2021年大学入試共通テスト「生物」第3問(配点12点)問題・解答・解説

【解説】(作成途上)

問1

★生産構造図とは?

植物群集の地上部を一定の高さごとにいくつかの階層に分けて刈り取り、葉など同化器官(光合成器官)と葉以外(枝・茎・幹・花)の非同化器官(非光合成器官)の重量をはかることを「層別刈り取り法」という。そして、高さを縦軸、同化器官の生重量を左側の横軸、非同化器官の生重量を右側の横軸に棒グラフで配置し、同化器官側に群落内の光の強さの減衰を曲線で示したものを生産構造図という。生産構造図では正確な値をグラフで示しながら同時に群落の形の概形を示すことができる。
草本群落の場合、その構成種によって以下のように「広葉草本型」と「イネ科草本型」の2種類の概形に類型化される。

広葉を持つ草本は、多くの葉が上部に水平に配置され、上部で光のほとんどを吸収する。したがって下部(群落内部)の光は少なくなり、葉も少なくなる。イネ科草本は、細長い葉が茎の下部から上部に向け斜めに立ち上がっているものが多い。したがって葉は群落下部に多く上部には少ない。したがって光は群落下部(内部)まで届く。
(上記の図は生重量で示しているが、乾燥させた乾燥重量で示すこともある。「乾燥重量=生重量-含水量」である。)

この設問における生産構造図。各層の数値を読むことも、選択肢の正誤を選ぶ一つのポイントとなる。

 

早春の第1層の葉群は、初夏には第3層にもち上がり、茎の下部に新たな葉がついた。
→×。通常草本は、すでに生育した部位の上部に頂芽が生育し伸長することで上部に伸びていく。エスカレーターのかごのように下部そのまま上部に持ちあがることによる伸びるものではない。たしかに見かけ上は早春の第1層(4g/m2)が初夏の第3層(6g/m2強)に「持ちあがった」ようにも見えるが、数値が異なるし、実際の「持ちあがった」かどうかは調べていないのでわからない。

早春から初夏にかけて、優占種P以外の植物の個体数は減少した。
→×、葉以外の器官の乾燥重量が減少したが、葉の器官の乾燥重量の合成は減少していない。そして葉以外の器官の乾燥重量の減少は、個体数の減少によるものなのか、個々の個体の中で重量が減少したものなのかどちらとも断定できない。
早春から初夏にかけて、優占種Pの高さ20cm以下の部位では、葉以外の器官の乾燥重量が大きく減少した。
→×。あまり変化していない。

早春から初夏にかけて、優占種Pの高さ20cm以上の部位では、全体の乾燥重量に占める葉の乾燥重量の割合が高まった。
→〇(20cm以上の部位について、早春は葉:葉以外=2g/m2:2g/m2で葉の乾燥重量の割合は50%。初夏では葉:葉以外=8g/m2:3g/m2葉の乾燥重量の割合は70%。)

初夏の第1層と第5層との光量の差は、高木の葉が光を遮ることによって生じた。

→×。設問の冒頭の文章にあるように、この図は「草本植物群集の生産構造図」である。よって、その上層(第5層)20%から下層(第1層)2%への光の18%分の減衰(光量の差)は、この草本の葉による減衰である。「高木の葉」の影響は上層(第5層)段階で最初から20%に減少していることに表れている。

よって、(4点)

問2

下図で赤四角と赤丸部分がア・イで問われている比較対象である。

第3層の葉は3倍、第3層上部の光量は10%/100%で、1/10であることがわかる。
よって(4点)

問3

早春の第3層、初夏の第5層の葉の合計面積は、
早春第3層 2g × 250cm2/g =500cm2
初夏第5層 5g×  360cm2/g =1800cm2

次に、この値を用いて1時間に吸収する二酸化炭素量を求めると、
早春第3層 500cm2 ×0.175mg/cm2 =87.5 mg
初夏第5層 1800cm2 ×0.070mg/cm2126 mg
初夏のほう早春よりも多かった。

 

よって

初夏は光量は減る。しかし、葉の量と表面積を増やす、つまり減った光量(「木洩れ日」)を「薄く広く」受け止める葉の構造になる。面積あたりの光合成量は減少するが、葉の量と表面積の増加がその比率を上回り、光合成の全体量は増える。林床に適応した草本植物にとって、落葉樹の高木の葉がない「早春」の時期は短期間で、「初夏」以降の高木の葉がある状態のほうが長期間になる。その長期間の時期に適応するように葉の構造が形づくられるように進化をしてきたと考えられる。