2023年大学入試共通テスト「生物基礎」第2問A(配点7点)問題・解答・解説
2023年12月12日 予備校生物科講師・船橋市議 朝倉幹晴
2023年大学入試共通テスト「生物基礎」第2問A(配点7点)の解答・解説を作成しましたので、ご活用ください。問題文の最後の所でページ番号「2」をクリックすると解答・解説に飛びます。
入試問題そのものは、黒印刷で色の相違は、網掛けや斜線で示していますが、せっかくの画面上ですので、実際に近い色で表現しました。
2023年大学入試共通テスト「生物基礎」第1問A(配点6点)問題・解答・解説
2023年大学入試共通テスト「生物基礎」第1問B(配点10点)問題・解答・解説
参考 大学入試共通テスト・センター試験「生物」過去6年分(2023~2018年)全問題、「生物基礎」(2022~2018年)解答・解説
【2023年大学入試共通テスト「生物基礎」第2問A】(配点7点)
A「胆汁には脂肪の消化を助ける作用がある」と授業で学んだマオさんとナツさんは、この作用について調べることにした。
マオ:脂肪の分解は消化酵素のリパーゼが行っているから、胆汁は脂肪を直接分解しているのではないということだね。胆汁はリパーゼの作用に関わっているかもしれないね。
ナツ:実験して調べてみようよ。脂肪がリパーゼで分解されると、脂肪酸ができて反応液が酸性に傾くはずだから、この変化を検出する方法を考えればいいね。牛乳には脂肪が含まれているから、基質(酵素が作用する物質)に使えないかな。
マオ:牛乳にリトマスの粉末を溶かしたリトマスミルクというのがあるよ。リトマス紙と同じように、pHがアルカリ性から中性の範囲だと青色に、酸性だと赤色になるんだ。アルカリ性・酸性の度合いが強くなると、それぞれの色も濃くなるよ。
ナツ:リトマスミルク中の脂肪が分解されれば、色が変化するはずだね。さっそく実験1をやってみよう。
実験1 試験管(a)~(e)を用意し、表1に従って、リトマスミルク、リパーゼ溶液、100℃で処理したリパーゼ溶液、蒸留水、水分を除去して粉末にした胆汁(以下、胆汁の粉末)を、それぞれ該当する試験管に入れて、よく攪拌(かくはん)した。37℃で1時間反応させた後、反応液の色調を観測したところ、図1のようであった。なお、胆汁の粉末がリトマスミルクの色を直接変化させることはないものとする。
問1 実験1の操作および結果から、二人は次の結論1~3を得た。これらの結論を得るために、二人が比較した試験管の組合せとして最も適当なものを、後ののうちからそれぞれ一つずつ選べ。
結論1:リパーゼには、脂肪を分解する作用がある。
結論2:リパーゼは、高温で処理すると、作用しなくなる。
結論3:胆汁には、リパーゼによる脂肪の分解を助ける作用がある。
マオ:胆汁はどのようにして脂肪の消化を助けているのだろうね。資料を調べたら、「胆汁は脂肪を乳化する」と書いてあったけど。
ナツ:乳化って、食用油にセッケン水を入れて振ったときに、油分が微粒子になって水中に分散し、白く濁る現象のことだね。胆汁による乳化がどんなものか、実験2で確かめてみよう。
実験2 試験管f・gのそれぞれに蒸留水2mLと食用油1mLを入れ、さらに試験管gにのみ胆汁の粉末を入れた。それぞれの試験管をよく攪拌し、室温で静置した。1時間後、図2のように、試験管Fには層Xと層Yが、試験管Gには層X、層Y、および層Zが、それぞれ観察された。
問2 二人は、実験1・実験2の結果から、「胆汁は、リパーゼによる脂肪の分解を、脂肪を乳化することにより助けている」と仮説を立て、その検証実験と、仮説が正しい場合に得られる結果を考えた。この検証実験と予測される結果について述べた次の文章中のア~ウに入る語句の組合せとして最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。
2本の試験管を用意し、一方には実験2で得られた層アを、他方には層イを、それぞれ等量入れる。次にリパーゼ溶液とリトマスの粉末を入れてよく攪拌し、37℃で1時間反応させた後、試験管内の液体の色調を比較する。仮説が正しければ、2本の試験管のうち、層ウを入れた試験官が、より濃い赤色になる。
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