2020年、センター試験「生物」第2問問題・解答・解説(配点18点)

第2問解答 1(3点) 2(3点) 3(3点) 4(3点) 5(3点) 6(3点)

 

1(問1)(3点)解説

受精卵が、その球形や楕円体の形を維持したまま繰り返す体細胞分裂を「卵割」という。卵割により胞胚にいたり、それ以降は、細胞が分化・移動などをして組織や器官が分化していく「形態形成」を行う。
特定の調節タンパク質が、特定のDNAの転写調節領域に結合し、特定の遺伝子のmRNAを転写し、その次にそのmRNAが細胞質に移動し、細胞質で特定のたんぱく質が翻訳されることで、細胞の分化が起きる。

よって答は(3点)

 

2(問2)(3点)解説

設問は「黒卵片のみに筋肉細胞への文化を決定づける能力があることの推論」に必要な実験というである。なので、5つの実験のうち、

は「遺伝子を核内に含んでいた」とは書いてあるが、胚が表皮か神経になったかということが書いていないので上記推論の根拠にはならない。

核を含む赤断片を含まない実験になっているのはのみでその時のみ「胚にはならなかった」となっている。なので、胚への発生には赤卵片(卵片側での核の存在)が必要と推定できる。(下の表の黒枠囲み)。
その上で設問は「黒卵片のみに筋肉細胞への分化を決定づける能力があることの推論」に必要な実験ということで、胚が分化したの実験で確認してみると、下の赤枠のように、黒卵片の有無(実験条件、原因)と筋肉の分化の有無(結果)が一致していることがわかる。よって正解は

 

3(問3)(3点)解説

設問は「実験1~4の結果から導かれる黒卵片に含まれる物質のはたらきについての考察として最も適当なものを一つ選べ」となるので、知識でなく、実験からわかる考察を選ぶ。
実験条件と結果をまとめると以下の表のようになる。

赤卵片(核あり)が胚発生、とくに表皮の発生に必要なことは、前問でわかっているが、図では点線で示した。
次に黒卵片(の細胞質)の物質の種類と、筋肉形成の有無を考えてみると青で囲んだように黒卵片中のRNAの存在の有無によって、胚が表皮のみを形成するか、表皮に加えて筋肉を形成するかの差が生じる。つまりRNAの存在の有無が分化の方向を決めていることがわかる。

×

タンパク質やRNAやDNAが結合しているか否かについては実験において調べてないので、「実験から導かれる結論」とはならない。

×

タンパク質、あるいはRNAから合成されるタンパク質が「筋肉細胞の収縮に関与するタンパク質」になっているかも実験において調べていないので、「実験から導かれる結論」とはならない。

この実験で調べているのは、「表皮のみに分化したのか」「表皮に加えて筋肉にも分化したのか」の違い、つまり発生運命の決定を調べている。したがってこの

はこの実験から導かれることの論点に適合している。そして表のように、分化の方向の違いに影響しているのは、黒卵片のRNAの有無であるので、正解は(3点)

知識を加えて考えると以下のようにも考えられる。
ショウジョウバエの頭尾軸(前後軸)は、未受精卵の時に形成されていたmRNAの極性が、発生過程でタンパク質に翻訳され、それが調節タンパク質として次の遺伝子発現(それはDNAのある特定の遺伝子の転写調節領域に結合し転写を促進することがスタートとなる)に影響を及ぼすことの連続で形成されていく。

bicoid-mRNAとnanos-mRNAは前極と後極の細胞質に偏って存在するが、発生後、それが翻訳されたbicoidタンパク質とnanosタンパク質の濃度勾配はゆるやかになる。その後、それが多段階の遺伝子発現に影響を及ぼし、bicoidタンパク質の多かった前極側に東武・胸部を、nanosタンパク質の多かった後極側に腹部を形成させる。

これと同様なことが、ホヤでも起きたと考えると、も(筋肉細胞の収縮に関与するタンパク質に直接なるかどうかまでは断定できないが)、間違いとは言いきれない。しかし、あくまでも「実験から導かれる考察」を選ぶ問題なので、知識を加えて、を選ぶことは正しくない。

4・5(問4)(3点×2)解説

植物の花器官形成におけるABC遺伝子は知識として持っておくべき内容である。

根元(基部)に近い側から先端に向け、2構造ずつA、B、Cが1つずつずれて並ぶ。このイメージを問題用紙の余白に書き込み、出題図と照らし合わせながら解けばよい。なおAとCは並存し相互に抑制する関係にあるため、Aが発現しなくなった部分にはCが発現し、Cが発現しなかった部分にはAが発現するようになる。図が示すように、Aのみでがく、AとBで花弁、BとCでおしべ、Cのみでめしべとなる。


図3「牡丹」は、C機能が停止して、基部から先端部の順に「がく(A)、花弁(AB)、花弁(AB)、がく(A)」となったもの、
図4「無弁化」は、B機能が停止して基部から先端部の順に「がく(A)、がく(A)、めしべ(C)、めしべ(C)」となったものと確認できる。

変異体Xは「がく(A)、がく(A)、がく(A)、がく(A)」であり、BとCの機能が失われているので、答は(BとC)(3点)

変異体Yは「めしべ(C)、おしべ(BC)、おしべ(BC)、めしべ(C)」であり、Aの機能が失われているので、答は(A)(3点)

 

6(問5)(3点)解説

染色体どうしが結合して一部入れ替わる顕微鏡でも見える物理的な現象を乗換え(crossing-over)という、一方、組換え(recombination)とは、その結果として染色体上の遺伝子の組合せが変わること(たとえばAとB、aとbを持っていた細胞から配偶子ではAとb、aとBとなるようなこと)を示す。
減数分裂に入る前の細胞と比較すると、減数分裂での染色体の分離の開始前にDNA合成を行うため、第一分裂直後で1倍、第二分裂直後で1/2倍になる。よって(3点)