2021年大学入試共通テスト「生物」第4問(配点13点)問題・解答・解説

問1 

動物の行動の分類

生得的行動~生まれつきパターンが備わっていて、経験や学習がなくても出現するもの
1、走性ー刺激源に対して一定の方向に移動する行動
2、反射ー刺激に対して、大脳を経由せずに、無意識に起きる単純な反応
3、定型的運動パターンー羽ばたきや歩行などのパターン化された運動。中枢神経系に備わっている神経回路(中枢パターン発生器)により生じる。
4、定位(ていい)ー環境中の刺激を目印にして特定の方向を定めて移動すること
左右の耳や触角に入る音や匂い(フェロモン)などが同時刻や同量になるように向きを変えるなどもしくみを持つ動物や昆虫もいる。

・動物が分泌したにおい物質が、他の同種個体に特定の行動を起こさせることがある。この物質をフェロモンという。雌が出す性フェロモンが雄を引き寄せ生殖行動を引き起こす例などが一例である。
・生得的行動を引き起こさせる外界からの刺激をかぎ刺激(信号刺激)という。イトヨ(トゲウオの一種)の雄がなわばりに侵入する同種の雄に攻撃する時の信号刺激は同種の雄の赤い腹である(雌の腹は赤くない)。動物行動学者ティンバーゲンはイトヨの行動の研究をした。
・ミツバチが仲間に蜜のある花(エサ場)の位置を知らせるダンスは非常に近い位置の場合円形ダンス、ある程度距離がある場合は、方角も示す8の字ダンスを行う。「8の字ダンス」の場合、太陽の位置を巣箱内での垂直面の情報を太陽の位置とみたて、直進方向をエサ場の方角とみなす。このように太陽の位置を基準に使うことを太陽コンパスという。動物行動学者フリッシュが研究した。
・生物が脳など中枢神経に固有に持っている生物時計や環境の明暗(昼夜)リズムによって、行動を起こす時間帯を決めている場合もある。

(注 かつて生物学で、「走性」「反射」以外の生得的行動をまとめて「本能」と表現していたこともあったが、他に様々な意味のあるあいまいな「本能」という用語を、動物行動の説明に使うのは最近は避けられており、生物学の教科書にも出てこない。)

習得的行動~生後に経験を通じて習得したり修正したりする新しい行動
1、学習~経験を通じて行動の変化を獲得すること

1-1 刷込み(imprinting)   鳥のヒナがふ化後初めて見た動くものについて歩く、サケがふ化後に生まれた川の匂いを学習し、海で成長後、その川に戻って来る(母川回帰)など、生まれた直後の学習によって成立する行動。この刷込みが成立するふ化後の短い期間を臨界期といい、臨界期を過ぎてしまうと刷込みは成立しない。動物行動学者ローレンツが研究した。
1ー2 慣れ 生存に危険ではない同じ刺激が繰り返されると、しだいに反応しなくなること。アメフラシの水管に刺激を与えるとエラを引っ込めるエラ引っこめ反射は、刺激が繰り返されるとしだいに程度が小さくなり最後にはひっこめなくなる。
1-3 脱慣れ 慣れがおきた後、別の強い刺激を加えると慣れが解除され、その後通常の刺激に対し反応を起こすようになる。これを脱慣れという。
1-4 鋭敏化 慣れがおきた後、更に強い刺激を加えると、その後、通常よりも弱い刺激に対しても反応を起こすようになる。これを鋭敏化という。
1-5 古典的条件付け(条件反射)(classical coditionig)パブロフの研究が有名である。犬がエサを与えるとだ液を分泌する。これは訓練を必要とせず無条件に生じるので無条件反射といい、無条件反射を引き起こす刺激(エサ)を無条件刺激という。次に、ベルの音を聴かせた時に、エサを与えることを繰り返すと、本来、だ液分泌とは関係ない刺激であるベルの音だけでだ液が出るようになる。このように、一定の条件下に形成された(本来は刺激とはならない刺激)で形成される反応を条件反射といい、条件反射を引き起こす刺激(ベルの音)を条件刺激という。脳内に条件刺激と反応を結びつける新しい経路ができると考えられている。
1-6 オペラント条件付け(operant conditioning)
自発的な(operant)行動と、その結果生じる報酬や罰が学習され、行動が修正・強化されていくこと。ミツバチがいろいろな花を訪れるという自発的な行動の結果、ある色の花には蜜が多いという経験を繰り返すと、やがてその色の花を選んで訪れるようになるような場合である。試行錯誤学習(trial and error learnig)ということもある。

2、知能  未経験なことに対してあらかじめ予測して行動すること。

bは生得的行動であって学習ではない。aは刷込み、cは慣れで学習である。よって(3点)

問2

A種は、鳥が孵化(ふか)後の一定期間(以下、X期、臨界期)もその後(Y期)も、一切学習がない状態でも自種の歌をさえずることができるようになるので、d(成長の歌を聴く必要もなく)、(学習もは関与していない)ことがわかる。よって(3点)
B種は自種の歌をさえずることができるようになるためには、X期の自種の歌とY期の学習が両方必要なので、gで
である。よって(3点)

実験条件と結果の関係が、よくわからない人は、単純に条件と結果を〇×の表にしてみるとわかりやすくなる。

A種は青枠で示したように両条件ともなくても(×でも)、結果は〇(自種の歌)となるから、学習が必要ないことがわかる。
B種は赤枠で示したように両条件がそろったときのみに、結果が〇となるから両時期に学習が必要であることがわかる。


問3

種に固有の歌は、なわばり防御のアピールや自種の雌に対する求愛であるため、混ざった歌をさえずる雄は、自種の雌に選ばれなかったり、なわばりを防御できなくなって繁殖に失敗しやすい。2種の近縁種が近接して生息する環境では、お互い近縁種の歌を聴き、混ざった歌をさえずってしまうことが多いため繁殖に失敗することが多いため、両種の個体群の成長(個体数の増加)は妨げられる。

したがって近接した2種は共存しにくい。よって(4点)