大学入試共通テスト2022年「生物基礎」第2問A(配点7点、光学式血中酸素飽和度計)問題・解答・解説


【解説】

この血中酸素飽和度計は、実際はパルスオキシメーター(pulse oximeter)という名前で普及しており、そう呼ばれることがほとんどである。しかし、この名前で呼んでしまうと「パルス」が脈拍だと英語から推定して問1を解いてしまう可能性があるので、出題者はあえてその名前を使わず「血中酸素飽和度計」と記したと考えられる。

 

問1

図2の縦軸が「光を吸収する度合い(相対値)」となっているのに対し、設問の選択肢ではその裏返しの「光の透過量」となっている点に注意してほしい。共通テストの問題では、そのまま聴くと簡単な問題をわざと裏返しに聞くことで受験生の理解力を試している場合があるので要注意である。(「スラムダンク」の相田彦一風に言えば「要チェックや」です。)
光を吸収する度合い(相対値)が0~1の値で示されているので、光の透過量も「光を透過する度合い(相対値)」0~1と考えると、「吸収」と「透過」は、数学での事象の確率と余事象の確率の関係「余事象の確率=1ー事象の確率」と同様で、
「光を透過する度合い=1ー光を吸収する度合い」となる。
ただ、試験場で焦っているといちいち裏返して考えると頭が混乱しやすいので、図2自体を上下逆さまに見て、縦軸の上方向を「光を透過する度合い(光の透過量)」と考えると考えやすくなる。問題用紙を上下逆さまにして見るだけでイメージしやすくなる。
(実際には文字も上下逆になってしまうが、本解説では理解しやすいように、文字の向きは読めるように戻した。)

すると図への書き込みのように、は誤りだとわかる。

は赤色光・赤外光の吸収比率や動脈血(HbO2)・静脈血(Hb)の比率が論点ではなく、脈拍によって血流量が増減すれば、透過光の総量も赤色光、赤外光の総量も変化するはずなので、そのことで脈拍がわかるはずと推定でき正しい。

共通テスト出題イラストではわざと脈拍表示がない表記にしている。(本サイトに掲載の写真も出題イラスト同様にするため、上の脈拍表示部分をわざと黒で消した加工をさせていただいていた)

では、実際にはどのような表示がされるだろうか?(上記撮影日と異なるため、酸素飽和度の値も少し異なる。)

表記SpO2は「Saturation of percutaneous Oxygen(O2)」で「経皮的(percutaneous)酸素飽和度(saturation)」であり%で示される。新型コロナウイルス感染症では93以下になるときに要注意とされている。
表記PR bpmはPulse rate(脈拍数)であり、その単位がbpm(beat per minutes、分当たり心臓拍動回数)である。正常値は60~100である。

パルスオキシメーターに関しては、以下サイトが詳しく、この共通テスト出題と同様の図で説明されている。
●パルスオキシメータ知恵袋基礎編(KONICA MINOLTAサイトより)

問2

設問で与えられた数値を図のように書き込んで縦軸の値に対応する横軸の値、横軸に対応する縦軸の値、を考えていけばよい。
「動脈血中のHbO2のうち組織で酸素を解離した割合(%)」は単純に「酸素を解離した割合(%)」、つまり「80ー20」(%)ではなく、「動脈血中のHbO2のうち組織で酸素を解離した割合(%)」となっているので分母が(HbO2になっていない20%は除外して)80であることに注意してほしい。

【参考】2021年9月9日、船橋市議会でのパルスオキシメーターを含む新型コロナウイルス対策に関する質疑

【パルスオキシメーター部分質疑議事録抜粋】

[朝倉幹晴議員登壇]

◆朝倉幹晴 議員  大変な状況の中、15床増やしたということで、ご努力に感謝いたします。
酸素ステーションと抗体カクテル療法の実施につきましては、先番議員が質疑されましたので、準備、実施を進めるように私からも要望いたします。
次に、保健所の週報で、自宅療養者は9月8日20時時点で652人ということであります。この間、自宅療養者の急変による死、とりわけ保健所と連絡が取れてない状態での死亡が20代も含めて全国的に報道されてきました。船橋では自宅療養者には健康観察のために最も重要なパルスオキシメーターは届けられているんでしょうか。
パルスオキシメーターとは、皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定する装置です。赤い光の出る装置を指に挟むことで測定いたします。救急医療の現場では、飽和を示す英語であるサチュレーションあるいはSATと呼ばれております。赤血球中のヘモグロビンは、肺で酸素と結合し、動脈血を通じて全身に送られます。ヘモグロビンは末端組織で酸素を下ろします。この動脈血の酸素飽和度について追跡する装置です。
これを自宅療養者はいつの時点で受け取ることができるのか。明らかに呼吸困難の症状がなくても、SpO2が93以下となったときは警戒すべきですが、連絡に関してはどのように自宅療養者に伝えているのか。その場合、保健所として優先対応するのでしょうか。
[保健所理事登壇]

◎保健所理事(高橋日出男) お答えいたします。
自宅療養者の健康観察及び容態急変を察知するためのパルスオキシメーターについては、保健所医師が必要と判断した者に、原則として、発生届を受理し、初めの疫学調査を実施した当日に搬送しており、8月末日現在、自宅療養者のおおむね6割程度の670台を貸し出ししております。しかしながら、医師の判断がなくても、できるだけ多くの陽性者へ貸出しできる体制を整えるよう、追加で購入し、現在、約1,700台を整備いたしました。
また、先番議員にもご答弁いたしましたが、自宅療養中の方は、発熱等の症状やパルスオキシメーターの値が悪化した場合には、深夜帯も含めて、保健所の疫学専用の直通電話番号に連絡してもらうよう伝えており、保健師等が症状を聞き取り、保健所医師の判断により、必要な場合は入院調整を行います。
以上でございます。
[朝倉幹晴議員登壇]

◆朝倉幹晴 議員  パルスオキシメーターでの観察は自宅療養者にとっては命綱となっておりますので、全員配付を目指していただければと思います。

 

●9月9日、朝倉幹晴、船橋市議会質疑動画(変異株・パルスオキシメータほか新型コロナウイルス対策)(19分)