2018年大学入試センター試験生物第5問(生物の進化と系統)解答・解説・追加説明

2018年1月14日(日)に行われた大学入試センター試験「生物」第3問(18点配点)の解答・解説です。センター「生物」受験者は、そのまま国公立・私大入試で生物も受験することが多い事情を考え、解説部分では、センター試験で選択肢から正解を選ぶレベルのみにとどまらず、国公立二次試験(私大試験)に対応できる説明も少し加えました。どうぞご活用ください。

なお試験問題の内容を変えない範囲で少し表現を変え、また小問に緑字で得点を明記しました。また試験問題は白黒印刷ですが、せっかくの画面上ですので一部カラーにいたしました。

解説

答⑤(y<x<1)

ヘモグロビンは、赤血球に含まれる色素タンパク質である。肺で酸素と結合したヘモグロビンを含む赤血球は、血流にのって末端組織に運ばれ、そこで酸素を解離し、末端組織に酸素を供給する。以下の図で、ヘモグロビンに近い働きをするミオグロビンとともに、構造をまとめておこう。

筋肉中のミオグロビンも、赤血球中のヘモグロビンも、それを指定する遺伝子は共通の祖先遺伝子から分岐してきた歴史もあり、また酸素と結合するという役割も同じなので、類似の構造を持つ。両者ともグロビンというタンパク質(ポリペプチド鎖)にヘムという色素が結合した色素タンパク質である。ヘムの中心には鉄原子が位置し、ここに酸素が結合したり解離したりする。ミオグロビンはグロビン鎖とヘム1個ずつの構造であるのに対し、ヘモグロビンはヘムと結合したグロビンが4個くっついている。図で細い黒線がペプチド鎖(一次構造)であり、それがらせん状などになった二次構造(図では紫・青・緑の部分)が更に折りたたまれたのがミオグロビンであり、この構造をタンパク質の三次構造という。ヘモグロビンは三次構造が複数集まっているので四次構造という。ヘモグロビンの4つのグロビンのうち、2つが141個のアミノ酸でできているα鎖、2つが146個のアミノ酸でできているβ鎖である。

アフリカなどに多く、赤血球が鎌状になる鎌状赤血球貧血症は、正常グロビンβ鎖の指定するDNAの塩基配列が1か所変異し、アミノ酸が1個変わったことで分子の形状が変わり赤血球の形状も変わり、貧血を引き起こす。本設問では正常遺伝子をH1、鎌状赤血球貧血症を表す遺伝子をH2と表記しているが、正常遺伝子をA、変異遺伝子を鎌(sickle)のSをとってSと表記することが多いので以下、AとSで説明しよう。

DNAのわずか1塩基の変異が、1アミノ酸を変え、それが疾病を引き起こす。

両親からS遺伝子を受けついだSSは重度な貧血で死亡率が高いが、正常遺伝子と変異遺伝子をうけついだASは、軽度の貧血があるが生存する。マラリア流行地域では、AAはマラリア耐性がないが、ASはマラリア耐性を持つ。すると図のようにマラリア非流行地域に比べると、マラリアでAAが死亡する比率だけ、Aの遺伝子頻度は少なくなり、相対的にSの遺伝子頻度が大きくなる。よってx>yとなる。ただAA、ASとも生存するので、AやSどちらかが100%(遺伝子頻度1)や0%(遺伝子頻度0)になることはない。よって(0<)y<x<1で、選択肢⑤が正解である。

答②(3000万年)

解説

種が異なっても共通に持つタンパク質、たとえばヘモグロビンのグロビン、呼吸の電子伝達系で用いられるシトクロムなどのアミノ酸配列の違いの数は、共通祖先からの分岐の年数に比例することがわかってきた。また同様に共通の遺伝子部分の「DNAやRNAの塩基配列の違いの数も、共通祖先からの分岐の年数に比例」する。分子の中に進化の分岐年代が刻みこまれており、このことを「分子時計」と呼ぶ。そして、この分子時計をもとに作った系統樹を分子系統樹といい、生物の系統分岐関係と共通祖先からの分岐年代を推定することができるようになった。この学問分野を分子進化学ともいう。

本設問では「DNAやRNAの塩基配列の違いの数も、共通祖先からの分岐の年数に比例」という原則さえわかっていれば、AとBの塩基の相違数が6塩基、AとCの塩基の相違数が2塩基なので、分岐年代も

AとB:AとC=6:2=3:1で、AとBの分岐が9000万年前ならば、AとCは3000万年前(選択肢②)と簡単に推定できる。

ただ、更に難しい問題に対処できるようにもう少し正確におさえておこう。

分子系統樹を作る上で重要な発想は、現生の生物も持つタンパク質のアミノ酸配列や、DNA・RNAの塩基配列から、化石もない(化石があってもDNAやタンパク質は調べられない)共通祖先が持っていた分子を推定する方法である。その原理は以下の図のようになる。

 

以上の発想を踏まえた上での分子系統樹の具体的な作り方を見ておこう。

 

この原則にしたがって、本設問を正確に解くと、以下の図式になる。

答③

解説

②は正しい。

(ハーディ・ワインベルグの法則とは、

1、集団がある程度大きい

2、交配がまったく任意(ランダム)に行われる

3、突然変異が起きない

4、個体の移入や移出(遺伝子流動)がない

5、自然選択がはたらかない

の5条件が満たされる集団(メンデル集団という)においては、集団内の遺伝子頻度は世代を経ても変化しないということである。

これは短期的な集団においてはそう仮定できることもあり、そうすることで、集団内の遺伝子頻度の計算などに役立つ。(同時に、この条件のどれかが満たされていない集団、あるいは短期的には満たされていても中長期的には、この条件のどれかが満たされなくなる変化があると、集団内の遺伝子頻度が変化し、進化につながる可能性を示唆している。)

⑤も正しい。アミノ酸を指定する3塩基の3番目が変化しても同アミノ酸を指定する場合がある。以下遺伝暗号表で確認しておいてほしい。

答④

①②は正しい。図2をみれば、種Dは流水の中でも葉が落ちずに生存できることがわかる。種Eは(その種子は同じ森林内なので渓流沿いに落ちて発芽することもありうるだろうが、仮にそうなっても)図2のように流水では葉の多くが流されてしまい生存しにくい。つまり適応していない。

③も正しい。図3を見れば、種Dは弱い光のもとでは生存率が低くなるので適応していないことがわかる。

④が間違い。図3を見ても、明るい環境と暗い環境での生存率に差はなく、「明るい環境よりも暗い環境に適応している」とは、実験2(図3)からは導くことはできない。

答③

解説 小中で学んできたとおりで、以下のとおりである。

答①

解説

適応放散とは、単一の系統から分化して、様々な環境に進出し、多様化することである。つまり共通祖先から多数の種が分岐していく進化の流れを示す。選択肢①が適切。

②は擬態という。③は同じ種の中で器官の機能が発達していることである。④は工業暗化といい、自然選択の例である。

 

 

 

 

 



朝倉幹晴(あさくらみきはる)


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