2019年大学入試センター試験「生物」第3問(生物の環境応答)問題・解答・解説

【解答】(計18点)

(4点) 2(3点) 3(3点) 4(4点) 5(4点)

 

【解説】

1(問1)

ヒトの網膜で光刺激を受け止めて興奮し、その情報を連絡神経細胞・視神経細胞を通じて脳に伝える細胞を「視細胞」という。視細胞には、薄暗いところでも光を甘受できるが色覚には関与しない桿体(かんたい)細胞(rod cell)と、明るいところで色覚に関与する錐体細胞(cone cell)の2種類がある。
片目の網膜あたり、桿体細胞は1.2億個(≒日本の人口)、錐体細胞は600万個(≒千葉県の人口)存在する。
錐体細胞には赤を甘受する赤錐体細胞、緑を甘受する緑錐体細胞、青を甘受する青錐体細胞の3種類がある。他の色は、この3種類の細胞の興奮の程度差によって感じる。明るい場所で青花より赤花がはっきり見えるといういことは赤錐体細胞が、青錐体細胞より多いということである。なお、実際の存在比の概数は赤錐体:緑錐体:青錐体=6:3:1である。

暗くなると、最初は「錐体細胞」のほうも少し順応しようとし、若干感度を上げる(ぎりぎり感受できる光の量=閾値(いきち)を低くする)が、その順応には限界がある。一方、桿体細胞は、ロドプシン(rodopsin)という弱い光でも感受できる物質を合成することにより、感度を高くすることができる(閾値を低くすることができる)。映画館などに入った時、しばらくすると目が慣れて、椅子の形などが見えるようになるのはこの作用であり、暗さへの順応なので暗順応という。
(なお、逆に暗い所にしばらくいたのちに明るいところに出ると一瞬まぶしいがしだいに慣れていくことを「明順応」という。その場合はロドプシンが分解される。)

 

暗くなると、錐体細胞は光を感受しにくくなり、桿体細胞が主に働く。その時、青花のほうがよく見えるということは、桿体細胞の感受する光は青に近い波長ということになる。実際に以下が吸収する波長である。

 

よって正解は(暗順応、桿体、青)。

2(問2)

夜空の暗い星は弱い光であり、錐体細胞は感受できず、桿体細胞のみが感受できる。したがって、桿体細胞が存在する黄斑以外の場所、つまり中心以外の場所で見るようにする。よって答は。(光の絶対量が少ないのでは意味がないし、では街灯の光が入り、暗い光である星の光は見えにくくなる。)

3(問3)

脳にも左脳と右脳の区別があるが、この設問では、それを求められていたので、脳を一つに描くと以下のようになる。

毛斑(盲点)は、網膜からガラス体側に出た連絡神経細胞・視神経が脳側に出るために網膜を貫く場所であり、そこには視細胞が存在しない。つまりそこに入った光は見えない。
図では青点線の光がそうである。

したがってBは見えない。答はである。

ちなみに、眼の学習では、「右眼の右側」「右眼の左側」「左眼の右側」「左目の左側」と表現するとよく位置がわからなくなるので、「耳側」「鼻側」という表現にすると、両眼とも内側=鼻側、外側=耳側となりわかりやすいので、この設問のように「耳側」「鼻側」で考えるようにしよう。

↡参考に右眼で同じ実験をした場合を以下に描いてみる。

右眼の場合はCが見えないことになる。

つまり、両眼とも盲斑(盲点)は網膜で「鼻側」にあり、それぞれの眼の盲斑に入る光は斜め手前の耳側(外視野)からの光となる。実際に日常生活で盲点の存在に気づかない(見えていない場所があるのに気が付かない)には、反対の眼ではその部分を見ることができることと、脳が周りの情報から補填して捉えるので、その部分が見えていないように感じないためである。

 

4・5(問4)

根は、土壌中の水分に溶け込んだ硝酸イオン(NO3-)を吸収し、道管で運び、葉でアンモニウムイオン(NH4+)に還元し、光合成・呼吸(解糖系・クエン酸回路由来)の有機酸(CHO化合物)と結合させアミノ酸にする窒素同化を行う。このように硝酸イオンの根からの吸収は植物の生命活動に必須のため、不足した時は、なんらか吸収促進のしくみが働くというのは予想できる。
ただ、本設問は前提知識は、上記ぐらいの認識で十分であり、あとは実験結果から推測する考察問題である。

実際図4で右の根の硝酸イオンが不足すると、右の根で遺伝子Y(硝酸イオン取り込み促進)が過剰発現することが図6よりわかる。この時、図6で右側のY遺伝子発現は、両側に硝酸イオンのある図5の状態と同じ遺伝子発現量なので、硝酸イオンが不足する側の遺伝子発現が抑えられるわけではなく、不足すると反対側の根でのYの遺伝子発現のみが促進されるので、遺伝子発現量の変化は、それぞれの根で即応答しているしているわけではなく、その接着点より上、つまりおそらく地上部で応答していると予測できる。

更に地上部と根との接ぎ木実験より、この応答は、地上部がx変異体(Xは発現しない。Yは発現する)(図8の右側2つの実験)では起こらず、野生型(XもYも発現)でのみ起きているので、この応答の発現は地上部でX遺伝子が発現する必要があることがわかる。
(野生型とは注目する全遺伝子が正常発現しているものである。「変異型x(Xを欠く)」という表現の場合はXは発現していないが、特に言及されていないYは発現していると考える。遺伝子の記述の場合は、特に変異に言及がない遺伝子については正常であるとみなす。)
すると、窒素源(硝酸イオン)不足を感受した根からの情報が、地上部()に伝わり、地上部で遺伝子Xヵらタンパク質Xを作る。すると硝酸イオンの十分ある側の根(左の根)()で、硝酸イオンの吸収を促進する遺伝子Yを過剰発現させる。(硝酸イオンが不足する根で過剰発現させても意味がない。実際に発現量は増えていない(減らしてもいない))

3(問3)