入試に出る地方自治2~2021年大学入試共通テスト「倫理、政治経済」第2日程第7問(配点12点)問題・解答・解説
2021年7月4日 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴
共通テスト初年度の「倫理、政治・経済」第2日程(*)で出題された第7問(配点12点)、身近な、農業従事者への聴き取り調査も含めた地方公共団体(地方自治体)などもテーマにした良問です。船橋市議会でも議論している具体的な問題も問われています。予備校講師として、市議として、高校生に出題された内容を通じて、高校生・受験生だけでなく、大人である市民も考えていくきっかけになれば幸いと思い、解説を作りました。
*コロナ対策などのため、2021年の共通テストは1月16・17日(第1日程)、1月30・31日(第2日程)の2回、受験の機会を設けた。
また、以下も地方自治の良問です。あわせてご覧ください。
入試に出る地方自治1(市長選)~「2021年大学入試共通テスト「倫理、政治・経済」第2日程第5問「市長選に関する生徒2人の会話」(配点19点)問題・解答・解説~
入試に出る地方自治3~2019年大学入試センター「倫理、政治・経済」「政治・経済」地方自治問題・解答・解説(船橋市を例にした具体的解説
第7問 生徒たちは、「地域課題に対する国・地方公共団体・住民の果たす役割」というテーマで調査を行うことにした。次の図は、生徒たちの調査計画とその内容の一部を掲載したものである。これに関して、以降の問い(問1~4)に答えよ。(配点12点)
問1 下線部aに関連して、生徒Wは地域産業の取組みについて調査しようと思い、ある農業従事者に聞き取り調査を行った。次のメモは、その聞き取りでわかったことをまとめたものである。メモにある取組みに関する下の記述a~cのうち、正しいものはどれか。当てはまる記述をすべて選び、その組合せとして最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。(3点)
問2 下線部bに関連して、生徒たちは農業従事者の方々と協働で新しい二つの商品を試作することにした。その際、値上げや値引きの効果は需要量の変化に現れるという授業の話を思い出した。試作中の商品の売れ行きが気になった生徒たちは、二つの新商品に類似した商品αと商品βの需要量と価格のデータを収集し、教科書を参考に需要量と価格の関係を次の枠内の図にまとめた。商品αはなめらかな曲線となり、代表的な点は白丸(〇)、商品βは直線であり、代表的な点は黒丸(●)である。各商品の需要量に価格の変化が及ぼす影響に関する記述として最も適当なものを、下のから一つ選べ。(3点)
問3 下線部cに関連して、生徒Xと生徒Yは、「政治・経済」の授業で学習した地方自治制度について話し合っている。次の会話文中の空欄ア~ウに当てはまる記述として正しいものを下の記述a~cから一つずつ選び、その組合せとして最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。(3点)
X:ある市で産業廃棄物処理施設の設置をめぐって、条例に基づく住民投票が実施されたと聞いたけど、このような住民投票はアよ。その結果は首長と議会の双方にとって無視しがたいものになるよ。住民にとっても政策決定に関与する機会が得られることになるね。
Y:たしかにそうだね。住民投票にもそうした意義があるんだ。でも、二元代表制にも、イといった意義があるよ。それも大事じゃないかな?
X:一般的な政策課題であればそれでいいと思うけれど、市町村の合併などの重大な課題の場合には、住民投票を実施したほうがいいと思うんだ。
Y:でも、条例に基づく住民投票の場合、ウよ。たしかに無視しがたいものではあるけれど、制度上の限界もあるんじゃないのかな。
問4 下線部dに関連して、生徒Xと生徒Yは、地方自治について話し合っている。次の会話文中の空欄アに入れる語句として最も適当なものを、下の1~4のうちから一つ選べ。(3点)
X:私たちは、地域における担い手となるために、どのようにすればいいんだろう?
Y:たしか、政治学者プライスは、『近代民主政治』という本の中で、住民が地域のコミュニティを形成するのに成功している例をあげた上で、「地方自治はアである」と言っているよね。
X:なるほど。これは身近な問題への取組みを通して、民主政治の担い手となる能力を養えることを意味するよね。