新型コロナウイルス対策にあたって、2009年映画「感染列島」をふり返る
解説(2時間15分の作品、最初からの時間で場面をふり返ります。)
0:05
アニソコ(nisocoia) 瞳孔不同 左右の瞳孔の大きさに差があり脳の異常のシグナル
サチュレーション(saturation) 酸素飽和度。動脈血のヘモグロビンのうち何%が酸素と結合しているか?肺機能の低下などにより、酸素吸収が減ると低下する。
0:06 神倉養鶏場での鳥インフルエンザ
新型インフルエンザは、鳥インフルエンザ(H5N1型など)が、ヒトにも感染し、ヒトからヒトへの感染ができるように変異することが発生原因の1つされている。
0:08 GOT・GPT・総ビリルビン
GOT・GPTは肝細胞の酵素。これの値が高くなると肝細胞の破壊が過剰に起きていることが危惧される。同じく肝機能の低下で血液中にビリルビンが増え黄疸などにつながっていくこともあり、総ビリルビンも肝機能をみる指標。
0:09 タミフル
細胞に侵入したインフルエンザウイルスが脱出する時に使うNA(ノイラミニダーゼ)を阻害し、インフルエンザウイルスの細胞からの脱出による増殖を防ぐ。予防(侵入阻止)でなく、脱出阻止の「抗インフルエンザ薬」
0:10 いすみ野市立病院感染症対策主任
ICD(infection control doctor、感染制御医)、ICN(infection control nuese、感染制御看護師)が各病院にいる。その総とりまとめ役と思わる。
0:10 アンビ(アンビューバック)
患者の口と鼻をおおい、マスクを使って換気させるためのマスク
0:12 瞳孔散大、対光反射の消失などで死を判定する。
0:16 インフルフルエンザ特措法による政府の会議。「感染予防研」は実際は、国立感染症研究所。
国立感染症研究所HP
0:17 島根畜産大学獣医学部教授・仁志稔
実際は北海道大学獣医学部が、インフルエンザ研究の中心になっている。インフルエンザウイルスはもともとカモの腸管で安定的に共生しているものが、鳥やブタを介してヒト社会にも広がってきた。新型コロナウイルスもコウモリやセンザンコウがもともとの宿主であったと考えられている。これらを「人獣共通感染症(動物由来感染症)」という。獣医学部がその基礎研究のある部分を担っている。
0:19 感染症対策をできていない状態での病院
初期対応が間に合わず一般患者と感染症疑いの患者の動線が分離されていない。
0:22 「H5N1」
鳥インフルエンザ由来の新型インフルエンザで最も想定されている、インフルエンザウイルス表面の突起タンパクの種類
0:23 海外渡航経験と家族内感染の聴き取り
今回の新型コロナウイルス対応でも重視された基本点
0:25 汚染区と非汚染区の区分
今回の新型コロナウイルス対応でも実施された。参考に船橋市の無症状者・軽症者用ホテルでの分離対応
【4月30日時点】船橋市担当部課の状況把握と要請、軽症・無症状者用ホテル内覧
0:27 VF DC
VF(ventricular fibrillation、心室細動)は、心筋への酸素不足などが原因で、心室の各所が細かく震え、ポンプとしての収縮をしないことで循環が滞り、脳などへの酸素運搬減少で死につながりうる危険な状態。
DC(direct current difibrillation、直流除細動器)。電気ショックにより心室細動を解除し、心臓のポンプ作用を復活させる。一般人の使用が推奨されているAEDの医療現場での本格危機。
0:28 ボスミン
交感神経の神経伝達物質、心臓拍動を促進させるホルモンであるアドレナリンの注射
0:30 病院前テント・トリアージ
ここで重症者と軽症者の区分けをして、病院では重症者を受け入れて治療する、患者の優先順位を決める「トリアージ」が行われる。この主旨を事前に周知していないと受け入れ場面での混乱がおきる。
0:31 マスク配布
今回の、新型コロナウイルス対策でも従事された。
0:32 「病院のキャパシティーを越える」
新型コロナウイルスも、これによる「医療崩壊」が危惧された。
0:33 非接触型体温計
新型コロナウイルスでも重視された。
0:36 民間のウイルス研究者
そもそも「映画」の展開の面白さに水を差してしまって申し訳ないが、これだけ感染者が多く検体も多い状態で、ウイルスが簡単に国立感染研や医療系研究機関の電子顕微鏡で像が捉えられていないことはありえない。またDNAやRNAの検査もあり、実際はもっと早く発見でき、民間のウイルス研究者の出番はないだろう。新型コロナウイルスは、ウイルスはすぐに発見され、遺伝子まで解明されているにも関わらず、実際に体内制御や予防のための研究開発に時間を要している。
0:48 各国、日本在留者の「日本からの撤退」指令
今回、入国制限が日本も含む多くの国でなされた。
0:48 新型インフルエンザ特措法による、72時間以内の都市封鎖の閣議決定
今回、自粛呼びかけという形で実施された。
0:48「不急の集会を避け、自宅から出ないように」呼びかけ
今回、近い形で呼びかけられた。しかし、自宅から出ないことによる運動不足の問題があり、今は密を避け距離を取った上での適度な野外での運動が推奨されている。
0:49 「非常事態宣言、許可証がないと外に出られない。」
今回、緊急事態宣言は実施された。許可証ではなく、移動自粛呼びかけ
0:50「パパの会社はお休み、幼稚園もお休み。だからママ(看護師)もがんばって。」
今回、実際、緊急事態宣言化で会社が休み保育園・幼稚園・学校の休園・休校、一方で医療現場の看護師は働き続けるということが多く行われた。
0:50 買い占め
今回、3・4月、一部商品の欠損があった。
0:55 アメリカ感染予防研究所
CDC(centers for disease control and prevention、アメリカ疾病予防管理センター)のこと。
0:55 飛沫感染、SARSと同様空気感染もあり
新型コロナウイルス、飛沫感染であることはわかっている。空気感染については可能性を研究中。
1:05 人工呼吸器不足、多臓器不全
今回、世界的に大問題となり、日本でも体外式膜型人工肺(エクモ(ECMO、Extracorporeal membrane oxygenation)の不足が危惧された。
1:16 アボン(WHOに加盟していない)のミナス島
実際はフィリピンが撮影に使われており、スペイン風のキリスト像や風景や話している言葉(タガログ語など)はフィリピンである。私は20代に何度かフィリピンを訪問しタガログ語も会話程度は少しわかるので懐かしかった。今回、国際事情でWHOに加盟していない台湾が独自の先駆的な対策をしたことが注目される。
1:22 仁志教授「私はがん細胞とともにいる。ウイルスとヒト共生できないか?」
その後「ウイルスとの共生」を何度もいう仁志教授と近い表現をするウイルス学者も多い。
参考 ウイルスは悪者か―お侍先生のウイルス学講義 (日本語)(北海道大学獣医学部、高田礼人教授)
また、がん細胞と、ウイルス感染細胞は、近い挙動をすることがある。ウイルスによって誘発されるがんもある。ヒトの免疫系もウイルス感染細胞とがん細胞に対して同じ免疫機構(細胞性免疫)が働く。
1:23 「fire exit」
火事の時の出口の意味から非常口の意味。
1:25
感染者が隔離されているのは過去のハンセン病などに対する隔離政策の様々な誤りを想起される。医療的な一時的な隔離は必要だが、治療なしに隔離だけするのは行ってはならない。
1:25 NO enemy.Calm down. 敵じゃない。落ち着いて
1:28 Salamat po ありがとう(タガログ語)
1:30 マングローブ伐採でエビ養殖場。森に入って感染
マングローブ伐採でエビ養殖場を作り、マングローブにいる魚を採集し生活していた人々が生活困難に陥ったことは1980年代以降、フィリピンなどで実際に起きた。
1:32 電子顕微鏡でのらせん状細菌
エボラウイルスに似ている
1:32 「Isolate virus」コウモリから ウイルス分離
新型コロナウイルスもコウモリやセンザンコウが宿主であり、そこからヒトに感染したことが推定されている。コウモリは鳥類でなくほ乳類であり、ヒト細胞とコウモリ細胞は細胞表面の受容体に類似性がある。
1:36 「おうちからでちゃだめよ」
今回も初期はその対応をされた人もいるが、運動不足による問題点が指摘され、今は密を避けながら、換気のよい野外で適度に運動することが推奨される。
1;37 「埋葬する場所がいほど死者があふれた」
今回、世界的にはそのような事態が生じた国もあった。
1:45 ドパミン
神経伝達物質でアドレナリンに近い効果がある。救急医療で使われる。
1:46 アシドーシス(acidosis) ・メイロン投与
肺・呼吸機能の低下で血中のCO2が増え、血液のpHが低下(通常より酸性側に傾く)する。
酸性化を防ぐため、メイロン(炭酸水素ナトリウム、弱アルカリ性)を投与する。
1:54 血清療法(回復者血しょう治療)
小林栄子が死を賭して訴え、神倉茜の命を救った治療である。この映画のクライマックスのもっとも重要な医療行為なので、映画に対しては水を注ぎたくない。しかし、逆に、この場面の強調が、医療従事者がこの映画から距離を置いて結果的に全体的にはすばらしいこの映画が十分に広がっていない原因の1つではないかと思い言及します。
私たちは、回復期血漿治療が万能ではないことを認識(一方で一部の人は回復のきっかけとなる)しっかりと認識しながら、選択肢の1つとして見る(万人に通用する治療法ではない)必要があると思います。
COVID-19 回復期血漿治療の有用性に関する日本輸血・細胞治療学会 新鮮凍結血漿使用ガイドライン小委員会の見解
(映画においても、神倉茜は助かり、小林栄子は助からず、最後の場面で評価がわかれたと言っているので、まったく実態から離れているわけではありません。)
2:11 感染者3000万人以上 死者1000人以上、ワクチンが6か月で開発
ワクチン6か月というのも甘すぎます。