2021年大学入試共通テスト「生物」第5問B(配点15点)問題・解答・解説
【解説】
問4
未処理の時の値を基準に各操作(オーキシン添加・サイトカイニン添加・切断)がクロロフィル量の増減(緑化の促進・阻害)にどう影響するか考えるとよい。その視点で図6を見ると以下のようになる。
未処理に続く3つの実験結果から、オーキシン添加は阻害、サイトカイニン添加と切断は促進とわかる。最後の実験は切断で促進されたはっずの合成量(図の緑点線)よりもオーキシン添加によって阻害されていることがわかる(但し、この減少の絶対量が単純にオーキシンの効果とは断定できない。2つの作用を一緒に行ったことでなんらかの相互作用が生じている可能性もある)。
オーキシンとサイトカイニンは、どちらも根の緑化を阻害する。→×
オーキシンとサイトカイニンは、どちらも根の緑化には関係しない。→×
茎や葉は、根の緑化に関係しない。→×。茎との切断は緑化を促進するので、茎の存在が、緑化を阻害していると推測できる。だから「関係する」。一方、葉についてはまったく調べていないので「わからない」のであって「関係しない」「関係する」どちらとも言えない。
よって、(4点)。
問5
植物ホルモンの役割を拮抗(対立)関係を⇔のように配置しながら示した図である。
(気孔の開閉)はサイトカイニン(開)、アブシシン酸(閉)。
(果実成熟)はエチレン。
(春化)は、植物ホルモンの作用というより、低温を経験することが、春以降の花芽形成を促進する作用のこと。
(花芽形成)はフロリゲン(花成ホルモン)
④(頂芽優勢)が、オーキシンの作用であり、ヨウコさんが思い浮かべたのは以下のような実験である。
伸長中の頂芽の先端部分で生産されるオーキシンは基部に移動し、側芽を伸長させるサイトカイニンの生成を抑制する。
頂芽を切り取るとオーキシンの抑制効果がなくなり、サイトカイニンが増え側芽が伸長する。
頂芽を切り取ってもオーキシンを切り口に塗り付けると、頂芽が存在していた時と同様に、サイトカイニンが抑制され側芽は抑制される。
このように、頂芽の存在が側芽の伸長を抑えることを頂芽優勢という。
これは頂芽が動物などに食べられたり風水害で切断された時に、側芽が伸びることで植物の生存を助けるなどの意味がある。
よって、(3点)。
問6
実験操作自身の中に、「根の光合成」とは異なる「なんらか別の理由」でなんらか石灰水を濁らせない理由がある可能性があるので、「なんらか別の理由」の影響がないことを確かめる対照実験が必要である。
根を入れないで同じ実験をする。→石灰水が白濁することを確認できれば、「息の吹き込み」(CO2吹き込み)成功していることが確認できる。
光をあてないで同じ実験をする。→光がない場合、光合成以外の他の理由ではCO2は減少しないことを確かめることができる。
石灰水に息を吹き入れて石灰水が濁ることを確認する。→石灰水が古くなって(水酸化カルシウムが分解などされて)、CO2に反応しなくなっていないことを確かめる。
根の代わりに光合成をすることが確実な葉を入れて同じ実験をする。→光合成がきちんと起きればCO2がなくなり石灰水が白濁しないことを確認する。
問7
「樹木に取りついたランの根がなぜ緑色なのかにも興味をもち、その仕組みを調べるため、茎と葉を切除して、その後の根にみられる変化を経時的に測定する実験」ということなので、本設問がずっと調べ続けてきた緑化を量的に示すクロロフィル量や、問4で緑化との関連が調べられている オーキシン濃度 サイトカイニン濃度、は測定すべきだろう。
ひげ根の長さの総和 は、本設問ではずっと調べられていないので、 と比較して、関連性が高いとは言えない(調べてないのでわからない)。
(少しは関係する可能性は否定できないが、ひげ根の増減が緑化と関係がある場合でも、クロロフィル量でほぼ調べられるはずである)
よって適切でないのは(4点)。