2014年前期、千葉県公立高校入試「数学」第4問「図形の証明」(配点15点)問題・解答・解説

まず千葉県の「図形の証明」問題の流れを把握しよう。

もしかしたら、2021年の一本化の影響で変化が出る可能性もありますが、10年来続けてきた証明問題の以下の流れは変わらないと見ておいたほうがよいでしょう。以下がこの10年来の出題の流れです。

2014年前期の問題をこの流れにあてはめて考えると以下のようになります。


★正答率から見た昨年度までの第4問へのアプローチと、今年度からの変化

さて、正答率を見てみましょう。例年同じ傾向ですが、記号記入の(1)(a)(2点)が81.7%、(1)(b)(2点)が92.3%。ここまではできてほしい問題です。
しかしながら、証明記述(1)(c)(6点)では、6点満点が8.0%、部分点(3点)が4.6%です。つまり0点の人が87.4%です。更に(2)にいたっては正答率2.2%、つまり50人に1人のみができ、49人はできない問題ということになります。
そこで、数学が得意ではない中学生には、
『「図形の証明」第4問の(1)(a) (b)(記号選択)は必ず答えてほしい。ただ。(1)(c)(証明記述)と(2)(計算)は正答率が低いので、他の問題の間違いがないかの見直しをまず重視し、その上で時間が余った時に挑戦してください。』
と前置きした上で、解き方を教えてきました。しかし、もちろん第4問も解けたほうが得点をUPできます。だから、ぜひ、この解答例をしっかり演習し、最初からあきらめることなく「図形の証明」にも挑戦するように努力してみてください。(本番でどうしても時間がなくなってしまった場合は、これまで通り、他の問題優先で仕方ないと思います。)

★千葉県前期第4問「図形の証明」添付図の数の変遷とその活用

2012年は、「図形の証明」に添付された図は1つのみであったものが、2013年から2つとなり、2015年からは3つとなり、現在にいたっています。
毎年、問題自体の難易度が若干変化するので、一概に比較できませんが、図1つだった2012年度は6点は4,4%、3点は3,5%で合わせて7.9%だった正答率が、図2つにした2013年度は6点が8.7%、、3点が4.6%で合わせて13.3%に上昇しました。
つまり、「手段の証明」と「目的の証明」の2段階となっている千葉県の問題を1つの図だけで考えさせるのは無理であると、出題者(千葉県教育委員会)がようやく気付き、図を多く添付するようになったのです。だから、受験生側は、図を適切に使い分けで活用する必要があります。
(1)「図形の証明」部分では図2つをうまく使いわける必要があります。

★(1)の2つの図の使い分けと活用

本説明では、これまで、前半、手段の図の証明までの流れを青、後半、目的の図の証明を赤で説明してきました。その色分けをそのまま活用して説明します。
下図のように使い分けることをお勧めします。簡単にいうと、図1(最初の図)を「手段」の書き込み、図2(証明文の中の図)を「目的」の書き込みにし、混同しないように使いわけるのです。

実際、試験の時は、色は使えず、すべて「黒鉛筆」のみで書き込みをして考えなければなりません。まず図1に手段で注目する2つの三角形に写真を引き、その三角形の合同を証明するという目的を明記します。そして「合同条件」に相当するものを、線の長さが等しいことを示す「|」の書き込みや、角度(この場合直角)の書き込みなどをしていくわけです。本図では三角形を斜線で塗った状態を左、角度や線の書き込みをしたものを右にかき分けていますが本当はそれぞれ1つの図になります。
(写真を塗りつぶしで表現しています。試験の時は塗りつぶしは時間がかかるので斜線(2図の違いが分かるように、/図形と、\図形の書き分け)をお勧めします。
1図の手段の証明の中に赤●×の部分があります。ここが手段の結果が後半の目的の図の証明のつなぎ目になることを示しています。
図の使い分けの発想をご理解いただいた上で、以下、実際にこの問題を解いていきましょう。

 

★相似の証明の注目点

まず、この問題では手段・目的ともに「三角形の相似」の証明が求められています。相似条件は以下3つですが、①の「2組の角がそれぞれ等しい」が最もよく使われます。ただ、本設問の手段の部分では、問題文にAB=2cm、AD=4cm、BE=1cmなどの長さがわざわざ書いてあることその比がすべて2であること)、長方形では対辺の長さが等しいことなどを考え合わせると、比も使う②(か③)の条件が用いられると予測できます。

★手段の図活用と(1)abの解答、後半(目的図)へのつなぎ

 

前半(手段)で証明すべき2図を塗ります(実際の試験では/斜線と\斜線による描き分け)。すると出題者が(a)(b)に関して問うている流れがわかりやすくなります。
AB:BC=2cm:4cm=1:2・・・①
BE:CD(ウ)(aの答)=1㎝:2cm=1:2・・・②
∠ABE=∠BCD=90°(長方形の内角なので)、・・・③
①②③から、2組の辺の比とその間の角(オ)(bの答)が等しいので、
△ABE∽△BCD・・・④

 

2つの三角形の合同の証明は、手段であり、次の目的の証明(証明の記述部分)のためにそれを活用します。そのつなぎ目を見つけることが大切です。
三角形は、3辺・3角があり、そのうち2つ・3つを組み合わせると相似が証明できます。合同が証明されると、未知であった、残りの3つ(この場合AE:BE=1:2、∠BAE=∠CBD、∠AEB=∠BDC)がそれぞれ等しいことがわかります。その3つのどれかが、次の目的の証明の出発に活用できるのです。1つのクイズを解いた解答に中に次のクイズの解き方のヒントが入っている連続クイズのようなものです。
最終目的は三角形△ABFと△BEFの相似の証明です。この三角形の辺の長さに関する情報はなく、相似の証明には「2つの角がそれぞれ等しい」ことを使うことが類推できます。
∠BAE=∠CBDを●、∠AEB=∠BDCを×で書き込み、目的図にも転写し、目的図での思考を開始します。

 

★目的図への書き込みと、証明の流れの確認

 

★証明を文章化して完成(c答

以上を文章にまとめると、以下のようになる。ただし内容が合っていればよいので、文章表現が少し異なってもかまわない。

★四角形の分類と性質

より内側の四角形は、より外側の四角形の性質も持ちます。図の内側の四角形は特殊な外側四角形の一種なのです。
たとえば「正方形」は4辺が等しいという特殊な「長方形」の一種。
同様に「正方形」は4角が等しいという特殊な「ひし形」の一緒。
「ひし形」は4辺が等しいという特殊な「平行四辺形」の一種
「長方形」は4角が等しいという特殊な「平行四辺形」の一種。
「平行四辺形」はもう1つの対辺も平行になっている特殊な「台形」の一種。
そしてより内側四角形は外側四角形の持つ性質を当然兼ね持ちます。
本設問の「長方形」は特殊な「平行四辺形」であり、平行四辺形が持つ「2組の対辺は平行」という性質を持ちます。

 

(2)解説

(1)で証明した結果を(2)の計算では使う。相似を証明したのだから「相似比」を使うことが類推される。
また前半で相似を証明した2つの三角形、後半で相似を証明した2つの三角形も、また相互に相似であり、本設問に出てくる三角形の多くは同じ相似比が使えることを使って計算していく。

★中学で出てくる典型的な直角三角形

本設問でも、その一つ(右下)が使われたことを確認してください。