2020年、センター生物、第4問問題・解答・解説(配点18点)
2022年1月7日 船橋市議・予備校講師 朝倉幹晴
試験問題は白黒ですが、せっかくの画面上なので少しカラー化しました。
生態と環境に関する次の文章(A・B)を読み、下の問い(問1~5)に答えよ。(配点計18点)
A 外来生物の侵入は、しばしば(a)在来種の絶滅の原因となるとともに、人間の生活にも影響を及ぼす。例えば、南米原産のヒアリ(アリの一種)は、北米において、アブラムシと相互作用を通じてワタ農業(綿花農業)に影響を及ぼすことが報告されている。ワタの害虫であるアブラムシは甘露(かんろ)を分泌し餌としてヒアリに提供する。一方、ヒアリはアブラムシの天敵であるテントウムシを攻撃することで、アブラムシをテントウムシによる捕食から守る。つまり、アブラムシとヒアリの間にはアの関係が成立している。ワタ畑からヒアリだけを駆除すると、アブラムシによるワタの食害はイした。このことは、ヒアリがワタに及ぼす影響は間接的な種間関係によって生じていたことを示している。
ヒアリは様々な環境の変化に対して驚異的な対応能力をもつことでも知られている。例えば、洪水の際には、互いにからだを絡ませて集団で「いかだ」を形成して、水面に浮くことによって洪水をやりすごす。このような集団行動を行う能力はヒアリが(b)社会性昆虫であることと関連している。
問1 上の文章中のア・イに入る語の組合せとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(3点)
問2 下線部(a)に関連して、いったん個体数が少なくなると、個体群の絶滅する確率は高まる。これは、個体数が少ないこと自体が、新たな絶滅の要因を誘発するからである。誘発される絶滅の要因の説明として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(3点)
問3 下線部(b)に関する文章中のウ~カに入る語句の組合せとして最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。(4点)
アリやハチのほか、ウなどの社会性昆虫は、コロニーとよばれる社会性の集団を形成して生活している。同じコロニー内の個体は、フェロモンなどを用い、互いに密接なコミュニケーションを行っている。一般に、一つのコロニーは、ごく少数の女王と多数のエによって構成される。なお、エは、共同で子育てを行う哺乳類は鳥類のオとは異なり、多くのばあい、一生をとおして生殖能力をカ。
B 野外環境における植物の成長量は、その種の本来の成長能力だけでなく、一次消費者による(C)被食の影響も受ける。植物は、また、毒性のある物質をもつなど、被食を防ぐしくみ(被食防御)をもつ。成長能力や被食防御の能力は、植物種によって異なり、種の分布やすみわけに関わる。
熱帯のある地域では、近接する栄養濃度の高い土壌(富栄養土壌)を低い土壌(貧栄養土壌)とで、異なる植物が優占する(以後、それぞれ富栄養植物と貧栄養植物とよぶ)。富栄養植物と貧栄養植物との間で、成長能力と被食防御の能力の違いを明らかにするため、実験1を行った。
実験1 富栄養土壌と貧栄養土壌のそれぞれに、一次消費者である植食性昆虫が入ることができない細かい網で覆った区(虫なし区)と、網で覆わなかった区(虫あり区)を用意した。それぞれの区に、富栄養植物と貧栄養植物の苗を、混在させて植え付けた。一定期間後の各苗の成長量を測定したところ、図1の結果が得られた。なお、網は植食性昆虫の移動のみに影響し、光などの環境要因は、虫なし区と虫あり区で同じになるように設定した。
問4 下線部(C)に関連して、植物の被食量と純生産量の関係を表す式として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)
純生産量=成長量+被食量+呼吸量
純生産量=成長量+被食量+枯死量
純生産量=成長量+被食量+呼吸量+枯死量
純生産量=成長量-被食量-呼吸量
純生産量=成長量-被食量-枯死量
純生産量=成長量-被食量-呼吸量-枯死量
問5 次の文章は、実験1の結果に関する考察である。キ~コに入る語句として適当なものを、下ののうちからそれぞれ一つずつ選べ。ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。(キ2点、ク・ケ・コ全部正解で2点)
虫なし区における成長量は、植物本来の成長能力の指標であると考えられる。そのため、富栄養植物は、貧栄養植物よりも、キにおいて成長能力が高いといえる。また、虫なし区と虫あり区の成長量の差が小さい植物ほど、被食防御の能力がクと考えられる。そのため、富栄養植物は、貧栄養植物よりも、被食防御の能力がケといえる。一方、貧栄養植物は、成長能力は低く、被食防御の能力はコという特徴があると考えられる。
富栄養土壌のみ 貧栄養土壌のみ 富栄養土壌と貧栄誉土壌の両方
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