2022年大学入試共通テスト「生物」(植物の環境応答・植物ホルモン)第6問、問題、解答、解説(配点19点)

2022年9月 予備校講師・船橋市議 朝倉幹晴

 2022年大学入試共通テスト「生物」第6問(配点19点)の解答・解説を作成しました。学習や入試対策にご活用ください。問題文の末尾をクリックすると解答・解説のページに飛びます。

 

第6問 次の文章を読み、後の問い(問1~5)に答えよ。(配点19点)



宮崎賢治が「サムサノナツハオロオロアルキ」と詠んだ夏場の低温による凶作では、10℃を上回る温度でも、イネの(a)種子が形成されにくくなる。その原因は、(b)低温では成熟した花粉が正常に形成されないことにある。この現象を調べるため、(c)イネの花のおしべが分化してから花粉が成熟するまでの約20日間の発生が家庭を調べたところ、表1の結果が得られた。成熟した花粉が正常に形成されない現象は、(d)表1の発生段階のどこかが低温において進行しなくなっていることが原因と考えられる。
他方、冬場の低温においては、0℃以下になると細胞内の水が凍結し、生じた氷の血しょうにより細胞が破壊されることがある。しかし、(e)徐々に温度が低下した場合には、植物は凍結による細胞の破壊を回避できることがある。

問1 下線部(a)に関連して、一般的な被子植物の種子の形成から発芽に至る過程における現象の記述として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。(3点)
胚珠全体が、種子では種皮になる。
受精卵は、細胞分裂を経ずに胚となる。
発芽前の種子ではまだ器官の分化はみられない。
種子は、成熟すると乾燥に対して強くなる。
種子は、アブシシン酸の含有量が増えると発芽しやすくなる。

問2 下線部(b)に関連して、低温が花粉の形成に与える影響を調べるため、花粉の成熟に至る途中の様々な時期のイネを12℃の低温にさらして受精しなかった割合を調べ、発生段階ごとに示したところ、図1の結果が得られた。この結果から考えられる低温の影響の記述として最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。なお、図中のは、表1の発生段階である。(4点)


花粉管細胞と雄原細胞の形成は、低温の影響を大きく受ける。
花粉四分子の形成は、他の段階よりも低温の影響を受けやすい。
低温により、おしべが分化しなくなる。
成熟した花粉は、低温にさらされると受精の能力を失う。
どの発生段階であっても、低温にさらされることにより受精の効果は10%以上低下する。

問3 下線部(c)に関連して、イネでは、花芽形成前の茎は見かけより短く、茎頂分裂組織が地面近くにあり(図2)、葉や花穂(かすい)はここから分化して伸びる。イネの成長のある時期(以下、時期X)に、水田の水深を、イネの下半分が水につかるくらいまで深くしておくと、気温が一時的に低下しても、花粉の形成には大きな影響がなかった。この結果から導かれる考察として適当でないものを、後ののうちから一つ選べ。(4点)

時期Xに植物体の上半分だけが低温にさらされても、花粉の形成は影響を受けない。
時期Xに花粉四分子の形成が起こった。
花穂が水面下にあることにより、気温の一時的な低下から花粉の形成が保護された。
花粉の成熟が遅れたままで花穂が伸びたときには、花粉の形成を低温から保護するために、水田の水深をより深くする必要がある。
時期Xに水田の水深を深くした際の気温の一時的上昇は、気温が変化しない場合と比べて、種子の割合を低下させる。

問4 下線部(d)に関連して、低温処理が花粉の形成に与える影響を調べるため、実験1を行った。実験1の結果から導かれる後の考察文中のア~ウに入る語句の組合せとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。(4点)

実験1 ジベレリン合成能力の変化が原因で草丈が低い矮性(わいせい)のイネでは、普通の草丈のイネに比べて、低温で処理した際には異常な花粉の割合がさらに高くなった。また、普通の草丈のイネを低温で処理したときの葯のジベレリンの量を測定したところ、処理しなかったものと比較して減少していた。さらに、この処理の際に根からジベレリンを吸収させたところ、正常な花粉の割合が回復した。

ジベレリンには、草丈をする働きと、低温にさらされたときの花粉の形成を働きとがある。花粉の形成におけるジベレリンの働きから考えると、品種改良された草丈が低く倒伏しない現代のイネは、品種改良される前のイネに比べて、低温に対してなっている可能性がある。

 

問5 下線部(e)に関連して、植物が0℃を大きく下回るような低温での凍結をどのように回避しているかを調べるため、実験2を行った。

実験2 実験室でよく栽培されるシロイヌナズナの植物体を、通常の生育温度である23℃から急速に-15℃に温度を下げて数時間処理すると、23℃に戻してもすぐに慣れてしまった。しかし、あらかじめ生育環境を通常の23℃から2℃に下げて3日間栽培して寒さに慣らしてから-15℃の低温処理を数時間行った場合、植物は枯れずに生き続けることができた。また、-15℃にさらされても生き残った植物の細胞内の糖やアミノ酸の量は、通常に生育させた植物に比べて増えていた。

この実験の結果から、細胞内の糖やアミノ酸を増やすことが、凍結による細胞の破壊を回避するために有効であると考えた。この考えが正しいかどうかを調べるために追加すべき実験として適当でないものを、次ののうちから一つ選べ。(4点)

まず-15℃で数時間処理し、次いで2℃に移して3日後に糖やアミノ酸の量を測定する。
-15℃での処理による細胞の破壊の程度を、あらかじめ2℃での栽培をする場合としない場合とで比較する。
2℃で3日間栽培する前後で、糖やアミノ酸の量を比較する。
増えた糖やアミノ酸の合成に関わる酵素の胃でbン氏が働かなくなるようにした株が、-15℃の低温処理に対して弱くなるかどうかを調べる。
増えた糖やアミノ酸の合成に関わる酵素の遺伝子を過剰に働くようにした株が、-15℃の低温処理に対して強くなるかどうかを調べる。

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