2020年大学入試センター「生物」第6問(植物の遺伝子と光受容体)(選択問題・配点10点)問題・解答・解説

2022年1月 朝倉幹晴(予備校講師・船橋市議)

入試問題は黒単色印刷ですが、せっかくの画面上なので一部カラー化しました。

 

2020年センター「生物」第6問(選択・10点

生命現象と物質、および生物の環境応答に関する次の文章を読み、下の問(問1~3)に答えよ。

 ある植物Aでは、酵素Xが複数の種類あり、そのうち酵素X1はぺルオキシソームとよばれる細胞小器官の中に、酵素X2は細胞質基質にそれぞれ存在している。酵素X1と酵素X2のアミノ酸配列は末尾の数個を除いて完全に同一であり、酵素X1の末尾の7つのアミノ酸の部分が、酵素X2では別の2つのアミノ酸になっている。この酵素X1と酵素X2のアミノ酸配列の違いとその機能との関連、およびアミノ酸配列の違いと細胞内での存在部位との関連について明らかにするため、それぞれ実験1・実験2を行った。

実験1 酵素X1、酵素X2、および「酵素X1の末尾の7つのアミノ酸を削除したタンパク質」のそれぞれについて酵素の活性を測定したところ、どれも同等の活性を示した。
実験2 緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPのアミノ酸配列の末尾に酵素X1の末尾の7つのアミノ酸の配列をつないだもの(GFP-1)、およびGFPの末尾に酵素X2の末尾の2つのアミノ酸の配列をつないだもの(GFP-2)を、それぞれ植物Aの別々の細胞の中で発現させた。その結果、GFPおよびGFP-2を導入した細胞では細胞質基質のみで、GFP-1を導入した細胞ではペルオキシソームのみで、緑色の蛍光が検出された。

問1 実験1・実験2の結果から導かれる次の考察に入る語句の組合せとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。

酵素X1、酵素X2、およびGFPはいずれも細胞質基質で合成される。実験1・実験2の結果から、酵素に含まれる配列が、翻訳後のタンパク質のペルオキシソームへの輸送に関わっている。また、酵素の配列は酵素Xの活性を

問2 植物Aでは、酵素Xをコードする遺伝子Xはそのゲノム中に一つしか存在していないことから、選択的スプライシングによって、3種類のmRNAが作られることが推定された。図1には、遺伝子Xの転写直後のRNAの塩基配列の一部と、選択的スプライシングによって生じたmRNA-Cの対応する部分の塩基配列が示されている。なお、図中の下線は終止コドンを示している。酵素X1と酵素X2に対応するmRNAの組合せとして最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。

問3 次の文章中のウ~オに入る語の組合せとして最も適当なものを、下のうちから一つ選べ。
 植物は光に対する複数の種類の受容体をもっており、このような受容体にはレタスの発芽の促進などに関わるや、光屈性や気孔の開口などに関わるなどが存在する。酵素X1と酵素X2をコードするmRNAは、光環境に応答してその存在量比が変化した。そこで、光の受容体を欠損した植物Aの変異体を用いて実験を行ったところ、を欠損した変異体を用いた場合のみ、光環境に応答した酵素X1と酵素X2のmRNAの存在量比が変化しなかった。このことから、植物Aは、色の光に応答した選択的スプライシングを行うことで、酵素Xの細胞内の存在場所とその量とを変化させ、光環境に応じた細胞内の代謝経路の調整を行っていると考えられた。

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