2017年大学入試センター数学IA第5問、問題・解答・解説

朝倉幹晴

私は、予備校で生物学を教えてきました。しかしながら、2011年の311(福島原発事故)で船橋や飯田橋に避難されてきた小中学生、その後、ひとり親家庭・児童養護施設・母子生活支援施設など様々な事情のある小中高校生の学習サポートを続ける中では、数学に対するニーズが大きく、数学を教えるようになりました。その関係で、今は、著作は数学、とくに子どもの時から大好きであった「図形」部分が3冊となっています。(アマゾン内での「朝倉幹晴」でご検索ください。)
 かつて教えた小中学生たちが今は大学入試センターの数学に挑戦する高校生となっています。しかし、直接、全員に教えるのは時間的にも困難です。そこで、誰でも見られるように、大学入試センター問題の解答・解説を発信することにしました。
 できれば、全ての設問の解答解説を作りたいと思っていますが、まずは一番得意分野である図形の問題を発信します。
 大学入試問題自体は白黒ですが、イメージの強化のためカラーを使いました。また、解き方は私独自のものも含んでいます。他の数学の授業や説明をお聴きになる機会がある方は、私の方法論や説明方法以外のアプローチの仕方もあると思いますので、気に入った方法をお使いください。

大学入試センター試験第5問は、図形の問題です。なかでもメネラウスの定理かチェバの定理が毎年きかれています。そして問題には図は描かれておらず、受験生が余白に図を描き考えていく、その「描画しながら考えて行く」能力が問われています。描画しながら考え、考えたことをもとに描画の中の線の追加や線や長さの情報が小問ごとにわかってきた値を図に加筆して考えていくことが求められます。
 人生においても、行動しながら考え、考えたことをもとに次の行動を決めていくことが必要になってきます。そのことに似ているとも言えます。
 さてしたがって描画において、図をどのように、どの向きに描くかは受験生の側の自由です。大問の導入部分で与えられた線の長さや角度の情報をもとに、余白に描画して考えていきます。入試の約束で、定規の線の長さ表示や分度器は使えませんのであくまで「目分量」で描きます。ただ、あまりにも図が不正確だと後半の問題で、線の交点の位置が実際と異なり問題が解けなくなることがありますので、可能な限り正確に図を書くようにしましょう。
 描く向きは自由であり、問題集によって、同じ問題に対する描画の図の向きが異なることもあります。したがって、以下の私の描画はあくまで一つの例として考えてください。
当然ですが、またどんな向きに描画をしても、図の概形が間違っていなければ同じように正解がでますので安心ください。






【注】以下、描画をしていく。数IA第5問の図形の問題では、(試験時間を圧迫しないように配慮しながらも)できるだけ正確に描画をすることが、思考を整理し、段階的に小問を解いていく上で重要である。
 本解説ではイメージ強化のため色を使用したが、実際の入試本番では黒鉛筆だけしか使えないので、部分的に太線などを使いながら上手く描画していく努力をしてほしい。
 また、本設問では小問ごとに新しい図を描いて、小問ごとに意味がわかりやすいようにした。ただ、実際の入試問題では何回も同じ図を描く時間ももったいないが、逆に1つの図にすべて書き込もうとすると「ごちゃごちゃ」してうぇあかりにくくなる。できるだけ既存の図を活用しながらも、「ごちゃごちゃ」したように感じてきたら、図を新たに描き直すようにしよう。
 


この問題は作図した図形の形と、解答を要求されている分数の形(オカ/キ)からメネラウスの定理を使って解く問題だと類推できる。

実際には試験時間には「黒鉛筆」しか使えないので、黒鉛筆だけで効率よく、三角形と横切る直線、分数の対応順番(①~⑥)を描いていく方法は以下のようになる。

実際にこの問題で、三角形と横切る直線を見分けて①~⑥の番号をふっていく流れを順に確認してみよう。(イメージ強化のため、以下解説に色を使うが実際の作図は、上記のように黒鉛筆だけで行う)

まず、分数の形と順番から、三角形と直線を見分ける。

次に三角形の頂点に〇、横切る直線(直線FE)との三角形の辺(やその延長戦)との交点に✖をつける。

最後に〇→①→✖→②→〇→③→✖→⓸→〇→⑤→✖→⑥→〇と一筆書きでもとにもどって一巡することを確認して作図・番号つけ完了。

最後に①~⑥に具体的な数値を入れて計算して答を出す。

△ABCの3辺の長さはわかっている状態で、内接円の半径を問うているので、上記の内接円の半径を使った面積公式を使うことが推定できる。
 また、前の設問で、cos∠ABC=1/2、∠ABC=60°と求めさせたこと、
するとsin∠ABC=√3/2であることを使うと、2辺とその間の角のsinを使った面積公式を使うこともできる。
 そして両公式で求めた△ABCの面積が一致することを使って、内接円の半径を求める。