2019年大学入試センター試験「生物」第3問(生物の環境応答)問題・解答・解説
入試問題そのものは白黒ですが、せっかくの画面上ですので一部カラーにしました。
第3問 生物の環境応答に関する次の文章(A・B)を読み、下の問い(問1~4)に答えよ。(計18点)
A眼(め)が受容器となる光刺激で生じる感覚を、視覚という。光は、眼球前後にある角膜と水晶体で屈折し、網膜上に像を結ぶ。ヒトの網膜には、a錐体(すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞が存在し、bそれぞれ、光に対する反応と網膜上の分布は、異なる。また、c盲斑(もうはん)には、錐体細胞も桿体細胞も存在せず、ここでは光を感じることができない。
問1 下線部aに関連して、桿体細胞と三種類の錐体細胞(赤錐体細胞、緑錐体細胞、青錐体細胞)が、図1のような光の波長と吸光量との関係を示すとき、下の文章中のア~ウに入る語の組合わせとして最も適当なものを、後ののうちから一つ選べ。1(4点)
チェコの生理学者プルキンエは、ある日、赤色と青色の花が咲いている公園を散歩していて、昼間は赤色の花が青色の花よりも明るくはっきりと見えるが、夕方、日が暮れて暗くなるにつれ、青色の花の方が赤色の花よりもはっきりと見えるようになることに気づいた。この現象は、ヒトの網膜では、赤錐体細胞は青錐体細胞よりも数が多いこと、暗くなるにつれてアが起き、イ細胞の感度が上がること、また、ウ色として認識される光の波長は、桿体細胞で高い吸光量となる波長に近いこと、などによって説明される。
問2 下線部bに関連して、次のことが知られている。錐体細胞は、色の認識に必要な細胞であるが、弱い光では反応しないので、暗所では色を認識できない。一方、桿体細胞は、色の認識はできないが、弱い光でも反応する。錐体細胞は黄斑(おうはん)とよばれる網膜の中央部に多く存在し、桿体細胞は、黄斑を取り巻く部分に多く分布する。夜空にある暗い星を肉眼で観測したい場合の方法として最も適当なものを、次ののうちから一つ選べ。2(3点)
多くの光を眼球に取り込むため、周りに明るい街灯があるところで星を眺める。
問3 下線部cに関連して、図2は、左眼の網膜上における錐体細胞と桿体細胞の分布を、黄斑の位置を0°とし、黄斑からの距離を0°~40°の角度として示している。図3は、ある一定の高さまで離れた状態で、「+」を真上から左眼のみで注視した際の「+」からの距離を、対応する網膜上の角度0°~40°として示している。このとき、図3のアルファベットA~Dの見え方として最も適当なものを、下ののうちから一つ選べ。なお、図3は、実際の網膜上の角度を正確に反映させずに作図している。3(3点)
Aは見えない。 Bは見えない。 Cは見えない。 Dは見えない。
B 硝酸イオンは、植物の成長にとって重要な窒素源である。しかし、土壌中の硝酸イオンは不均一に分布するため、植物は窒素源不足となる場合がある。シロイヌナズナの野生型植物(以降、野生型とよぶ)は、タンパク質Xによって窒素源不足を感知すると、硝酸イオンの取り込みの促進に関わる遺伝子Yを根において発現する。植物がどのように窒素源不足に応答するかを調べるために、野生型とタンパク質Xを欠く突然変異体(以降、変異体xとよぶ)を用いて、実験1・実験2を行った。
実験1 野生型の芽ばえを硝酸イオンが含まれる寒天培地Nの上で14日間栽培した。その後、図4のような寒天培地Aを用意し、半数の根(左の根)を硝酸イオンが含まれる領域(硝酸イオンあり)の上に置き、残りの半数の根(右の根)を硝酸イオンが含まれる領域の上に置いて2日間栽培した。その後、それぞれの根において、遺伝子Yの発現量を調べたところ、図6の結果が得られた。
実験2 野生型と変異体xの芽ばえを、硝酸イオンを含まれる寒天培地Nの上で4日間栽培した。その後、野生型と変異型xの接ぎ穂(地上部)と台木(根)を、様々な組合せで図7のように接ぎ木し、硝酸イオンが含まれる寒天培地Nの上で10日間栽培した。次に、接ぎ木した植物を、図4と同様に寒天培地Aの上で2日間栽培し、左の根と右の根における遺伝子Yの発現量を調べたところ、図8の結果が得られた。
問4 実験1・実験2の結果にかんして、次の文章中のエ、オに入る語句として最も適当なものを、下ののうちからそれぞれ一つずつ選べ。ただし、同じものを繰り返し選んでもよい。 エ4(4点)、オ5(4点)
シロイヌナズナは、硝酸イオンが不均一に分布している土壌環境では、窒素源不足を認知した根から、窒素源不足の情報をエでつくられるタンパク質Xに伝達する。その後、タンパク質Xは、オにおいて遺伝子Yの発現量を上昇させることで、硝酸イオンの取り込みを促進する。
地上部 全ての根 周囲に窒素源が十分ある根 周囲に窒素源が不足している根
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