2021年大学入試共通テスト「生物」第2問(配点15点)問題・解答・解説
【解説】
問1
外来生物は、在来種との交雑により、在来種集団の遺伝的な固有性を損なうことがある。
→正しい。外来のカブトムシやクワガタムシが在来種と交雑して雑種化し、在来集団の固有性が損なわれることが危惧されている。
外来生物は、ヒトの健康を脅かすことがある。
→正しい。カミツキガメ(北米原産)はヒトにかみつき、セアカコケグモ(熱帯アジア原産)は毒を持つ。
外来生物を駆除して生態系を復元する試みは、世界中でほぼ成功している。
→誤り。オオクチバス(通称「ブラックバス」)の駆除は成功していない。
外来生物は、移入されるまでは、在来種との間に共進化関係を有していない
→誤り。共進化とは、被子植物の花・果実の形態とその蜜や果実を摂食し花粉媒介や種子散布を行う昆虫や鳥の口や全体の形態がしだいに密接な関係になるように、同じ生態系で生息する2種以上の生物が互いに影響を及ぼしながら進化する現象である。外来生物はその地域に移入される前は、その地域に「いなかった」からこそ「外来生物」と言われる。したがって「いない」ので「共進化関係」にはなりえない。よって「誤り」は(3点)。
問2
ブラウンの急速な増加は、種内競争が促進されたことによる。
→×。ブラウンは「急速な増加」をしていない。減少している。
導入区において、ブラウンとグリーンの合計個体数は、ブラウン導入前のグリーンの個体数とおおよそ等しくなり、安定した。
両方×。ブラウンは環境収容力に達していない。また導入区の「ブラウン+グリーン」も増加傾向にある。1998年にはグリーンは減少し0(絶滅)に近づいているが、ブラウンが増加中のため「ブラウン+グリーン」は増加中と考えられる。
導入区でのグリーンの減少は、ブラウンの影響による。
→〇。1000程度の数を維持している非導入区に比べて、明らかに減少している。両区の違いであるブラウン導入の影響と考えられる。
問3
導入区のグリーンは、幹のより高い位置を利用するようになり、かつ指先裏パッドの表面積が増加した。
→〇。導入区のグリーンは導入直後より高い位置を利用するようになり、年ごとにさらに高い位置の利用になっている。そして非導入区に比べ指先裏パッドの表面積も増加している。
導入区と非導入区のグリーンはともに、幹のより高い位置を利用するようになり、かつ、指先裏パッドの表面積が増加した。
→×。非導入区のグリーンは高い位置ではなく若干低い位置を利用している。指先裏パッドの表面積は(導入区と比べ)小さくなっている。
導入区のグリーンは、ブラウンとの競争により絶滅した。
→×。絶滅していない。
ブラウンは、グリーンより指先裏パッドの表面積が大きいため、幹を利用する競争において優位であった。
→×。ブラウンの指先裏面積に関するデータはないので、大きいかどうかはわからない。
問4
ブラウンが導入されても、グリーンの個体群の存続には影響がないことが示された。
→×。図1において導入区のグリーンの個体数が減少し、存続ができるかどうかわからない状態になっている。
導入区と非導入区との間でみられたグリーンの指先裏パッドの違いは、世代を超えた変化によるものではなく、個体の成長の過程で生じたものである。
→×。図4で、卵を同じ人工環境下で育て、子の指先裏パッドの表面積を比べた場合でも指先裏パッドの違いが維持されているので、世代を超えた変化である。
ブラウンとの種間競争の有無にかかわらず、グリーンは幹に貼りつく力を高める方向に進化すると予測される。
→×。図2で非導入区、つまり種間競争がない場合、グリーンは高い位置を利用していないので、幹に貼りつく力を高める方向への進化はしないと考えられる。
ブラウンの導入後15年間に、導入区のグリーンはブラウンとの生活空間を分割するようになり、その表現型が進化した。
→〇。図4で、導入区では指先裏パッド表面積の増加が起きているので、より低い位置を利用するブラウンと生活空間の分割(棲み分け)が生じたと考えられる。また、卵を同じ人工環境下で育て、子の指先裏パッドの表面積を比べた場合でも指先裏パッドの違いが維持されているので、表現型の進化が起こったと考えられる。
よって(4点)。