胚・胎児から新生児・子どもへ(母体と子どもの成長の生物学)

2022年4月28日 駿台予備学校生物科講師・船橋市議 朝倉幹晴

私は、駿台予備学校市谷校舎(医学部受験専門校舎)などで生物学を教えてまいりました。その中でも「胚・胎児から新生児・子どもへ(母体と子どもの成長の生物学)」に関する内容は受験生のみならず、子育てをしたりこれから子育てを考えたりする世代の全ての方々にとって大切な内容と思いますので、その一部をUPしていきます。一口に「胚・胎児から新生児・子どもへ(母体と子どもの成長の生物学)」といっても様々な部分がありますので、徐々に記事をUPしていきますので時折ご覧ください。

今回はまず「胎児循環から成人循環へ」について書かせていただきます。

まず、私たち大人(成人)の血液循環は以下のようになります。


(なお、生理学で学ぶ人体の図は、医師が対面する患者を診た時の立場で描かれるため、左右が逆になっています。)

一方、お母さんのおなかの中にいる子ども(胎児)の循環は以下のようになっています。


まず、胎児が大人と大きく異なる点が2点あります。
1、母体との間で酸素や栄養、二酸化炭素と老廃物の受け渡しをする臓器「胎盤」があり、それが成人における「肺」の役割をしている。

2、胎児の肺は未活動で小さく中には羊水が入っている。ただ、出生の時、産道を通り抜ける過程で肺から水が押し出されるとともに吸収され、産声(オギャー)の直前に初めて空気を吸い込み、産声とともに肺が活動を開始する。したがって肺は出生とともにすぐに活動できるように準備を整えている。

この状態でうまく血液を循環させているのが胎児循環です。胎児循環には、図に→で示したように成人循環と異なる3つのバイパスがあります。

1、卵円孔 成人循環では、「右心房→右心室→肺→左心房」と流れますが、未活動の肺を避けて「右心房→左心房」と直行できるように、心房の間に孔(卵円孔)が空いています。
2、動脈管 それでも少しは「右心房→右心室→肺」と流れる血液があるため、肺の直前で大動脈に直通させる「動脈管」があります。
3、静脈管 消化吸収が始まるとともに活動が盛んになる肝臓もまだ活動が不活発なので、肝臓へ向かう血液が肝臓に入らず静脈に流れるように「静脈管」があります。

そして、胎児が出生すると同時に、この3つの構造は閉鎖し、一気に成人循環に移行するのです。(時々その移行が十分に行われない疾患、たとえば動脈管開存症があり、小児医療において対応がなされることがあります。)

赤ちゃんはお母さんのおなかの中で成長し、そして、誕生した瞬間に、この大転換を小さな体の中で一気に成し遂げているのです。すばらしいですね。改めて、子どもに「がんばって産まれてきてありがとう」と言いたくなりませんでしょうか?

その他にも胚・胎児・新生児に関してはすばらしい生物学的しくみがあります。また時折更新してご説明いたしますので、思い出したころにこのページを再度ご覧ください。

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