2019年大学入試センター「生物」第4問(生態)問題・解答・解説(18点)
入試問題は白黒ですが、せっかくの画面上ですので一部カラーにしました。
第4問 生態と環境に関する次の文章(A・B)を読み、下の問い(問1~3)に答えよ。
(配点、計18点)
A、ある一つの地域に生息している同じ種の個体の集まりを個体群という。個体群には、通常、様々な齢や発育段階の個体が含れている。また、種によっては、複数の個体が集団で生活する群れが、個体群の中に形成されることがある。このとき、群れをつくることによって、捕食者に対する警戒や防御の能力の向上、餌の発見効率の向上といった利益が得られる反面、捕食者に見つかりやすくなったり餌を奪いあったりするという不利益も生じる。
1965年に、それまでジャコウウシのいなかったグリーンランド上のある地域で、27頭のジャコウウシが野外に放たれた。この個体群が野外に定着するかどうかを調べるため、その後1990年まで、計6階、この個体群の個体数が調査された。この調査から得られた個体数の推移を図1に示した。1988年と1990年には、この個体群の齢構成も調べられた。その結果、1988年の齢構成のピラミッド(年齢ピラミッド)は、ア型に分類された。また、1990年の年齢ピラミッドも、同じ型に分類できた。このことから、1990年以降の数年間は、個体数はイことが予測された。
問1 上の文章中のア・イに入る語句の組合わせとして最も適当なものを、右の①~⑥のうちから一つ選べ。1(2点)
問2 5~40頭ほどの群れをつくって生活するジャコウウシは、生息地にいる捕食者の個体数や、餌の見つけやすさに応じて、群れの大きさを変える。ジャコウウシの主な捕食者はオオカミである。オオカミのいない地域、少ない地域、多い地域をそれぞれ複数選び、ジャコウウシが餌を見つけやすい季節Xと見つけにくい季節Yにおいて、ジャコウウシの群れの大きさを調べた。その結果、一つの群れを構成している個体数の平均値は、図2にようになった。このようにジャコウウシが群れの大きさを変化させる理由として適当なものを、下ののうちから二つ選べ。ただし、解答の順序は問わない。2・3(各4点×2、計8点)
群れを大きくすると、オオカミがいる地域でのみ、餌を見つけやすくなるため。
群れを大きくすると、オオカミがいない地域でのみ、餌を見つけやすくなるため。
オオカミがいるかいないかにかかわらず、群れを大きくしても、群れることの不利益は増えないため。
オオカミがいるかいないかにかかわらず、群れを大きくすると、餌を見つけやすくなるため。
B 3種のイネ科草本A~Cは、海水の塩分の影響を受ける海岸周辺に出現する。3種のうち、種B、種Cは土壌の塩分濃度が高い場所において多く、種Aはその周辺の塩分濃度が低い場所に比較的多く見られる。この分布の違いは、それぞれの種の塩分に対する耐性(以後、耐塩性とよぶ)と競争力の違いを反映していると考えられる。それぞれの種の耐塩性と競争力を調べるため、実験1・実験2を行った。これらの実験では、一定の大きさの植木鉢内における土壌中の水分の塩分濃度(以降、鉢内塩分濃度とよぶ)を0~1.4%まで複数設定し、それぞれの設定で種子から発芽したばかりの苗を生育させた。90日後に苗を収穫し、植木鉢あたりの現存量を測定した。
実験1.種A~Cのいずれか一種を、一つの植木鉢に150個体育て(単植)、その現存量を図3に示した。図3の結果から、鉢内塩分濃度0%の場合に対する各鉢内塩分濃度における現存量の相対地値を計算し、耐塩性の指標とした。この結果を図4に示した。
実験2.種A~Cそれぞれ150個体ずつ(計450個体)を、一つの植木鉢に混在させて育て(混植)、種ごとの現存量を図5に示した。また、各鉢内塩分濃度において、混植させた3種の現存量の比を、種の優占度と定義し、種の競争力の指標とした。鉢内塩分濃度とそれぞれの種の優占度との関係を図6に示した。
問3 実験1・実験2の結果に関する記述として適当なものを、次の①~⑥のうちから二つ選べ。ただし、解答の順序は問わない。4・5(各4点×2、計8点)
種Aは、鉢内塩分濃度が最も高いとき、耐塩性が最も低い種だった。
種Bは、鉢内塩分濃度が中程度(7%)のとき、耐塩性が最も高かったが、競争力は最も低い種だった。
種Cは、鉢内塩分濃度が0%のとき、種間競争がなければ最も現存量が大きいが、種間競争下では最も現存量が小さい種だった。
種間競争がない場合、鉢内塩分濃度の増加によって現存量が増加した種とそうでない種があった。
鉢内塩分濃度が0%のとき、種間競争のある状態とない状態との現存量の差は、B<C<Aの順に大きくなった。
種間競争のある状態では、それぞれの種の現存量が最大になる鉢内塩分濃度と、優占度が最大となる鉢内塩分濃度は一致した。
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