2024年 #大学入試 #共通テスト #生物、第6問(配点20点)問題・解答・解説


【解説】
問1

生物は以下のように段階的に分類される。
原核生物・真核生物ともに持つリボソームの原料、rRNAの塩基配列の類似性から系統樹が描かれ、
「細菌(バクテリア)ドメイン」「古細菌(アーキア)ドメイン」「真核生物ドメイン」に三分岐していることがわかった。

原核生物の中が、細菌ドメインと古細菌ドメインに分岐していることがわかったとともに、その共通の根元部分に近い生物には好熱性細菌が多いことから、生命の起源は海底の熱水噴出孔ではないかとの説の根拠とされている。

核膜に包まれた核を持つ真核生物は、古細菌ドメインに属していた大型細菌に、細菌ドメインに属していた原始好気性細菌が共生しミトコンドリアになり、また植物においては、細菌ドメインに属していた原始ラン藻が共生し葉緑体となって形成されてきたと考えられている。

マーグリス・ホイタッカーらは、「三ドメイン説」が出る前に、生物を「原核生物界(モネラ界)」(細菌など)、「原生生物界(プロチスタ界)」(単細胞生物など)、「動物界」「菌界」「植物界」の5つに分類する「五界説」を唱えた。その後「三ドメイン説」で「原核生物界」が2つに分かれていることがわかったが、真核生物を分類した4界「原生生物界」「動物界」「菌界」「植物界」の分類は、今でも活かされている。

五界説での「原核生物界」が「三ドメイン説」で2つに分岐していることがわかったこともあって、今はあまり「界」とは表現せず、真核生物を「原生生物」「動物」「菌」「植物」を4つに分類して捉えることが多い(現在の教科書の表記)。
この時「動物」「菌」「植物」は多細胞生物のみを示すものとし(c〇)、単細胞生物で従来は動物に含めることの多かったゾウリムシなど「原生動物」や、従来植物に含めることの多かったクロレラなど単細胞の藻類、菌類でも単細胞になることもある「変形菌」などはすべて「原生生物」に含めることとした。また「植物」をコケ・シダ・種子などの陸上植物に限定し、多細胞であっても藻類(大型のコンブやアオサなども含め)も「原生生物」に含めた。つまり、「原生生物」は(多細胞の)動物・菌類・陸上植物以外をすべて含む雑多なグループとなった。

植物が光合成をする独立栄養生物(無機物から自ら有機物を合成できる生物)であるのに対し、動物と菌類は、他の生物が作った有機物を摂食したり分解してエネルギーを得るので他の生物の栄養に依存した従属栄養生物(自らは有機物を合成できず他から有機物を摂取する生物)である。(b〇)

動物の中には、次の設問で述べるように、胚葉なし・二胚葉・三胚葉が形成されるものがあり、三胚葉のみではない。(a×)

よってb・cなので

問2
動物の分類・系統樹は以下のようになる。


発生過程で肺葉なしが「海綿動物」、内・外の二胚葉に留まり中胚葉ができないのが「刺胞動物」それ以外は「三胚葉」である。
「三胚葉」は、消化管形成の時、原口が(将来の)口部分になり後に肛門へと貫通するので、口が肛門より古くできる「旧口動物」が左手側、原口が(将来の)肛門部分になり、後に口へと貫通するので、口が肛門より新しくできる「新口動物」が右手側である。
旧口動物は更に脱皮をする脱皮動物と、トロコフォア幼生を作る(進化的に作った時期のあった)冠輪動物に分岐する。

以下の図は更に詳しく説明し、具体的な生物名を書き込んだものである。生物名(和名)はカタカナ表記が基本であるが、元の漢字を考えたほうが生物名の由来が理解しやすいものはあえて漢字のまま表記している。


カメノテ(亀の手)は、ノートの「硬い殻」「節のある器官」「脱皮」がヒントで節足動物である。左手中ほどにあるようにフジツボと同様、節足動物門甲殻綱の生物である。カニやエビと同じ仲間で移動せず固着する生活様式になった。選択肢ではY

ウメボシイソギンチャクはノート「刺胞を持つ」がヒントで刺胞動物である。選択肢では、
W

ムラサキウニはノート「トゲで覆われている」原口は口にならない(肛門になる)=新口動物」がヒントで棘皮(キョクヒ)動物で、選択肢ではZ

問3

ハルさん(図4)については、まず第7世代→第8世代の子の流れをサイコロの目にしたがって記述する(図青線。次に完成した線に基づき、第8世代の6個体の祖先由来をさかのぼってみる(図オレンジ)。E由来は4個体(F由来が2個体)とわかる。よって
アキさん(図5)は、変異が起きた子孫を追跡する。すると「世代3」において最大の3個体(集団全体の50%)までになるが、世代7では消失していることがわかる。遺伝的浮動を示すよいモデルである。よって、

問4
「シミュレーションの結果も参照しながら」とある点に留意しよう。

(d)新しく生じた突然変異の多くは、集団全体に広まることはなく、やがて集団中から失われる。
アキさんのAの後に起きた変異が世代7では消失しているように、集団内から失われることも多い。
(e)生存や繁殖にとっての中立な突然変異は、集団全体に広まることができない。
そもそも中立的な変異か、自然選択されるような変異かはこのシミュレーションで実験していないいし、中立的な変異は遺伝的浮動で広まることもある。×
(f)1回の突然変異に由来する対立遺伝子が、ある世代で集団全体に広まっているとき、その世代の全個体が共通の祖先を持つことを意味する。
実際アキさんでは世代8がすべてB由来であり、共通祖先Bを持つことがわかった。
(g)遺伝子頻度の変動に与える遺伝的浮動の影響は、集団が大きくなるほど大きくなる。
6個体という少ない個体数でのシミュレーションだったので、簡単に全個体が同じ祖先から由来する(その祖先個体に起きた遺伝子変異が全個体に広がる)ことがおきたが、集団が大きくなると、遺伝子頻度は最初の状態を維持しやすい(大きく変わる可能性は低い)。×
(d)(f)よって