2023年大学入試共通テスト「生物基礎」第3問A(配点10点)問題・解答・解説


【解説】

問1 

光合成は光エネルギーを、グルコースの炭素原子ー炭素原子間結合、炭素原子ー酸素原子間結合などに蓄えられた化学エネルギーに変換する。そして、そのグルコースを分解する際に、その化学エネルギーが解放され、様々な生命活動を行いながら最終的に熱エネルギーとして環境中に放出されていく。

単純な物質にエネルギーを蓄えてより複雑な物質に合成していくことを同化といい光合成がその代表例である。一方、複雑な物質を単純な物質に分解していく過程でエネルギーを放出させていく(そのエネルギーで生命活動を行う)ことを異化といい、呼吸がその代表例である。

光合成のように、CO2とH2Oなど無機物から有機物(グルコース、C6H12O6)を合成することを一次同化という。
一方、単純な有機物を重合させたり、更に分子と結合し組み立ててより複雑な物質に合成していくことを二次同化という。
グルコースを重合して、グリコーゲンという肝臓などに貯蔵する鎖状分子にすることや、ADP(アデノシンリン酸)+リン酸→ATP(アデノシンリン酸)+H2Oの反応も二次同化であり、一次同化とともに「同化」の一種である。

したがって、
水草は、光合成により光エネルギーをア(化学)エネルギーに変換し、有機物中に蓄える。光合成は同化の一種であり、イ(グルコースからグリコーゲン)が生成される過程やウ(ADPからATP)が生成される過程も、同化に相当する。
(3点)

ちなみに以下図は「生物基礎」の範囲を超える部分も一部含むが、ATP、ADPの関係は以下のような反応となる。

 

 

問2
陸上植物で下図のように、土中での、枯死体・排泄物から植物の根までの窒素を含む化合物の流れが、水中でも起き、植物プランクトンや水草に吸収される。


まず、生物の枯死体や排泄物中の窒素を含む化合物(タンパク質など有機窒素)などからアンモニウムイオン(NH4+)が分離され、それが硝化細菌(亜硝酸菌・硝酸菌)で硝酸イオン(NO3に硝化(酸化)され、水草に吸収される。よって、(配点3点)

窒素ガスを生じるのはNO3→N2の脱窒素細菌による脱窒素作用であるが、発生したN2は空気中や水中に気体として拡散し、NO3やNH4+に戻るわけではない。(N2→NH4+の窒素固定作用をする窒素固定細菌も存在するが、本設問では「硝化菌(硝化細菌)の働きで」と聞かれているので選択肢としては選ばない。

問3

「水槽の生態系から窒素を取り除くための操作」なので
(b)水草を食べる魚を水槽に入れて水草を減らす。
 →水草が減った分の窒素は食べた魚に移動するだけで生態系内の窒素総量は不変。×

(c)光の量を減らして水草の成長を遅らせる。

→水草が吸収する窒素が減るだけで、その分、水中のNH4+、NO3として残るだけで生態系内の窒素総量は不変。×

(a)茂った水草を切り取って水槽から取り除く。
 →水草の有機窒素(タンパク質など)が減少→生態系の窒素が減る。〇

 

正解は、aのみ、(4点)
(aと誤答を1つ(bかc)含むには部分点1点を与えられるが、誤答を2つ含むでは部分点も対象外)