2024年 #大学入試 #共通テスト #生物 第5問(配点14点)問題・解答・解説
【解説】
問1
生産構造図は、草本植物の群落の特徴を「広葉草本型」と「イネ型草型」に分類する場合に用いられることが多い。
草本なので草丈は1m程度であり、地表~高さ10cm、高さ10cm~20cmと10cmごとに刈取り(「層別刈り取り法」という)、同化器官(葉)と非同化器官(茎など)に分け、その重量を横方向に棒グラフとして表し上記のように描くと、正確な量の棒グラフで、草本の概形もわかるという絶妙な図(生産構造図)が描ける。丸い葉を上部を中心につける「広葉草本型」と、細長い葉が地表付近からも出る「イネ科草本型」に分類できる。
相対照度は高い所に葉をつける「広葉草本型」では高い位置で急激に減少し、イネ科型は高い位置の葉の量が少ない(低い位置まで葉がある)ので、高い位置での相対照度の低下はゆるやかである。
この方法で森林(木本)を分析すると、まず層別の刈り取り分析が高さ10cmごとではなくもっと大きな幅となる。そして草本群落と比較するためには、本設問のように「各植生の最高点の高さを1とする相対値」で高さを表すことになる。また木本は茎の有機物蓄積量が大きいので、非同化器官が大きくなり、比較すると葉の量は非常に小さい。木本の幹の太さと(量は多いかもしれないが)葉の薄さの差をイメージしてほしい。
すると(a)が草本中心の牧草地(イネ科草本型と広葉草本型の中間のように見えるので両者が混じっている可能性がある)、非同化器官(茎・枝など)が非常に多い(b)のほうが木本中心の森林とわかる。地表付近(林床)に若干多い同化器官はいわゆるササなどの「下草」と考えられる。
森林では林冠(高木の高い部分、上空から見た場合の森林の表面)で多くの光を受け止めるので、相対照度は比較的高い位置で急激に減少し、林内では「木漏れ日」程度の低い照度となる。
問1
選択肢の注目点を計算すれば解ける。選択肢に関しては「現存量+土壌有機物量」(合計)と、その中に占める現存量の割合現存量/(現存量+土壌有機物量)×100(%)を計算すればよい。
選択肢に関しては、現存量を比較すればよい。
それぞれ以下のように、すべて正しいとわかる。
日本の都市部では、農地・土壌すら少ないので、農地も「自然豊か」と感じがちである(それは都会人の癒しのためには大切なことである)が、有機物量・現存量で比較すると、「森林」にはとてもかなわない。
しかし
「亜寒帯の森林で土壌有機物量が多いのは、年間の炭素固定量が少ないからである。」
も正しいそうと感じ迷った受験生もいるかもしれない。前半下線部は正しい(土壌有機物量21は最多)。後半下線部も正しい(純生産量0.2は最少)。しかし、後半が前半の原因であるというこの文章は正しくない。
では、なぜ、亜寒帯で「土壌有機物量」が多いのだろうか?これは土壌微生物の影響である。土壌微生物の活動は温度が高いほど活発である・土壌微生物も酵素反応などで生命活動を行うので低温であると代謝が不活発、高温であると活発となる。
熱帯の土壌は高温で、土壌微生物の活動が活発で、有機物を二酸化炭素・水などに分解するので、土壌有機物は残りにくい。
熱帯の土壌は厚いというイメージがあったかもしれないが、実際は薄いので、熱帯林が伐採されると、スコールで土壌有機物がすぐに川に流出してしまう。
亜寒帯の土壌は低温で、土壌微生物の活動が不活発なので、有機物がなかなか分解されず、そのまま土壌中に残存する。
問3
問2で、土壌有機物の量が亜寒帯のほうが熱帯よりも多いのは、土壌微生物が高温になると有機物を活発に分解することを学んだ。また問2選択肢で、農地の現存量は森林より少ないことを確認し、また表1から純生産量も少ないことが確認できる。それらを踏まえると、以下の答となる。
森林を焼き払っても、土壌中の有機物の多くは焼失することなく残存する。その後、農耕地として利用し続けると、土壌有機物量は次第に減少していく。その理由の一つは、農耕地になると森林であったときよりも地表温度が高くなりやすく、土壌中の有機物のア(分解)が促されるからである。二つ目の理由として、農耕地ではイ(純生産)量が森林よりも小さく、また農作物の収穫のたびに生物量が農耕地の外に持ち出されるために、植生からの有機物の供給が森林よりウ(少なく)なることがあげられる。
よって、