2019年大学入試センター生物第7問「生態系」(10点・選択)問題・解答・解説
解答 1(4点) 2(3点) 3(3点)
解説
1(問1)
自ら有機物を合成する緑色植物を「生産者」、生産者を食べる植食動物を「一次消費者」、一次消費者を食べる動物食動物を「二次消費者」という。これは、生物の捕食が「単食」であり、
生産者→一次消費者→二次消費者
と被食・捕食関係が直線的である場合にはわかりやすい。このような直線的な関係を食物連鎖という。
しかし実際の生態系においては、同じ動物にも植物と他の動物双方を食べる動物もいる。また多種の植物・他種の動物を食べる動物もいる。(ヒトの場合もそうである。)その場合は、被食捕食関係は網目状になるので「食物網」という。この設問の食物網は以下の図のようになる。設問のアで問われている「一次消費者であり二次消費者でもある」生物をあぶりだすために、両方に相当する生物は両方に描いた図を作ってみると、ハエが一次消費者、ハチが一次消費者・二次消費者で、鳥は二次消費者とわかる。アはハチである。
次に実験2とその結果を、以下の3点に留意して図に描いてみる。
1、上記「食物網」図では、すべてが捕食されていくイメージになりがちだが、実験2に「生存」という場合が表記されていることから、ハエ幼虫が捕食されずに生き延びることもあることが
確認できる。ハエ幼虫が捕食されなかった場合は、その位置にとどまるイメージで図に加筆してみる。
2、またハチの幼虫は「ハエ幼虫と虫こぶ組織をセットで食べるので、セイタカアワダチソウ→ハエの中間あたりに食物網の矢印の起点があるように図に描く。
3、中学社会での「国の輸出入量の流れ図」で示されたように、→の太さで量(%)を示す。
なお( )となっている部分は、実はハチ幼虫産卵成功がそのままハエ幼虫捕食を完了させ、ハエは生存できないと考えれば100%からの引き算で出る数字である。この数字がほぼ正しいと考えてよい(しかし厳密には、「ハチ産卵=ハエ生存できない」とは断言できないため( %?)と表記しておく。
上図より、2cm未満の時はハチによる死亡が最多なので、虫こぶの平均直径が1.7cmの時がハチによる死亡。(ウはハチ)
下図より、2cm以上で初めて鳥による死亡と生存が多くなるので、イは鳥。よって(4点)
2(問2)
上図より、直径2cm未満では、ハエ幼虫は、そもそも鳥による捕食は少ないので、鳥の生息地消失による影響は少ない一方、ハチによって確実に81%は捕食されてしまう。
一方、直径2cm以上では、鳥による捕食は多いので、鳥が減少すると捕食されずに、ハエ幼虫が生き延びる確率が高まる(仮に鳥の捕食がなくなったと仮定すると、上記数字を単純計算すると、生存率が71%から94%に高まる)。したがって、2cm以上にすると、以前よりも生存に有利になるので、自然選択が働き、虫こぶは今まで以上に2cm以上の比率、つまり大きい虫こぶが増える。
ハエの虫こぶが大きくなるとハチは産卵しにくくなり、6%しか産卵できないが、ハチの中で自然選択で虫こぶが大きくても産卵できる産卵管の長いものが自然選択されていく。すると虫こぶの大きさとハチの産卵管の長さはともに大きく・長く変化していく共進化を引き起こす。(種分化は明確に別の種に分かれていくことであるが、そこまでは文章から断言できない。)よって(3点)。
2(問2)
自然選択だけでなく、遺伝的浮動が遺伝子構成を変える原因となりうる。正しい。
たとえば、ガの一種のオオシモフリエダシャクが、産業革命以前は明色型が多かったが、産業革命後は、暗色型が増えた。これは工業化の影響で木の表面が工場排煙などで暗色となったので、暗色型の鳥に発見されにくくなり生存率が高まったからだと説明された「工業暗化」の例など、人間の活動による自然選択である。都市化の影響にとって、日本の固有種(在来種)のカントウタンポポ・カンサイタンポポが減少し、帰化種のセイヨウタンポポが増加していることも同様である。人間の活動によっておこった環境の変化自然選択の原因となりうる。これが間違い。よって(3点)