2024年 #大学入試 #共通テスト、#生物 第4問(配点19点)問題・解答・解説


[解説]
問1
(a)個体群密度が著しく低い場合には、子孫を残しにくい。
有性生殖では、1個体から自己増殖できる無性生殖と異なり、雄と雌の2個体が配偶行動をする必要がある。個体群密度が低いと雄と雌が出会い配偶行動をする確率も減るので、前の世代と同数の子を産み子孫が維持されていく可能性は高くない。〇
(b)親個体が持っている遺伝情報の全てが、子個体に受け継がれる。
  遺伝子を丸ごと複製し、子に伝える無性生殖の特徴である。×(有性生殖の場合は親個体の遺伝子は半分そみ(配偶行動の相手の親の遺伝子も半分のみ)子個体に受け継がれる。)
(c)新たな病原菌の感染が広がっても、病気による子孫の全滅が起こりにくい。
無性生殖では子世代の遺伝子は親世代の複製であるため、集団全体が同じ遺伝子構成である。したがって病原菌に対し防御できない遺伝子であった場合は全滅する可能性がある。有性生殖は集団内に多様な遺伝子構成を持つので、多くが病原菌の感染で死亡しても、病原菌耐性の遺伝子構成を持つ少数の個体が生き残れば、全滅せず、生き残った病原菌耐性を持つ遺伝子構成の個体が子孫を残していく。〇

(a)(c)よって、

問2
植物は、光を光合成のエネルギー源にしているだけでなく、様々な波長(色)の光を、それによって環境応答を決めるシグナルとして使っており、様々な波長(色)の光を受け止める「光受容体」を持っている。以下が主な赤色光・青色光受容体である。

 

フィトクロムを更に詳しく説明すると以下のようになる。

フィトクロムは、波長660nmの赤色光を受け止めると分子の形が変化し、(不活性型から)活性型(細胞質から核に移行できる「核移行型」)となり、光発芽種子の発芽や光周性実験の光中断効果をもたらす。
一方、波長730nmの遠赤色光を受け止めると不活性型に戻る。この転換は何回でも置き、赤色光と遠赤色光の照射を交互に繰り返すと、最後にどちらの赤色光で照射を終えれば活性型、遠赤色光で照射を終えれば不活性型となる。
不活性型は(これから赤色光(red)を受け止めることができる)フィトクロム(phytochrome)という意味でPr型いい、
活性型は(これから遠赤色光(far red)をを受け止めることができる)フィロクロムという意味でPfr型という。活性型がPfrなので注意してほしい。

太陽光(白色光)には、赤色光も遠赤色光も両方入っているが、どちらの比率が高いかでどちらに効果になるかが決まる。

日なた(葉表面)では、赤色光比が高く活性型となる。一方、葉陰では、(赤色光より遠赤色光のほうが葉を透過しやすいので)遠赤色光比が多くなり不活性型となる。


本設問の実験2の白色光は赤色光比が高く、フィトクロームは活性型となり、暗期を途中で中断する「光中断効果」をもたらすので、(実験1で連続暗期が必要とわかる)塊茎の形成がおきない。
実験3では、実験2と同様、光中断効果がおきているので、はフィロクロムを活性型にする赤色光である。
実験3ではの効果がで打ち消され、フィトクロムが不活性型になり、光中断がおきず連続暗期が続いた実験1と同様、塊茎が形成されているので、アの効果を打ち消すイは遠赤色光である。
よって、ア イ
である。

問3

測定項目
である同化物量は光合成や窒素同化によって合成され、転流で植物体各部位に送られた有機物総量なので、デンプンやDNAなどの特定分子のみではない。また焼却すると、有機物分子の中のCはCO2、HはH2O、NはNH3として空気中に拡散・焼失し、灰として残るのは無機塩類などだけになる。また水は有機物ではないので、同化物量には含まない。よって乾燥重量である。
よって

計算式

図1の実験1で「短日」(長暗)条件が塊茎形成に必要とわかる。

2や3から1を引くと、2・3の実験の後半部分の「短日」「長日」の時に合成・転流(輸送)された有機物量がわかる。
ア、2後半の短日期間の同化物総量=2の同化物総量(x2+y2)-1の同化物総量(x1+y1)
イ、2後半の同化物の中で、地下茎(塊茎)に蓄えられた同化物量=x2ーx1
「イ/ア」が2後半の短日条件で地下茎に分配された同化物の比率

ウ、3後半の長日期間に合成された同化物総量=3の同化物総量(x3+y3)-1の同化物総量(x1+y1)
エ、3後半の同化物の中で、地下茎(塊茎)に蓄えられた同化物量=x3ーx1
「エ/ウ」が3後半の長日条件で地下茎に分配された同化物の比率

よって、

【参考】
光周性、植物の花芽形成に関する基礎のまとめ