入試に出る地方自治3~2019年大学入試センター「倫理、政治・経済」「政治・経済」地方自治問題・解答・解説(船橋市を例にした具体的解説)

船橋市政も含む全国の区市町村での地方自治は最も市民に身近であるにも関わらず、区市町村議会議員選挙の投票率は低下を続けています。その中でもとりわけ、若い世代の投票率は低くなっています。そこで、地方自治体(地方公共団体)に関する大学入試センター「政治・経済」「倫理・政治経済」の中での地方自治の問題をふり返り、船橋市の実例を紹介しながら解説します。

そのことをきっかけに、自らの住む区市町村の地方自治に、大学受験を学ぶ高校生・受験生世代から、そして受験を終えた世代の方まで、広く関心をもっていただければ幸いです。

以下、2019年大学入試センター「政治・経済」「倫理、政治・経済」共通の地方自治に関する出題です。

 

関連類似出題
入試にでる地方自治「市長選をめぐる会話」(2021年「倫理・政治経済」共通テスト)

入試にでる地方自治(地域課題)(2021年共通テスト)

 

【第3問 問7】(政治・経済)【第5問 問5】(倫理、政治・経済)(3点配点)

下線部e(第3問の本文略、下線は「地方自治体」)に関連して、日本の地方自治制度について述べた次の文章中の空欄にあてはまる語句の組合わせとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。

日本国憲法によれば、議会の議員だけでなく首長も住民の直接選挙でえらばれることになっており、このような政治制度は、と呼ばれる。また、首長と議会は、権力が濫用されないよう、互いに抑制し均衡し合うことが期待されている。このような仕組みの一つとして、議会は、議員数の3分の2以上の者が出席し、この出席議員のの賛成で、首長の不信任の議決をする権限をもち、これに対抗して首長は10日以内に議会を解散することができる。

 また、議会が議事機関とされる一方で、首長は事務の執行に政治的影響力を行使しやすい立場にあるため、一部の行政分野では、政治的中立性の確保などを目的として、首長とは別個の執行機関であるが設置されている。

 

二元代表制 4分の3以上 行政委員会

二元代表制 4分の3以上 会計検査院

二元代表制 過半数  行政委員会

二元代表制 過半数  会計検査院

住民投票制度 4分の3以上 行政委員会

住民投票制度 4分の3以上 会計検査院

住民投票制度 過半数 行政委員会

住民投票制度 過半数 会計検査院

 

(3点)

ア地方議会の議員と首長が、ともに直接住民から選出され、ともに住民の代表として発言し議論をする中で地方自治を進めることを二元代表制という。

船橋市(2019年6月時点人口、約64万人)において、2017年6月18日(日)投票で行われた船橋市長選挙で当選した松戸徹氏が、2021年7月までの4年間任期で市長を務める。一方、2019年4月21日(日)投票で行われた船橋市議選において50人の市議会議員が選ばれ、「互いに抑制し均衡しあっている。」

イ首長の不信任議決は、地方自治法に基づき、議員数の3分の2以上が出席する地方議会の本会議で、出席議員の4分の3以上の賛成で成立する。

最少の出席数で最少の賛成数での可決を考えると、2/3 × 3/4 なので約1/2の賛成となるので、議員総数のほぼ過半数の賛成が必要である。定員50人の船橋市議会の場合、50×2/3 =33.3以上の出席となる。人数は整数なので実際は34人以上の出席が不可欠となる。34人出席の場合、不信任の可決は34人×3/4=25.5以上の賛成となる。人数は整数なので26人の賛成が必要である。

なお50人全員が出席した場合は50×3/4 =37.5。38人の賛成が必要である。

ウ教育・選挙などに関する事務については、中立や公正を確保するため首長の権限から除外され、教育委員会や選挙管理委員会など各種の行政委員会が行う。市長が執行する執行機関の他に独立の執行機関の行政委員会が併存させて、市長のみへの権限の集中を避けるこの方向の考え方を、執行機関多元主義という。

【行政委員会に関する資料】

中央教育審議会教育制度分科会第3回地方教育行政部会配布資料での説明(一部)

 

中央教育審議会教育制度分科会第3回地方教育行政部会配布資料(全体)

【船橋市(役所)で行政委員会の実例】

船橋市には教育委員会・選挙管理委員会・農業委員会・公平委員会・固定審査評価審査委員会・監査委員会の6つの行政委員会がある。

船橋市役所本庁舎1~11階のうち、10階が議会であり、二元代表制の片側を担っている議会のフロアである。。他の階の多く(1~5階のほとんど、8・9・11階、9階に市長室)は、市長を長とする執行機関(市長部局)の部屋となっている。7階は行政委員会である教育委員会(教育長・教育委員会委員4人)が執行を行うフロアとなっており、6階に選挙管理委員会(委員4人)・農業委員会(委員14人)・公平委員会(委員3人)という3つの行政機関の事務局がある。固定資産評価委員会(委員3人)は、事務局の部屋はないが、2階の税務課が事務連絡を担当している。 市役所本庁舎分室という別の建物に監査委員会(委員4人、うち2人が市議)の事務局がある。これらの委員は市長が議会の同意を得て任命する。

船橋市役所本庁舎(11階建て)では7階は教育委員会という行政委員会の執行フロア、6階の一部に、農業委員会・選挙管理委員会・公平委員会という行政委員会事務局が集中している。

7階(教育委員会)

6階

 

船橋市役所本庁舎分室という別の建物の4階に監査委員会という行政委員会の事務局がある。

船橋市の行政委員会の委員名簿は以下に公開されている。(一部委員が交代しているものもある)

平成30年度版「ふなばし市政の概要」(船橋市議会事務局)「行政委員会・附属機関等の委員名簿」