2024年 #大学入試 #共通テスト #生物 第3問(配点16点)問題・解答・解説 


[解説]
問1
筋細胞(筋繊維)の構造と神経からの入力を確認しよう。

 

骨格筋の筋細胞は発生時には多数の細胞だったものが融合し、細長い繊維(筋繊維)になったもので、核が多数ある多核細胞体である。筋細胞=筋繊維である。外側は筋細胞膜包まれ、内部に筋原繊維という構造が複数束のようにあり、筋原線維と筋原繊維のすきまを筋小胞体が覆っている。またATPを多く消費するのでATP生産のためのミトコンドリアも多数存在する。
筋細胞に接続し、筋収縮の指令を入力する神経細胞の軸索終末は筋細胞膜に近い位置にあり、その隙間(神経筋接合部)にアセチルコリンなどの神経伝達物質を放出する。筋細胞膜表面の受容体がそれを受け止めると筋細胞膜に活動電流が発生する。筋細胞膜には、道路のところどころにマンホールや排水溝があるように、内部に落ち込む穴(T管)があり、活動電流はその穴(T管)から筋細胞内に伝わり、筋小胞体からのCa2+放出を促す。


筋原繊維の中には、アクチンフィラメントとミオシンフィラメントの2つの繊維がある。アクチンフィラメントはは興奮していない時は、トロポミオシンに覆われ、ミオシンフィラメントと結合しない。
筋小胞体から出されたCa2+はアクチンフィラメントに結合しているタンパク質「トロポニン」と結合する。すると、その影響で(アクチンフィラメントを覆っていた)トロポミオシンの位置がずれ、ミオシンフィラメントの両端にあるミオシン頭部と結合できる「ミオシン頭部結合部位」が露出する。
するとミオシン頭部はATPと結合しそれを分解したエネルギーで、アクチンフィラメント(のミオシン頭部結合部位)と結合し、アクチンフィラメントを「たぐり寄せ」、筋原線維が収縮し、筋繊維も収縮する。actinのactは動くという意味であり、動かされる(まぐり寄せられる)繊維がアクチンフィラメントである。

筋原繊維の構造、弛緩と収縮の比較


筋原繊維は細いアクチンフィラメントと太いミオシンフィラメントが交互に並んでいる。アクチンフィラメントの中央にはZ膜があり、隣のZ膜との間を筋節(サルコメア)という。顕微鏡で見ると太いミオシンフィラメントのある部分は光を通しにくく暗く見えるので「暗帯」といい、細いアクチンフィラメントしかない部分は光を通しやすく明るく見えるので「明帯」という。
ミオシンフィラメントがその隙間にアクチンフィラメントをたぐりよせ収縮すると、アコーディオン(型カーテン)のヒダが折りたたまれるように全体が短くなる。Z膜どうしも接近するので筋節(サルコメア)は短くなり、アクチンフィラメントだけの部分「明帯」も短くなる。しかし、暗帯はミオシンフィラメントの長さそのものであり、それは不変なので暗帯は短くなる。(アクチンフィラメントもミオシンフィラメントも重なりが増えるだけで、それぞれの長さは不変である。)

サルコメアの長さが短くなっても、暗帯の長さは変わらない。
トロポニンにカルシウムイオン(Ca2+)が結合することで、アクチンとミオシンが結合できるようになる。
無酸素状態で筋収縮が起こることで解糖が起こり、筋細胞にはエタノールが蓄積する。
× 無酸素状態では筋細胞はアルコール発酵ではなく乳酸発酵と同じ反応がおきるので乳酸が蓄積する。
ATPがアクチンに結合することで、アクチンフィラメントはミオシンフィラメントの間に滑り込む。×ATPはミオシンに結合。
アクチンフィラメントとミオシンフィラメントが共に短くなることで、筋収縮が起こる。
×両者とも長さは不変。重なりあうだけである。
強縮は、単収縮が重なり合ったものであり、その大きさは単収縮と同じである。×強縮は単収縮より大きく収縮する。

よって、

問2

筋細胞での通常の筋収縮がおきるまでの流れを確認し、スキンド筋では細胞膜がなく、グリセリン筋では細胞膜も筋小胞体もないことから、どの過程が可能か確認すると以下のようになる。

トロポニンとトロポミオシンはアクチンフィラメントの結合しているので」、グリセリン筋でも残存し、Ca2+があれば、ミオシンはアクチンフィラメントをたぐり寄せ収縮することはできる。

実験5 グリセリン筋にはミトコンドリアもないので、グルコースがあってもATP生産ができない。ATPそのものがないので筋収縮ができない。×
実験6 グリセリン筋には筋小胞体がないので、カルシウムチャネルを開く薬剤を与えても筋小胞体からCa2+は放出されない。トロポニンに結合できず、アクチンとミオシンは結合できないので、ATPがあってもミオシンはアクチンをたぐり寄せることができない。×
実験7 スキンド筋の筋小胞体からCa2+を放出させる薬剤はないが、Ca2+が溶液中にあるので、それがトロポニンと結合可能である。ミオシンはアクチンと結合でき、ATPがあればミオシンがアクチンフィラメントをたぐりよせ収縮させることができる。〇
よって

問3


図2・3から脊索から離れた位置にのみ皮筋節が形成されるので、脊索からの物質(本設問では知識としては求められていないが、知識として説明するとshh(ソニックヘッジホッグ)という物質、発見の研究者がアニメ好きでこう命名した))が皮筋節への分化を抑制していることがわかる。

図4からは「背側神経管断片」は、(脊索からの物質の働きを止め)、皮筋節を分化させる誘導を行うことがわかる。

図3(実験8)、図4(実験9)から移植時点では「体節」の運命は未定で、体節をとりまく構造によって移植1日後に誘導される組織が変わることがわかる。図5(実験10)では右側の移植体節のまわりの組織は「脊索」なので、脊索から離れた側が皮筋節になる。したがって右も左も通常発生と同様、脊索から離れた(表皮に近い)に皮筋節ができる。よって、

(結局、実験9の背側神経管断片の誘導作用そのものは解答に関係しない。つまり移植時点では体節の運命は未定(移植1日後に運命が変わる)ことを確認するだけの実験であったことになる。このように、実験の中には、その結果そのものを解答に使うことがない結果も含まれ、それを「無視できる」能力も大切である。)

このように、問題に書かれた情報の中で使わない情報もあるという問題は、共通テスト数学1A2023年のバスケットのゴールも問題も同様なので、共通テストにおいて科目を越えて共通の特徴として知っておきたい。
2023年大学入試共通テスト「数学1A」第2問[2](15点)問題・解答・解説