2024年 #大学入試 #共通テスト #生物基礎 第2問A(9点)問題・解答・解説
血液は、有形成分の血球と液体成分の血清からなる。×
液体成分は「血しょう」。「血清」とは、血液凝固の時塊「血餅」ができた後、残された液体部分のこと。「血清」は血しょうから血液凝固に関する成分が除去されたものである。
赤血球、白血球、および血小板のうち、最も数が多いのは血小板である。× 赤血球が最多。
血液の液体成分に溶けている物質のうち、質量として最も多くを占めるものは無機塩類である。×タンパク質が最多(8%)
血液による酸素の運搬は、主にヘモグロビンによって行われる。〇
白血球は、免疫を担うとともに、老廃物の運搬を行う。×
老廃物は血しょうに溶け込んで運搬される。
問2
上記図の通り、(c)血小板が集まる→(a)繊維状の物質が形成される→(b)赤血球などを絡めた塊ができる、の順。よって、 。
河川が修復が比較的しやすい小さな決壊をした場合とその後の補修に例えると以下のようである。
まず、決壊した災害時は、「土のう」(血小板)で決壊場所からの水漏れ(血液流出)を防ぐ緊急対応をする。次に、セメント(フィブリン)と砂・砂利(赤血球など血球)をまぜてコンクリート化し、完全に補修する。
問3
詳しくは下のまとめで確認してほしい。
傷口に集まってきた血小板が、侵入してきた病原体を取り込む。×
血小板は傷口を物理的にふさぐ役割であって、病原体を取り込むにはマクロファージや白血球である。
傷口を塞ぐために角質層が形成される。×
設問の求める「直後」の働きではないし、場所によっては角質層は形成されない。
マクロファージが傷口付近で病原体を取り込む。〇(自然免疫)
ナチュラルキラー(NK)細胞が、傷口から侵入した病原体を直接攻撃する。×NK細胞は傷口表面の病原体に対してではなく、がん細胞やウイルス感染細胞に対し攻撃をする。
抗体産生細胞(形質細胞)が傷口の組織に集まって、侵入してきた病原体に対する抗体を放出する。×、設問の求める「直後」の働きではない。傷口で病原体を攻撃するのはマクロファージなどの食作用である。
【免疫の全体像の解説】
侵入する病原微生物などに対する生体防御機構を免疫(immunity)。英語immunityは、ラテン語でmunが労役(仕事・業務)を示し、im-が否定の接頭辞なので、「労役を免除する」意味から、病気を免れるという意味で使われるようになった。
以下は免疫系の全体像を示した図である。図中の番号順に確認していただくことでまず全体像を確認してほしい。免疫は、すべての動物に備わっている自然免疫(innate immunity)と、脊椎動物で発達した獲得免疫(acquired immunity、適応免疫ともいう)に分類できる。
病原微生物(その中の異物として認識される部位や成分を抗原antigenという)に対し、最初に働くのは自然免疫である。病原微生物の個々の正確な特徴を認識する前に、皮膚や粘膜で病原微生物を物理的に防いだり、涙や鼻水に含まれる細菌細胞壁分解酵素リゾチーム(lysozym)で防いだり、好中球、マクロファージなど()が病原微生物を食作用でとりこむ仕組みである。これらの自然免疫を担う細胞は、その細胞膜表面に、様々な病原微生物に共通な成分のパターンを認識するパターン認識受容体(PRR、Pattern recognition receptor)を持つ。その典型例がTLR(トル様受容体、Toll-like receptor)であり、10種類以上が知られている。
(Tollは、ショウジョウバエの発生において背と腹の軸を決定する遺伝子(が指定するタンパク質)として1985年に発見されました。発見した研究者が思わず「toll !」(ドイツ語で「すごい」という意味)と叫んだことで命名された。TLRはそのTollに似た構造を持つということから命名された。)
自然免疫にはこの他、がん細胞・ウイルス感染細胞などを細胞表面のわずかな特徴で排除するNK細胞(natural killer cell)(後述)や、病原体などを破壊するタンパク質である補体の働きも含まれる。なおNK細胞の自然免疫だけで生体防御できなかった場合、しばらく後に獲得免疫が働き始める。これは個々の病原微生物の抗原などを正確に認識し、その抗原などに特異的に(specific)反応し除去するしくみである。、それは体液性免疫(humoral immunity)と細胞性免疫(cell mediated immunity)に分けられる。
両者とも、まず樹状細胞などが、病原微生物や抗原を細胞内に取り込み、抗原提示細胞(APC、antigen-presenting cell)となり、ヘルパーT細胞(helper T cell)にその情報を伝える。
体液性免疫では、ヘルパーT細胞が、認識した抗原を取り込みその抗原と特異的に結合できる抗体(antibody)を作るB細胞(B cell)を刺激し、その分裂と抗体の大量生産を促す。分裂増殖したB細胞を形質細胞(plasma cell)あるいは抗体産生細胞という。抗体は血液・リンパ液など体液中に大量に放出され、それが「的に当たるヤリのように」抗原と結合し、凝集したり沈殿させたりする反応抗原抗体反応(antigen-antibody reaction)を引き起こす。抗原抗体反応の舞台は体液なので体液性免疫という。体液性免疫は、体液内で分裂増殖し、細胞表面に様々な抗原を持つ細菌に対する免疫においてよく働く。またウイルスに対する免疫では、ウイルスが細胞に侵入する前で体液にある状態で働く。このウイルスに対する抗体を特に中和抗体(neutralizing antibody)という。一般にウイルスに対するワクチンはこの中和抗体を作らせることを誘導することで、ウイルスに対する免疫を獲得させる。細胞性免疫は、ウイルスに感染された自らの細胞や、自らの細胞が変化し制御なく増殖しはじめたがん細胞、臓器移植の際の他人の臓器に対する拒絶反応などで働く。つまり、細胞性免疫の相手は、体液中に浮遊している病原微生物ではなく、(自らの)細胞であることが多い。
これらの細胞に対しては、抗体などの「やり」では対処ができず、細胞まるごとを排除する。ヘルパーT細胞から、そのウイルスや、正常細胞にはなくがん細胞に変化した時に特異的に発現するタンパク質の情報を得たキラーT細胞(細胞傷害性T細胞)が、そのウイルス感染細胞、がん細胞、他人の移植細胞を排除する。キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)や自然免疫に働くNK細胞は、攻撃する細胞に対して、パーフォリンという物質を分泌することで穴をあけ、グランザイムという物質を細胞内に送りこみ破壊する。また細胞が細胞表面に持っている細胞死スイッチ(Fas)を押すことで、細胞死を促す。