

 

実験1の結果を縦軸・横軸に実験条件を書き、碁盤目に結果を描いたのが以下の表である。
2024年第1問でも同様な表を描いたが、このような碁盤目表を描くと実験の考察の参考になる。

 空白の部分は実験結果の記述がないが、おそらく×だと類推できる。(となる条件は厳しい)。
この表(実験結果)から正しいとわかるのは(c)(気孔の開口には、光とK+のどちらも必要である)のみである。((b)(c)は誤りとわかる)。
(a)(細胞内にK+が流入することで、孔辺細胞が膨張する)は、実験では細胞内のK+濃度の変化を確かめていないのでわからないが、本文に「孔辺細胞の膨張による気孔の開口にはカリウムチャネルが関わることが知られている。」とあり、K+は細胞外の溶液に入れているので、カリウムチャネルにより細胞内に取り込んだ(細胞内に流入した)と類推できるので、もう1つの正解は(a)
よって、((a)(c))
なお、本設問では知識として聞かれているわけではないが、気孔が開くしくみは以下のようである。

問3

まず、図1をもとに静止電位→活動電位→静止電位となる数ミリ秒間の電位変化の流れを5段階で捉えよう。

静止電位 細胞内電位が細胞外に対して−となっている状態。電位差があるので「分極」状態という。
閾値電位を超える刺激 刺激によって細胞内電位が少し+側になり(-電位が減り)、閾値電位を越えると、の大きな活動電位が発生する。なお閾値電位を越える刺激の大きなに関わらず閾値電位を越えれば同じ活動電位が生じる。一定の活動電位が生じるか否かの二者択一なので「全か無かの法則という。)
(細胞内電位変化が閾値電位まで到達しない場合は、活動電位は発生せず、元の静止電位に戻る。「さざ波」のようなものに留まる)
主にNa+の細胞内への大量流入により、細胞内電位が0を経て更に+になる。電位差が-から0へと向かい減る「脱分極」という(本当は逆に細胞が+になる電位差が生じるまで進むが、まずは電位が減る方向となるので(+になる部分も含めて)「脱分極」という)。0を越えて+になった部分を特に「オーバーシュート」と呼ぶ。
Na+の流入がおさまるとともに、K+の流出がおき、細胞内電位はー側に戻る。再び静止電位の電位差に戻る方向なので「再分極」という。
K+の流出が続くことにより、元の静止電位より更に-となる。これを「過分極」という。
この後、もとの(静止電位)に戻る。

次に細胞膜内外へのイオンの輸送に関係する輸送タンパク質を確認しよう。

まず、図左にあるように、膜電位は、特に実験などによる指定がない場合は、細胞外に対する細胞内の電位で計測する。

図の左2つは電位変化に関わらず、常に一定の働きを続けている。ナトリウムポンプは濃度勾配に逆らってNa+を細胞外に、Kを細胞内に輸送する。K+漏洩チャネル(漏洩の漢字は難しいので、「K+リークチャネル」ということが多い)は細胞内のK+を少しずつ細胞外に漏洩する(逃がす)。K+漏洩チャネルは電位変化に関係なく常に働くので電位非依存性チャネルと呼ぶ。
右2つは、電位変化で開閉が変化し、同時にチャネルの働きによって電位変化が起きている。電位変化により開閉が決まるので「電位依存性チャネル」と呼ぶ。(電位依存性)Na+チャネルは開くと、Na+を細胞内に流入させ、(電位依存性)K+チャネルは開くとK+を細胞外に流出させる。

ここまでの解説のは電位変化の時系列を説明するためのであったが、以下からは、本設問で「適当でないもの」を選び選択肢のになりますのでご注意ください。

静止電位が生じている細胞の内外におけるK+濃度を比較すると、細胞外よりも細胞内のほうが高い。〇(静止電位ではナトリウムポンプの働きでK+濃度は細胞内のほうが高い)
ニューロンに閾値(いきち)以上の刺激を与えると活動電位が発生するが、それ以上刺激を強くしても、活動電位の大きさに変わらない。〇(全か無かの法則)
ナトリウムチャネルを通して細胞外にナトリウムイオン(Na+)が放出すると、膜電位は急激に上昇し、最大値に達する。×(Na+が「流入」する)
最大値に達した後の膜電位の下降には、電位に依存して開閉するカリウムチャネルが関与する。
 〇(電位依存性K+チャネルが開く)
ナトリウムポンプは、Na+だけでなく、K+も輸送する。〇(図の通り)

 

よって不適切な選択肢は
問4

神経系における興奮の伝え方について確認しよう。以下は感覚器からの刺激を(脊髄を経て)筋肉に伝える3本の神経細胞の接続の様子を示した図である。


まず、神経細胞(ニューロン)は核のある細胞体、細胞体から放射状に短く伸びた樹状突起、そして、長く伸びて隣の神経細胞などに興奮を伝える繊維「軸索」の3部分からなる。
通常の生理的活動では、(刺激)→感覚器→いくつかの神経細胞→筋肉→(応答)の流れがおきるので、図では左から右に興奮が伝えられる。
しかし、仮に真ん中の神経の軸索の中央部分を直接刺激したらどうかを考える。刺激が閾値以上ならば、そこで活動電位が発生する。そしてその活動電位は軸索を両方向に伝わる。これを活動電流という。細胞体に伝わった活動電流は隣の神経を興奮させることはない。一方、軸索末端に活動電流が伝わると、次の神経細胞(の細胞体・樹状突起)との間のすきま「シナプス」に神経伝達物質が放出され、それが、次の神経細胞に受け止められると、次の神経細胞が活動電流を発生する。
活動電流が伝わっていくことを伝導(conduction)、シナプスを神経伝達物質が伝わることを伝達(transmission)という。日本語では「伝」(「電」ではない)が共通で混同されがちだが、英語では明確に異なり、記述等でも「伝導」「伝達」は明確に使い分けてほしい。

伝導は神経細胞のある膜部分に発生した活動電位が、その部分は静止電位に戻る一方で、隣の膜部位を刺激し、そこに活動電流を発生させることがつながって「波」が伝わるように電流が流れていくことである。両隣を興奮させることが可能なので、最初に興奮した場所がもう一度興奮してしまうと、無限に同じ部分の興奮が繰り返されることになってしまう。しかし一度活動電位を発生して静止電位に戻った部分はしばらくは刺激を受けても興奮しない「不応期」がある。したがって元の興奮場所から離れるように両方向に興奮は伝わる。図では軸索の中央を直接刺激したモデルなので両方向に伝わる(ただし細胞体に向かった場合は伝達は起こらず行き止まり)ことになるが、実際の生理的な反応では刺激は感覚器などから入力され、最初から活動電流の進む向きは決まっているので、基本的には神経系での興奮伝導・伝達の方向は一定方向となる。

ニューロン内を興奮が伝導するとき、一度興奮した部位がしばらくア(興奮しにくい)状態になることで、興奮がイ(一定方向に伝わる)。興奮が軸索を伝導してシナプスまで到達すると、そのニューロンにおいて、神経伝達物質がウ(細胞外に放出される)。よって